SBI証券の乗っ取り対策|被害3049億円から学ぶ今日の3設定

ある朝、いつものようにSBI証券のアプリを開いたら、買った覚えのない株が並んでいて、大切なお金が減っていた。そんなことが、実際に多くの人の身に起きています。2025年には、フィッシングなどで盗まれたIDやパスワードを使った証券口座の乗っ取りが急増し、金融庁の発表では、2025年1月から4月末までに不正取引が3505件、金額は約3049億円にのぼりました。「自分は少額だから狙われない」「設定がむずかしそうで後回しにしている」という人も多いはずです。でも、SBI証券の乗っ取り対策は、投資を長く続けたい人にとって、いちばん最初に用意しておくべき「お守り」です。

この記事は、SBI証券を使っている人、これから口座を開く人、そして「乗っ取りが怖いけれど何から始めればいいかわからない」という投資初心者のために書きました。中学生にもわかる言葉で、乗っ取りが起きる理由と、今日からできる3つの設定を順番に紹介します。読み終えるころには、いまの設定を見直して、安心して投資を続けるための一歩を踏み出せるはずです。

この記事でわかること

  • 乗っ取りが「運」ではなく「設定の差」で起きやすくなる理由
  • 偽メールや偽サイトにだまされないための考え方
  • ログインの入口とお金が動く出口を別々に守るコツ
  • 設定したあとも続けられる月1回のかんたん点検

目次

第1章:SBI証券の乗っ取り対策が今すぐ必要な理由|口座乗っ取りの被害の実態

株価チャートが複数の画面に表示された作業スペース

画像出典:Photo by Jakub Żerdzicki on Unsplash

証券口座の乗っ取りは他人事ではない

「証券口座の乗っ取り」と聞いても、自分には関係のない遠い世界の話だと感じる人は多いと思います。けれども、SBI証券のような大きなネット証券でも、他人があなたになりすましてログインし、勝手に株を売ったり買ったりする事件が実際に起きました。ネット証券は、家にいながらスマホ一つで売買できる便利なしくみです。その便利さの裏側には、IDやパスワードなどの「合言葉」を盗まれると、悪い人にも同じことができてしまうという弱点があります。

この章では、まず「なぜSBI証券の乗っ取り対策が必要なのか」を、数字と身近な例でやさしく説明します。むずかしい専門用語はできるだけ使わず、中学生のみなさんにも伝わる言葉で進めますので、安心して読んでください。

先に、いちばん伝えたい主張を一つだけお話しします。乗っ取りは「運が悪い人だけに起きること」ではなく、「守りの設定がうすい口座が狙われやすい」という問題です。裏を返せば、設定を少し見直すだけで、狙われにくい口座に近づけるということでもあります。

数字で見る証券口座の被害の広がり

金融庁の発表によると、2025年1月から4月末までの約4か月間で、証券口座の不正な取引は3505件、金額は約3049億円にのぼりました。ほかにも、2025年1月から6月までの不正アクセスは1万2758件、不正取引の金額は5700億円を超えたと紹介する記事もあります。数字は、発表した人や集計した期間によって少しずつ違いますが、被害が短い期間で大きく広がったという点は共通しています。

集計の期間被害の大きさ数字の出どころ
2025年1月〜4月末不正取引3505件、約3049億円金融庁の発表(東洋経済オンラインの報道)
2025年1月〜5月末不正アクセス1万422件、不正取引5958件、不正売買5240億円金融庁の発表をもとにしたトレンドマイクロの解説
2025年1月〜6月不正アクセス1万2758件、不正取引5700億円超ダイヤモンド・ザイの解説記事
数字がたくさん出てきて、大きすぎてイメージしにくいですよね。そんなときは「期間や数え方がちがうから数字がちがうだけで、どれも大きな被害を表している」と覚えておけば大丈夫です。大切なのは、これが一度きりの事件ではなく、いまも注意が続いている問題だという点です。

被害が確認されたのは、SBI証券だけではありません。楽天証券、野村証券、SMBC日興証券、マネックス証券、松井証券など、名前をよく聞く大手の会社でも口座の乗っ取りが報告されました。つまり、どの会社を選んでも「自分で守る意識」が必要な時代になった、ということです。

ここで覚えてほしい合言葉は、自分の口座は自分で守るです。会社が用意してくれる仕組みを、自分でスイッチを入れて使うことが、そのまま乗っ取りへの備えになります。

乗っ取られると何が起きるのか具体例で確認

乗っ取りのあとに起きることを、順番に見てみましょう。マネーフォワードの解説などによると、悪い人はまず被害者の口座にログインし、持っている株を勝手に売ります。その売ったお金で、あまり売り買いされていない国内外の小型株を大量に買い付けます。そして、その株の値段が上がったところで、あらかじめ持っていた同じ株を高く売って利益を得ようとする、という流れだと考えられています。

たとえ話で考えてみよう

あなたが大切にしていたお年玉の貯金を、知らない人が勝手に下ろして、価値のよくわからないカードに替えてしまいました。気づいたときには、貯金箱の中身が見慣れないカードだらけです。乗っ取りの被害は、これとよく似ています。

「口座にあった株が消えて、買った覚えのない株が入っている」というのが、被害の典型的なすがたです。元の株を買い戻そうとしても、値段が変わっていたり、手続きに手間がかかったりして、元どおりにするのは簡単ではありません。

SBI証券は2025年7月の発表で、被害にあった人に対して被害額の50パーセントを補償し、さらに一律1万円の見舞金を支給する方針を示しました。補償の話は心強いのですが、半分は戻らない計算ですし、手続きにも時間と気力が必要です。だからこそ、被害にあってから慌てるより、あらかじめ守りを固めておくほうが、ずっと安全で気持ちもラクです。

もう少し身近な場面で考えてみましょう。たとえば、将来の進学費用や、いつか行きたい旅行のために、毎月少しずつ投資信託を積み立てている家庭があるとします。その積み立てたお金が、ある日とつぜん別のものに入れ替わっていたら、どんな気持ちになるでしょうか。金額の大小にかかわらず、コツコツ続けてきた時間と努力を失うのは、とてもつらいことです。だからこそ、小さな金額から始めた人ほど、最初に守りの準備をしておく価値があります。

ここまでのポイントをまとめると、乗っ取りの被害は大きな数字で語られがちですが、その一つひとつは、ふつうの人の大切な資産です。そして、その多くは、IDやパスワードが盗まれたことから始まっています。つまり、盗まれても使われにくい仕組みを自分で整えることが、いちばん現実的な対策になります。

次の第2章では、乗っ取りがどんな手口で行われるのかを、身近な例で説明します。敵のやり方を知ると、このあと紹介する設定の意味が、ぐっとわかりやすくなります。

第2章:SBI証券の乗っ取り対策の前に知る、フィッシングなど狙われる手口

青白く光るノートパソコンのクローズアップ

画像出典:Photo by Philipp Katzenberger on Unsplash

偽メールや偽サイトで合言葉を盗むフィッシング

乗っ取りの入り口として、とくに多いといわれているのが「フィッシング」です。フィッシングとは、本物の会社をよそおった偽のメールやSMSを送り、そこに書かれたリンクから本物そっくりの偽サイトへ誘いこんで、IDやパスワードを入力させて盗む手口のことです。魚つりのように「えさ」でおびき寄せるので、この名前がついたといわれています。

たとえば「口座の安全確認のため、24時間以内にログインしてください」「不正なログインを検知しました」といった、あせらせる文章が届きます。慌ててリンクを押し、いつものログイン画面にそっくりな偽の画面にIDとパスワードを入力すると、その情報がそのまま悪い人の手に渡ってしまいます。画面の見た目だけで本物か偽物かを見分けるのは、大人でもむずかしくなっています。

実際に、SBI証券は2025年4月25日以降、メールの本文にログインやパスワード入力をうながすURLを原則として書かない方針に切り替えたと発表しました。それだけメールのリンクを使った手口が問題になっていた、ということだと考えられます。メールやSMSのリンクからログインしないという習慣は、それだけで大きな守りになります。

パスワードの使い回しとウイルスの危険

手口はフィッシングだけではありません。ほかのサービスから漏れたIDとパスワードの組み合わせを、別のサービスで片っぱしから試すやり方もあります。もしあなたが「どのサイトも同じパスワード」にしていると、一か所から漏れただけで、証券口座まで開けられてしまうかもしれません。

また、パソコンやスマホがウイルスに感染して、入力した文字を盗み見されることもあります。奈良県警察のサイバー犯罪対策課も、怪しいメールやSMSの添付ファイルやリンクを開かないこと、パスワードは長く複雑にして使い回さないこと、金融機関が用意する多要素認証や通知サービスを使うことを呼びかけています。

手口の名前どんなことをされる?基本の守り方
フィッシング偽のメールやSMS、偽サイトでIDとパスワードを入力させられるリンクから入らず、公式アプリや自分で保存したブックマークから開く
パスワードの使い回しほかのサービスで漏れた組み合わせを、順番に試されるサービスごとに、長くて別々のパスワードにする
ウイルス感染入力した内容や画面を、こっそり盗み見されるOSとアプリを最新にして、怪しい添付ファイルを開かない
リアルタイムフィッシング偽の画面に入力させた確認コードを、その場で本物の画面に入力されるコードを入力させる画面はまず疑い、パスキーなど偽サイトに強い方法も使う
「二段階の確認があるから大丈夫」と思いたくなりますが、油断は禁物です。トレンドマイクロなどの専門家は、多要素認証をすり抜けるリアルタイムフィッシングという手口について解説しています。確認コードを偽の画面で入力させて、その場でだましとる方法です。だからこそ、あとで紹介するように、いくつかの守りを重ねることが大切になります。

それっぽい連絡を見分けるチェックの考え方

ここで、怪しい連絡を見分けるための考え方を3つ紹介します。むずかしい知識は必要ありません。

  • 急がせる文章は、まず疑う。
  • リンクや添付ファイルを押す前に、いったん止まる。
  • 本物かどうか不安なときは、自分で公式アプリやブックマークから確認する。

気をつけている人でも被害にあうことがある

著名な個人投資家のテスタさんは、2025年に楽天証券の口座が乗っ取られたとSNSで公表しました。本人は、ウイルス対策ソフトを使い、毎日スキャンもしていたと説明しており、入りこまれた道すじははっきりしていないと伝えられています。ふだんから気をつけている人でも被害にあう可能性があるのですから、ひとつの対策だけに頼らず、いくつかの守りを重ねる考え方が大切です。

身近な例で考えてみましょう。あなたのスマホに「SBI証券:お客様の口座が一時停止されました。こちらから手続きをしてください」というSMSが届いたとします。ここでリンクを押してしまうのが、いちばん危ない動きです。正しい動きは、リンクを押さず、いつものアプリを自分で開いて、お知らせやログインの状態を確かめることです。アプリの中に何も書かれていなければ、そのSMSは偽物の可能性が高いと考えられます。

入口を自分で決めておけば、偽物にだまされる確率は大きく下がります。これは今日からすぐできる、お金のかからない対策です。

もう一つ覚えておいてほしいのは、悪い人は「だまされやすい人」を探しているわけではなく、「だませる確率の高い方法」を大量に試しているという点です。何千通、何万通ものメールを送れば、ほんの一部の人が引っかかるだけでも成功になってしまいます。ですから、自分はだまされないと思いこむより、「だまされるかもしれない」と考えて仕組みで守るほうが、ずっと確実です。

敵の手口がわかったところで、次の章からは、いよいよ具体的な設定に入ります。まずは3つの設定のうち1つ目、ログインの入口を守る方法です。

第3章:SBI証券の乗っ取り対策①ログインの入口を守る多要素認証とパスキー

スマートフォンを手に持つ人

画像出典:Photo by Josh Withers on Unsplash

多要素認証とパスキーをやさしく理解する

1つ目の設定は、ログインの入口を守ることです。入口を守る代表的な方法が「多要素認証」です。むずかしそうな名前ですが、考え方は単純で、本人かどうかを確かめるときに、パスワードに加えて、もう一つ別の証拠も使う仕組みのことです。たとえば、パスワードという「知っていること」と、スマホや指紋といった「持っているもの、自分の体」を組み合わせるイメージです。

日本証券業協会は、2025年6月の時点で、多くの証券会社が多要素認証の設定を必須にすると決めたと報じられています。国全体で、入口の守りを強くする流れが進んでいるのです。

さらに近ごろ注目されているのが「パスキー」です。パスキーは、スマホやパソコンに登録した指紋や顔、画面ロックを使って本人確認をする仕組みで、パスワードを入力しなくてもログインできます。偽サイトでは働かないように作られているので、フィッシングに強いといわれています。

ここでの主張はシンプルです。パスワードだけに頼らず、偽サイトに強い確認方法を一つ足すことが、乗っ取り対策の第一歩です。

SBI証券で確認したい認証まわりの設定

SBI証券では、不正アクセス対策として「デバイス認証」や「FIDO認証」(パスキーにつながる仕組み)などが案内されてきました。また、FIDO認証に対応していないスマホを使う人のために、電話番号による認証が用意されたとする利用者の報告もあります。さらに、パスキーを使ったログインにも対応したと紹介する記事があります。

ただし、設定画面の名前や手順、対応する端末は、アップデートで変わることがあります。この記事では細かい操作方法は書かず、「どんな種類があって、何を選べばよいか」に絞って説明します。実際の操作は、必ずSBI証券の公式サイトやアプリの案内で最新の手順を確かめてください。

認証の種類ひとことで言うと向いている人
パスキー・FIDO認証指紋や顔、画面ロックで本人確認をする。偽サイトでは使えないように作られている対応するスマホやパソコンを使っている人
デバイス認証あらかじめ登録した端末かどうかを確かめて、ログインを守るいつも同じスマホやパソコンを使う人
電話番号認証登録した電話番号を使って、本人かどうかを確かめるパスキーなどに対応しない端末を使っている人
迷ったときの目安は、「まずパスキーなど偽サイトに強い方法が使えるか確認し、使えなければほかの認証を必ず有効にする」です。大事なのは、どれか一つでもよいので「何も設定していない状態」をなくすことです。

設定したあとに決めておきたい3つのルール

認証を設定したら、それで終わりではありません。使い方のルールを決めておくと、守りがぐっと強くなります。

  • 家族や友だちとスマホを共有しない。画面ロックには、推測されにくい番号を使う。
  • 機種変更をするときは、新しい端末で認証をやり直し、古い端末の登録を整理する。
  • 確認コードや認証の画面は、自分がログインしようとしたときだけ出てくるものだと意識する。

よくあるつまずきに注意

認証を設定したあとにスマホを紛失したり、機種変更をしたりすると、ログインできなくなってあわてる人がいます。そうしたときの手続きは、あらかじめSBI証券の公式サイトで確認しておくと安心です。また、ログインの入口だけを守っても、取引やお金の出入りの守りが弱いままだと不安が残ります。次の章では、その部分を扱います。

具体例を一つ考えてみましょう。中学生のAさんは、保護者と一緒にSBI証券の口座の管理をしているとします。Aさんは、まず保護者のスマホで、パスキーなど使える認証を確認し、設定しました。次に、機種変更をしたときの手順をメモに書き、紙に残しておきました。それだけで「もしもの日」に落ち着いて動けます。

設定をするときのコツも伝えておきます。まず、時間に余裕のあるときに、落ち着いた場所で作業しましょう。通学前や寝る前などのあわただしい時間帯は、操作ミスや見落としの原因になります。つぎに、作業の途中で出てきた案内は、必ず公式の画面で読むようにしてください。検索で見つけた古い手順の記事は、画面が変わっていることがあります。最後に、設定が終わったら、一度ログアウトしてから入り直し、ちゃんと新しい認証が働くかを自分の目で確かめておくと安心です。

また、保護者と一緒に口座を使っている場合は、家族の間で「誰がどの端末を管理するか」を話し合っておくのもおすすめです。端末の持ち主がはっきりしていると、紛失や機種変更のときも、すばやく動けます。

入口の守りは、一度整えれば毎日の手間はほとんど増えません。パスワードだけだった状態から、もう一歩進むだけで、乗っ取りの危険はぐっと小さくなります。次の第4章では、2つ目の設定、お金が動く出口を守る方法を見ていきましょう。

第4章:SBI証券の乗っ取り対策②使わない取引と出金の道をふさぐ設定

暗号化を意味する英単語が並んだ木のブロック

画像出典:Photo by Markus Winkler on Unsplash

使わない取引を止める取引制限という考え方

2つ目の設定は、お金が動く出口を守ることです。ログインの入口を守っていても、万が一入られたときに「何でもできてしまう」状態だと、被害が大きくなります。そこで役に立つのが、使わない取引をあらかじめ止めておく「取引制限」という考え方です。

たとえば、あなたが投資信託の積立だけをしているとします。それなのに、口座の中では、国内株式の売買や信用取引、外国株の取引まで自由にできる状態になっているかもしれません。使わない機能が開きっぱなしだと、悪い人にとっては、それだけ動かせる場所が多いことになります。SBI証券でも、ウェブ上で取引の制限を設定する方法があると、利用者の解説記事で紹介されています。

主張を一言でいうと、使わない取引は、使わないうちから止めておくのがいちばん安全ということです。家の窓を、使わない部屋の分まで開けっぱなしにしないのと同じ考え方です。

取引パスワードを金庫のカギとして守る

SBI証券には、ログインのためのパスワードとは別に、取引のときに使う6桁の「取引パスワード」があります。解説サイトでは、ログインパスワードを家の玄関のカギ、取引パスワードを家の中の金庫のカギにたとえています。株を売り買いしたり、出金の指示をしたりするときの、最後の承認に使うものです。

この2つが別々になっているおかげで、もしログインパスワードだけが漏れても、すぐに資産が動かされるわけではない、という考え方もできます。ただし、フィッシングの偽サイトで、両方まとめて入力させられてしまうこともあるので、油断はできません。

取引の種類の例使う人のイメージ考え方
投資信託の積立毎月コツコツ積み立てている人積立以外の取引を使わないなら、制限できるか確認する
国内株式の売買個別株を自分で売り買いする人使うなら、取引パスワードと認証を特に丁寧に守る
信用取引や外国株経験者や、特定の目的がある人使わない人は、制限をかけておくと安心
取引パスワードは、ほかのサービスで使っていない番号にして、誕生日や電話番号のような推測されやすい数字は避けましょう。スマホのメモ帳などにそのまま書いておくのもおすすめできません。

登録情報の変更とお金の出口を確認する

乗っ取りの被害では、登録しているメールアドレスが勝手に変えられるといった、不審な動きも報告されています。メールアドレスを変えられると、ログインの通知が本人に届かなくなり、気づくのが遅れてしまうからです。ふだんから、登録しているメールアドレスと電話番号が自分のものになっているかを、ときどき確かめましょう。

お金の出口についても、出金先が自分の名義の口座だけになっているか、登録内容に見覚えのない変更がないかを確認する習慣が大切です。細かい手順は変わることがあるので、公式サイトの案内で最新の内容を見てください。

制限をかけるときの注意

取引制限は、かけっぱなしにすると、自分が使いたくなったときに困ることがあります。制限を自分で解除できるのか、手続きに時間がかかるのかを、設定する前に必ず公式の案内で確認しましょう。「必要になったら解除する」と決めておけば、無理なく続けられます。

具体例として、毎月1万円を投資信託で積み立てているBさんを考えてみます。Bさんは、積立だけを使っているので、使わない取引の制限を確認し、取引パスワードも新しく設定し直しました。さらに、登録メールアドレスが自分のものかも見直しました。この作業にかかった時間は、ほんの数十分です。それでも、もしものときに動かされる範囲がせまくなり、安心感が大きく変わりました。

ここで、自分の投資のスタイルを整理してみましょう。紙やメモアプリに「自分が使っている取引」と「使っていない取引」を書き分けるだけで十分です。たとえば、「投資信託の積立だけ使う」「国内株は月に数回だけ売買する」「外国株や信用取引は使わない」といった具合です。書き出してみると、意外と使っていない機能が多いことに気づく人がたくさんいます。使っていない機能は、制限できるかどうかを公式の案内で確認し、できるものから順番に止めていきましょう。

もう一つ大切なのは、取引パスワードの扱いです。ログインのときに入力するパスワードと同じ文字や数字にしないこと、人に見られる場所に書かないこと、そしてメールやSMSで「取引パスワードを入力してください」と求められても、リンクから入力しないことです。本物の会社が、メールのリンク先で取引パスワードの入力を求めることはないと考えて、まず疑う姿勢を持ちましょう。

動かせる範囲をせまくすれば、被害の大きさもおさえやすくなる、これが出口を守る設定のいちばんの価値です。入口と出口の両方を守れたら、あとは日々のちいさな習慣で守りを固めましょう。次の第5章では、3つ目の設定を紹介します。

第5章:SBI証券の乗っ取り対策③通知と毎日の習慣で守りを固める

スマートフォンに表示された株価チャート

画像出典:Photo by Coinstash Australia on Unsplash

ログイン通知と取引通知を味方にする

3つ目の設定は、「早く気づく仕組み」を作ることです。どんなに対策をしても、被害が起きる可能性をゼロにはできません。だからこそ、もしものときに、できるだけ早く異変に気づけるようにしておくことが、被害を小さくするカギになります。

奈良県警察の注意喚起でも、金融機関や証券会社が提供している多要素認証や通知サービスを有効にすることが、対策の一つとして挙げられています。ログインがあったときや、取引があったときにメールなどで知らせてもらえる設定があれば、まず使えるかどうかを確認しましょう。

SBI証券の案内でも、身に覚えのないログイン通知が届いたり、不正アクセスの疑いがあったりしたときは、すぐにパスワードを変更し、SBI証券に連絡するよう伝えられています。通知は、乗っ取りを早く見つけるための「見張り番」です。

ログインの入口を一つに決める習慣

もう一つの大事な習慣は、ログインの入口を一つに決めることです。具体的には、公式アプリか、自分で保存したブックマークからだけ、SBI証券を開くと決めます。検索で出てきた広告のリンクや、メールやSMSのリンクからは入りません。

入口を決めておくと、偽サイトに出会う確率がぐっと下がります。また、友だちから届いたリンクや、SNSで流れてきた「お得な情報」のリンクも、証券口座のログインには使わない、と決めておくと安心です。

いつ何を確認する?見るポイント
通知が届いたときログインや取引の通知メール身に覚えのない通知なら、すぐパスワードを変えて公式の窓口へ連絡する
週に1回保有している銘柄と注文の履歴買った覚えのない銘柄や、知らない注文がないか
月に1回登録メール、電話番号、認証の設定勝手に変えられていないか、設定が元のままか
週に1回、月に1回の確認といっても、1回に5分もかかりません。カレンダーに「口座チェック」と登録して、歯みがきのように習慣にしてしまうのがおすすめです。習慣になれば、もう迷うことはありません。

月1回の点検ともしもの時の動き方

もしも、買った覚えのない銘柄が口座に入っていたり、身に覚えのないログイン通知が届いたりしたら、あわてずに順番に動きましょう。まず、パスワードを変更します。つぎに、SBI証券の公式のカスタマーサポートに連絡します。そして、必要に応じて、警察の相談窓口に相談します。警察の相談専用電話は「#9110」です。

もしもの時の動き方、3ステップ

1つ目は、公式アプリやブックマークから入り直して、パスワードを変更すること。2つ目は、SBI証券の公式窓口に、起きたことを落ち着いて伝えること。3つ目は、いつ何があったかをメモや画面の写真で残しておくこと。記録があると、あとの相談がスムーズになります。

具体例として、Cさんの場合を見てみましょう。Cさんは、毎週日曜日の夜に、保有している銘柄と注文の履歴を見る習慣をつけていました。ある週、知らない銘柄が1つ増えていることに気づき、すぐにパスワードを変更して公式の窓口に連絡しました。早く動けたおかげで、落ち着いて対応を進めることができました。

習慣を続けるコツは、「ついで」に組み込むことです。たとえば、毎週日曜日の夜に、明日の持ち物を確認するついでに、口座の注文履歴も見ます。月の最初の日には、スマホのアプリを更新するついでに、登録メールアドレスや認証の設定を見直します。新しい習慣を一から作るより、すでにある習慣にくっつけるほうが、ずっと長続きします。

スマホやパソコン自体の守りも、口座の守りの一部です。OSやアプリを最新の状態に保つこと、画面ロックを必ず設定すること、怪しいアプリを入れないこと、公共の無料Wi-Fiで証券口座にログインしないこと。どれも、今日から無料でできることばかりです。口座の設定がどれだけ強くても、端末がウイルスに感染していては意味がありません。端末と口座は、セットで守るものだと考えましょう。

そして、IDやパスワードの管理にも気を配りましょう。パスワードは、サービスごとに別々にして、長く推測されにくいものにします。覚えきれないときは、信頼できるパスワード管理アプリを使うのも一つの方法です。紙に書くなら、人目につかない場所にしまいましょう。ほかのサービスで情報が漏れたとわかったら、証券口座のパスワードも念のため変えておくと安心です。

さらに、家族とのルールも決めておくとよいでしょう。家族で同じスマホやパソコンを使うなら、証券口座にログインした状態のまま放置しないこと、ログイン情報を家族のチャットに送らないことなどです。身近な人との間でも、決まりごとがあるだけで、うっかりミスはぐっと減ります。

小さな習慣の積み重ねが、いちばん強い守りになると覚えておいてください。設定は一度で終わりますが、習慣は続けることで力を発揮します。次はいよいよ最後のまとめです。今日の一歩を、一緒に決めましょう。

まとめ:SBI証券の乗っ取り対策は今日の3つの設定から始めよう

スマートフォンを持つ手のシルエット

画像出典:Photo by Clint Patterson on Unsplash

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。SBI証券の乗っ取り対策のポイントを、もう一度整理します。1つ目は、パスキーなどの多要素認証でログインの入口を守ること。2つ目は、使わない取引を止めて、取引パスワードやお金の出口を守ること。3つ目は、通知と毎日の習慣で、異変に早く気づけるようにすることです。この3つを重ねることで、乗っ取りは「起きにくく、起きても早く気づける」ものになります。

「むずかしそう」「面倒くさい」と感じるかもしれません。でも、1つずつなら、どれも十数分で終わります。今日は認証の確認だけ、次の週末は取引制限の確認だけ、というように分けても大丈夫です。完璧を目指すより、まず1つ動くことが、いちばん大切です。

不安な気持ちが残るのは、あなたが自分のお金を大切に思っている証拠です。対策をしても、リスクがゼロになるわけではありません。それでも、何もしない状態と、できることをやった状態では、安心感がまったく違います。投資は長い旅のようなものです。守りを整えた分だけ、落ち着いて続けられます。

最後に、一つ問いかけです。今日、この記事を閉じる前に、どの設定から見直してみますか? スマホを手にとって、SBI証券の公式アプリを開くところから、さっそく始めてみましょう。

※この記事は一般的な情報の紹介であり、投資や個別の対策を保証するものではありません。設定の名称や手順は変更されることがあるため、最新の内容はSBI証券の公式サイトでご確認ください。

参考にした情報:東洋経済オンライン、ダイヤモンド・ザイ、ロケットボーイズ(SBI証券のメール方針)、ロケットボーイズ(SBI証券の補償)、トレンドマイクロ、マネーフォワード、奈良県警察

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