「日経平均、歴代3位の暴落」というニュースを見て、思わず証券アプリを開いた方も多いのではないでしょうか。2026年11月6日、日経平均株価は前日比3,643円13銭安の5万7,434円77銭で取引を終えました。新NISAでコツコツ積み立ててきた日本株や投資信託が、たった1週間で大きく値下がりしてしまい、「このまま持っていて大丈夫?」「いったん売ったほうがいい?」と眠れない夜を過ごしている方もいるはずです。
でも、少しだけ深呼吸してください。実はこの暴落、「下落幅」では歴代3位でも、「下落率」では歴代20位にも入っていません。数字の見え方ひとつで、受け止め方は大きく変わります。大切なのは、不安なときこそ正しい物差しで状況を測ることです。
この記事では、新NISAで日本株や投信を持つ初心者から中級者の方に向けて、11月6日に何が起きたのか、なぜ2026年はこれほど急落が続くのか、そして2024年8月の「令和のブラックマンデー」のあとに相場がどう動いたのかを、公表されているデータをもとに、できるだけやさしく整理します。最後まで読めば、慌てて売る前に確認すべきことがはっきり見えてくるはずです。
この記事でわかること
- 「歴代3位」という数字に振り回されないための見方
- 急落のニュースを自分の資産に置き換えて考えるコツ
- 含み損を抱えたときに家計で確かめておきたいポイント
- 過去の急落から学べる、長期投資を続けるための心構え
- 第1章:日経平均暴落の11月6日に何が起きたのか
- 第2章:日経平均暴落を下落幅と下落率で比べてみる
- 第3章:日経平均暴落が2026年に続いている背景
- 第4章:2024年8月の日経平均暴落はその後どうなったか
- 第5章:日経平均暴落で新NISA積立投資家がやってはいけないこと
- まとめ:日経平均暴落は長期投資の通過点にできる
第1章:日経平均暴落の11月6日に何が起きたのか
出典:Unsplash(撮影:Maxim Hopman)
まずは、2026年11月6日(金)の東京市場で実際に何が起きたのかを、時間の流れに沿って振り返ってみましょう。ニュースの見出しだけを見ると「とにかく大暴落した」という印象が強く残りますが、1日の値動きを丁寧に追うと、市場の参加者がどんな気持ちで売買していたのかが少しずつ見えてきます。
結論からお伝えすると、この日の日経平均は前日比3,643円13銭(5.96%)安の5万7,434円77銭で取引を終え、下げ幅は歴代3位を記録しました。5日続落となり、節目の6万円を割り込んだのは約半年ぶりのことです。
寄り付きから一時4,300円超安まで売りが加速
きっかけは前日の米国市場でした。11月5日のニューヨーク市場では、ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数が大幅に下落し、10月6日につけた最高値からの下落率が12%に達しました。一般的に「調整局面」とされる10%を超えたことで、世界中の投資家がリスクを減らす方向に動いたのです。
この流れを受けて、東京市場では朝から半導体製造装置や電子部品など、これまで相場を引っ張ってきたAI関連銘柄に売り注文が集中しました。売りが売りを呼ぶ展開となり、日中には下げ幅が一時4,300円を超える場面もありました。前日終値の6万1,077円90銭から見ると、一時は5万6,000円台後半まで沈んだ計算になります。
午後にかけてやや買い戻しが入ったものの、取引終了まで大きく値を戻すことはできませんでした。日本だけでなく韓国や台湾の株式市場でもAI関連銘柄を中心に売りが広がり、まさに「世界同時株安」の様相となったのが、この日の大きな特徴です。
こうした日は、ニュース速報やSNSに「暴落」「パニック」といった強い言葉があふれます。タイムラインを眺めているだけで、自分の資産がどこまでも減っていくような気持ちになってしまうものです。ですが、その時点で市場に出ている情報の多くは「今日いくら下がったか」という事実だけで、「この先どうなるか」はまだ誰にもわかっていません。だからこそ、まずは起きた事実を順番に整理することが、冷静さを取り戻す第一歩になります。
東証プライムのほぼすべてが値下がりした全面安
11月6日の下落が多くの投資家にとって衝撃的だったのは、AI関連株だけでなく、市場全体がほぼ例外なく売られたことです。東証プライム市場では値下がり銘柄が1,523に達した一方、値上がりはわずか21銘柄にとどまりました。割合にすると、プライム市場の約99%が値下がりしたことになります。
より幅広い銘柄で構成される東証株価指数(TOPIX)も232.40ポイント安の3,707.99まで下落しました。つまり、高配当株や内需株を中心にコツコツ投資していた方も、今回は無傷ではいられなかったということです。「自分は半導体株を持っていないのに、なぜこんなに下がったの?」と感じた方は、この全面安の構図を思い出してください。
💬 ここがポイント
相場全体が大きく崩れる日は、個別の企業の業績とは関係なく「とりあえず現金に換えたい」という売りが一斉に出ます。持っている銘柄の価値が一晩で6%失われたわけではなく、市場の不安がいったん価格に表れた、と受け止めると少し冷静になれます。
3日間で5,600円超下げた1週間の流れ
11月6日の急落は、突然やってきたわけではありません。週の初めから少しずつ下げが続き、最終日に大きく崩れた形でした。日経平均は中間選挙の情勢が伝わった11月4日から6日までの3日間で、合計5,600円を超える下落となっています。1週間の流れを表にまとめました。
| 日付 | 日経平均の終値 | 前日比と主な出来事 |
|---|---|---|
| 11月2日(月) | 63,081円 | 208円安|キオクシアの急落などAI関連に売り |
| 11月4日(水) | 62,188円 | 893円安|米中間選挙の開票速報で一時3,000円超安 |
| 11月5日(木) | 61,077円 | 約1,100円安|売りが続き6万1,000円台へ |
| 11月6日(金) | 57,434円 | 3,643円安|下げ幅歴代3位、6万円割れ |
前の週末(10月30日)の終値はおよそ6万3,289円でしたから、わずか1週間で約9%も値下がりした計算です。たとえば新NISAで日経平均に連動する投資信託を300万円分持っていた方なら、評価額が1週間で約27万円減ったイメージになります。給料1か月分以上が画面上で消えたように感じれば、不安になるのは当然のことです。
ただし、ここで大切なのは「評価額が下がった」ことと「お金を失った」ことは同じではない、という点です。売却しない限り損失は確定しません。新NISAで積み立てている資金の多くは、10年後や20年後の暮らしのために置いているお金のはずです。1週間の値動きは、その長い道のりのほんの一場面にすぎません。次の章では、「歴代3位」という数字が本当にどれほどの規模なのかを、別の角度から確かめていきましょう。
第2章:日経平均暴落を下落幅と下落率で比べてみる
出典:Unsplash(撮影:Eyestetix Studio)
「歴代3位の暴落」と聞くと、1987年のブラックマンデーや2008年のリーマン・ショックに並ぶような、歴史的な大事件を想像してしまいますよね。ところが、株価の下げを測る物差しは1つではありません。どの物差しを使うかによって、同じ出来事でもまったく違う姿に見えてきます。
この章でお伝えしたいのは、株価の下落は「何円下がったか」より「何%下がったか」で見るほうが、自分の資産への影響を正しくつかめるということです。
下落幅ランキング上位5回のうち3回が2026年
まずは、ニュースでよく使われる「下落幅」、つまり1日に何円下がったかのランキングを見てみましょう。日経平均の公式サイトで公表されている記録と、今回の急落を合わせて整理すると、次のようになります。
| 下落幅の順位 | 日付 | 下落幅(下落率) |
|---|---|---|
| 1位 | 2024年8月5日 | 4,451円(12.40%) |
| 2位 | 1987年10月20日 | 3,836円(14.90%) |
| 3位 | 2026年11月6日 | 3,643円(5.96%) |
| 4位 | 2026年10月15日 | 3,318円(約4.9%) |
| 5位 | 2026年6月26日 | 3,005円(約4.2%) |
表を見ると、上位5回のうち3回が2026年に集中していることがわかります。6月26日の急落は当時「歴代3位」と報じられ、10月15日にも「歴代3位」の見出しが躍り、そして今回の11月6日がさらにその上に入りました。1年のうちに「歴代3位」という言葉を3回も聞いたことになり、「今年は暴落の当たり年なの?」と感じるのも無理はありません。
ちなみに、6位には2026年3月9日の2,892円安が入っており、こちらも今年の出来事です。中東情勢の緊迫や米国の雇用統計の悪化が重なった日でした。こうして並べてみると、2026年は1年を通じて大きな値動きが何度も起きていることがよくわかります。ただし、このランキングだけで「今年は特別に危険な年だ」と結論づけるのは早計です。その理由は、表の右側の数字に隠れています。
下落率で見ると上位20位にも入らない理由
一方で、表の右側にある「下落率」に注目してみてください。1987年のブラックマンデー翌日は14.90%、2024年8月5日は12.40%と、1日で資産の1割以上が吹き飛ぶ規模でした。それに対して、今回の11月6日は5.96%です。
日経平均の公式記録では、下落率ランキングの20位が1972年6月24日の6.61%となっています。つまり、今回の5.96%は下落率では歴代20位の圏外です。10月15日や6月26日にいたっては、下落率4%台にとどまっています。もちろん1日で6%近く下がるのは大きな動きですが、「歴史的な大暴落」という言葉から受ける印象と比べると、実態はかなり違って見えるのではないでしょうか。
📌 覚えておきたい考え方
あなたの資産が受けるダメージは「円」ではなく「%」で決まります。日経平均が3,643円下がっても、投資信託の評価額が3,643円減るわけではありません。保有額×下落率で、自分の資産への影響をざっくり計算する習慣をつけておくと、ニュースに振り回されにくくなります。
6万円台の今は同じ率でも下落幅が膨らみやすい
では、なぜ下落率はそれほどでもないのに、下落幅だけが歴代上位に並ぶのでしょうか。理由はとてもシンプルで、日経平均そのものの水準が大きく上がったからです。
具体的に計算してみましょう。日経平均が3万円のときに5%下がると、下落幅は1,500円です。ところが、6万円のときに同じ5%下がると、下落幅は3,000円になります。率は同じでも、株価の水準が2倍になれば、下落幅も2倍になるわけです。1987年当時の日経平均は2万円台、2024年8月の急落時も3万円台でした。今回は6万円台からの下落ですから、同じ率でも円の数字が大きく見えるのは自然なことなのです。
身近な例に置き換えると、時給1,000円のアルバイトで5%減給されると50円ですが、月給60万円の人が5%減ると3万円です。金額のインパクトは大きく見えても、生活への影響度合いはどちらも同じ5%です。ニュースの「〇〇円安」という見出しを見たら、まず「それは何%?」と自分に問いかけてみてください。
とはいえ、下落率が小さいから安心してよいという話でもありません。今回は1日で終わらず、1週間で約9%、2026年の高値から見るとさらに大きな下げになっています。「率で見れば小さい」と「高値から見れば大きい」は、どちらも本当のことです。片方だけを見て安心したり悲観したりせず、両方の数字を並べて考えることが、ニュースとうまく付き合うコツといえるでしょう。次の章では、なぜ2026年はこれほど急落が続いているのか、その背景を見ていきましょう。
第3章:日経平均暴落が2026年に続いている背景
出典:Unsplash(撮影:Nicholas Cappello)
2026年の日本株は、まるでジェットコースターのような1年でした。年初から力強く上昇し、6月25日には日経平均が終値で7万2,366円と、ほんの数年前には想像もできなかった水準に到達しました。その一方で、6月、10月、11月と「歴代上位」の急落が何度も起きています。上がるときも下がるときも、値動きがとにかく大きいのが今年の特徴です。
この章の結論は、今年の急落の多くは、AI・半導体関連株への期待が大きく膨らんだ反動と、日経平均という指数のクセが重なって起きているということです。
AI・半導体株への期待と集中が値動きを大きくした
2026年の株高を引っ張ってきたのは、生成AIの普及にともなうデータセンター投資の拡大でした。半導体の製造装置や検査装置、メモリ、電子部品などを手がける日本企業にも注文が集まり、関連銘柄の株価は大きく上昇しました。
ただ、期待が大きくなるほど、少しの不安材料でも売りが集中しやすくなります。10月15日の急落では、米国のAI関連企業の株価下落や、AI投資が今後も続くのかという疑問が広がったことが背景にあると、エコノミストが指摘していました。今年の年初からの上昇率が大きかったぶん、高値への警戒感もたまっていたのです。
上昇のエンジンだったAI関連株が、下落局面ではブレーキどころか加速装置になってしまう。これが2026年の相場を読み解くうえで、まず押さえておきたいポイントです。
実際、6月26日の急落でも、前日に3,100円を超える上昇で最高値を更新した反動から、アドバンテストやキオクシアホールディングスなどのAI・半導体関連株が売られ、米OpenAIの上場延期報道を受けてソフトバンクグループも急落しました。上がるときに勢いよく上がった銘柄ほど、下がるときも勢いよく下がる。この当たり前の性質が、今年は何度もくり返されているのです。
米中間選挙とAI規制への警戒が引き金に
今回、11月の急落の直接的な引き金とされているのが、米国の中間選挙です。開票の結果、民主党が大きく議席を伸ばし、AIの規制強化やデータセンター建設の抑制に前向きとされる勢力が力を持つ見通しになりました。市場では、これまで前提にしてきたAI関連の巨額投資にブレーキがかかるのではないか、という懸念が一気に広がりました。
ここで注意したいのは、AIの需要そのものがすぐに消えてしまうわけではない、という点です。問題になっているのは、市場がこれまで織り込んできた「巨額投資と高成長」というシナリオが、少し後ろにずれたり縮んだりするかもしれない、という見通しの変化です。株価は将来の期待を映す鏡ですから、期待が少し修正されるだけでも、値動きは大きくなります。
さらに、今回は米国の原油先物価格の上昇も東京市場の重荷になりました。政治の変化、AI投資への見方の修正、エネルギー価格の動きといった複数の要因が、同じタイミングで重なったことが、下げ幅を大きくしたと考えられます。1つの理由だけで説明しようとせず、いくつもの要因が重なって起きたと理解しておくと、今後のニュースも読みやすくなります。
💬 初心者さんのよくある疑問
「アメリカの選挙なのに、どうして日本株がこんなに下がるの?」
日本の半導体関連企業の大きなお客さんは、米国のAI企業やデータセンター事業者です。米国の政策が変われば、その注文の見通しも変わります。さらに、海外の機関投資家は日本株と米国株をまとめて売買することが多いため、米国で起きた不安はすぐに東京市場にも伝わります。
値がさ株の影響を受けやすい指数のクセ
もう1つ知っておきたいのが、日経平均という指数そのものの性質です。日経平均は、選ばれた225銘柄の株価をもとに計算される「株価平均型」の指数です。そのため、1株あたりの株価が高い、いわゆる値がさ株の動きに指数全体が大きく左右されるというクセがあります。
代表的なのが、ソフトバンクグループやアドバンテスト、東京エレクトロンといったAI関連の値がさ株です。たとえば11月4日の前場では、アドバンテストと東京エレクトロンの2社だけで日経平均を約920円押し下げていました。少数の銘柄が大きく動くだけで、指数が何千円も上下してしまうのです。
実生活に置き換えると、クラス225人の平均点を出すときに、配点の大きい数人の答案だけで平均が大きく動いてしまうようなイメージです。より幅広い企業の値動きを反映するTOPIXのほうが、11月6日の下落率は日経平均より小さくなっていました。新NISAで「日経平均連動」の投資信託を選んでいる方は、自分の投資先がこうしたクセを持っていることを一度確認しておくと安心です。
では、こうした急落のあと、相場はどう動いていくのでしょうか。次の章では、歴代1位の暴落となった2024年8月5日のその後を振り返ります。
第4章:2024年8月の日経平均暴落はその後どうなったか
出典:Unsplash(撮影:micheile henderson)
今まさに含み損を抱えている方にとって、いちばん知りたいのは「このあとどうなるのか」ということですよね。残念ながら、未来の株価を正確に言い当てることは誰にもできません。それでも、過去の急落のあとに相場がどう動いたのかを知っておくことは、気持ちを落ち着けるための大きな手がかりになります。
そこでこの章では、下落幅も下落率も歴代トップクラスだった2024年8月5日、いわゆる「令和のブラックマンデー」のその後を振り返ります。結論を先にお伝えすると、このときは約2週間で暴落前の水準まで戻り、その後も株価は高値を更新していきました。
翌日には当時過去最大の上げ幅で反発
2024年8月5日、日経平均は前週末比4,451円28銭(12.4%)安の3万1,458円42銭で取引を終えました。直前の8月2日にも2,216円下げていたため、わずか2営業日で6,600円以上も下落したことになります。当時、日銀の追加利上げや米国の景気後退への懸念、急激な円高が重なり、国内外の投資家が一斉に売りに動きました。
ところが翌8月6日、相場は一転します。日経平均は前日比3,217円04銭高の3万4,675円46銭まで急反発し、当時としては過去最大の上げ幅を記録しました。歴代最大の下げの翌日に、歴代最大の上げがやってきたのです。この2日間だけを見ても、相場の短期的な動きを予測して売り買いすることがいかに難しいかがわかります。
当時、SNSには「もう日本株は終わりだ」「全部売って現金にした」という声があふれていました。プロの投資家でさえ方向感を見失うなかで、個人が1日単位の値動きを当てるのはほぼ不可能です。株価が大きく下がった日の翌日に大きく上がることは珍しくなく、上昇の大きい日を逃してしまうと、長期のリターンが大きく目減りしてしまうことも知られています。慌てて相場から離れることには、目に見えにくいコストがあるのです。
約2週間で暴落前の水準まで回復
その後も相場は落ち着きを取り戻していきました。米国で発表された小売売上高が予想を上回り、米国景気への不安が和らいだことで円安と米国株高が進みます。そして8月16日には、日経平均が終値で3万8,000円台を回復し、8月2日と5日の2度の暴落が始まる前の水準まで戻りました。
もし8月5日の夜に不安に耐えきれず投資信託を売却していたら、底値付近で損失を確定させ、その後の回復を取り逃がしていたことになります。反対に、積立設定をそのままにしていた人は、安い価格で多くの口数を買い付けることができていました。同じ出来事を経験しても、そのとき取った行動によって、2週間後の結果は大きく分かれたのです。
⚠️ 大切な注意点
ここで紹介したのは、あくまで過去に実際に起きたことです。過去のデータは将来の値動きを保証するものではありません。今回も同じように短期間で回復するとは限らず、下落が長引く可能性もあります。「前回すぐ戻ったから今回も大丈夫」と決めつけず、どちらに転んでも続けられる準備をしておくことが大切です。
今回との共通点と違いを冷静に見る
2024年8月から現在までの流れを、もう少し長い目で見てみましょう。2024年9月30日には1,910円安、2025年4月7日には米国の関税政策をきっかけに2,644円安(7.83%安)と、その後も大きな急落は何度も起きました。それでも日経平均は2025年10月に5万円台で史上最高値をつけ、2026年には6万円、7万円台へと上昇しています。急落は何度もあったものの、長い目で見ると、それを乗り越えて水準を切り上げてきたのがこの2年あまりの歩みです。
一方で、今回の急落には2024年8月とは違う点もあります。2024年は円高や米国景気への不安といった、比較的短期で見方が変わりやすい要因が中心でした。今回は、AI投資の先行きという企業の成長シナリオそのものに関わる懸念がテーマになっています。日本経済新聞は、日経平均が高値から2割近く下げて「弱気相場」入りしたと報じており、楽観しすぎるのも禁物です。
たとえば、2024年8月に月3万円の積立を続けていたBさんの場合、あの暴落のときにも何もしなかったことが、結果的にいちばん良い選択になりました。今回も同じ結果になるかはわかりませんが、「何もしない」という選択肢が決して消極的なものではないことは、覚えておいて損はありません。何もしないためには、事前に決めたルールと、それを守れるだけの家計の余裕が必要です。つまり「何もしない」は、準備ができている人だけが選べる、立派な投資判断なのです。次の章では、新NISAで積立投資をしている方が、具体的に何をすべきで何を避けるべきかを整理します。
第5章:日経平均暴落で新NISA積立投資家がやってはいけないこと
出典:Unsplash(撮影:Towfiqu barbhuiya)
ここまで、11月6日の急落の中身や背景、過去の事例を見てきました。最後に、いちばん大事な「では自分はどうすればいいのか」というお話をします。新NISAを始めてから初めて大きな含み損を経験している方も多いと思います。画面の赤い数字を見るたびに胸がざわつく、その気持ちはとても自然なものです。
この章の結論は、急落の直後こそ「売る・止める」より先に「確認する」ことを優先するということです。慌てて行動する前に、立ち止まってチェックすべきことがあります。
狼狽売りと積立停止はいちばん避けたい行動
急落時にやってしまいがちなのが、不安に駆られてすべて売ってしまう「狼狽売り」と、「もう怖いから」と積立設定を止めてしまうことです。どちらも、長期の積立投資ではもっとも避けたい行動といえます。
狼狽売りをすると、含み損がその場で実際の損失として確定します。そのあと相場が戻っても、売ってしまった資産は取り戻せません。新NISAでは売却した分の非課税枠は翌年以降に復活しますが、年間の投資枠には上限があるため、一度に大きく売って買い直すのは簡単ではありません。
積立の停止も同じです。積立投資の強みは、価格が下がったときに自動的に多くの口数を買えることにあります。下落局面で積立を止めてしまうと、その強みをいちばん生かせる時期を自分から手放すことになってしまいます。
もう1つ気をつけたいのが、急落をきっかけに投資先を次々と乗り換えることです。「日本株はもうだめだから米国株へ」「AI関連は危ないから別のテーマへ」と、そのときの気分で中身を入れ替えると、結局は高いところで買って安いところで売るくり返しになりがちです。最初に決めた投資方針に大きな問題がない限り、急落の直後に大きな方針転換をするのは避けたほうが無難です。
今こそ確認したい資産配分と生活防衛資金
行動を変える前に、次の3つを落ち着いて確認してみてください。
- 生活費の数か月分から1年分程度の現金(生活防衛資金)が、投資とは別に確保できているか
- 日本株やAI・半導体関連など、特定の国やテーマに資産が偏りすぎていないか
- そのお金を使う予定はいつか、10年以上先なのか、数年以内なのか
生活防衛資金が十分にあれば、株価がしばらく低迷しても、投資信託を取り崩さずに暮らしていけます。逆に、近いうちに使う予定のお金まで株式に入れていた場合は、今回の急落を機に配分を見直す価値があります。高配当株を中心に持っている方は、株価だけでなく、企業の業績や配当方針に変化がないかもあわせて確認しておくと安心です。
📝 今日からできるチェックリスト
証券アプリを開くのは週に1回までにする|積立設定の金額と日付をそのままにしておく|生活防衛資金の残高を確認する|保有銘柄の国と業種の割合をざっくり書き出す|不安なときはSNSより公式の統計や企業の発表を見る
買い増しを考えるなら時間を分けて少しずつ
反対に、「安くなった今こそ買い増したい」と考える方もいるでしょう。その場合も、手元資金を一度に全部投入するのではなく、何回かに分けて少しずつ買う時間分散を意識するのがおすすめです。底値を当てようとするより、平均の取得単価を下げることを目指すほうが、気持ちの面でもずっと楽になります。たとえば、使える資金を3回から6回に分け、毎月決まった日に買い付けると決めておけば、日々の値動きに一喜一憂する必要もなくなります。
積立投資で価格が上下すると、どのように口数が変わるのかを簡単な例で見てみましょう。毎月3万円ずつ同じ投資信託を買い付けた場合です。
| 月 | 基準価額(1口あたり) | 3万円で買える口数 |
|---|---|---|
| 1か月目 | 10,000円 | 3.00口 |
| 2か月目(急落) | 8,000円 | 3.75口 |
| 3か月目(回復) | 10,000円 | 3.00口 |
3か月で合計9万円を投資し、9.75口を手に入れました。平均の取得単価は約9,231円です。基準価額が最初と同じ1万円に戻っただけで、評価額は9万7,500円となり、約8%のプラスになります。価格が元に戻っただけなのに利益が出るのは、下がった月に多くの口数を買えていたからです。もちろん、価格が戻らなければ損失が続くこともありますが、積立を続けることの意味がイメージしやすくなるのではないでしょうか。
急落はつらい出来事ですが、長期の積立投資家にとっては、自分の投資方針が本当に自分に合っているかを確かめる良い機会でもあります。焦らず、確認して、続ける。その積み重ねが、10年後の資産を形づくっていきます。
もしどうしても不安が消えないときは、積立をやめるのではなく、毎月の積立額を家計に無理のない金額まで少し下げるという方法もあります。続けられる金額で続けることのほうが、無理な金額で途中でやめてしまうよりも、長い目で見ればずっと大きな力になります。
まとめ:日経平均暴落は長期投資の通過点にできる
出典:Unsplash(撮影:micheile henderson)
11月6日の日経平均暴落は、下落幅こそ歴代3位でしたが、下落率では歴代20位の圏外でした。株価の水準が6万円台まで上がった今は、同じ率の下げでも「〇〇円安」という数字が大きく見えやすくなっています。そして2024年8月の歴代1位の暴落は、約2週間で元の水準まで戻り、その後も株価は高値を更新してきました。
もちろん、今回も同じように戻るとは限りません。AI投資への懸念は、まだしばらく相場を揺らすかもしれません。だからこそ、相場を当てることより、どんな相場でも続けられる形を整えることに力を注いでほしいのです。生活防衛資金を確かめ、資産の偏りを見直し、積立設定はそのままに。それだけで、急落はただの恐怖ではなく、将来への仕込みの時間に変わります。
不安なのは、あなたが真剣に未来のお金と向き合っている証拠です。その気持ちを大切にしながら、今日は証券アプリを閉じて、10年後の自分の暮らしを思い浮かべてみませんか。あなたが新NISAを始めたときに描いた未来は、1週間の値下がりで消えてしまうものではないはずです。
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や投資行動を推奨するものではありません。過去のデータは将来の運用成果を保証するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。
参考:日本経済新聞、共同通信、日経平均プロフィル(日経平均株価の記録)、マネックス証券、SBI証券の各公表資料(2026年11月7日時点)
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