老後のお金をそろそろ本気で考えなくては、と感じている50代、60代の方は多いのではないでしょうか。「投資は怖い」「でも預金だけでは物足りない」という気持ちは、とても自然なものです。そんな方の選択肢として、いま注目されているのが個人向け国債です。個人向け国債は、国が元本と利子の支払いに責任を持つ債券で、1万円から買うことができます。しかも2026年10月募集分は、固定5年が年2.39%と、数年前には考えられなかった水準になりました。ただし、個人向け国債には変動10年・固定5年・固定3年の3つのタイプがあり、選び方しだいで受け取れる金額が変わります。この記事では、中学生にもわかる言葉で、3つのタイプの違い、最新の金利、100万円を預けたときの利子の目安、そして50代60代の方が失敗しないための選び方を順番に解説します。読み終えるころには、自分に合う個人向け国債の姿が見えてくるはずです。
この記事でわかること
- 減りにくさと利子の増えやすさを両立できる意外な仕組み
- 金利のタイプで手元に残るお金がどう変わるのか
- 100万円を預けたときに受け取れる利子のリアルな金額
- 急にお金が必要になったときに慌てないための備え方
- 今日から動き出すための小さな最初の一歩
目次
- 第1章:50代60代が個人向け国債に注目すべき理由
- 第2章:個人向け国債の3タイプ(変動10年・固定5年・固定3年)の違い
- 第3章:2026年10月募集の個人向け国債の金利と100万円の利子
- 第4章:50代60代が個人向け国債で失敗しない選び方
- 第5章:個人向け国債の買い方と中途換金の注意点
- まとめ:個人向け国債で50代60代の毎日にゆとりを足そう
第1章:50代60代が個人向け国債に注目すべき理由
写真:Vitaly Gariev|Unsplash
50代、60代になると、退職金や貯金、そして年金のことが急に身近な話題になってきます。「あと何年働けるだろう」「この先、お金は足りるだろうか」と、夜にふと不安になる方も少なくありません。かといって、株や投資信託のように値段が大きく動く商品には、どうしても抵抗がある。そんな気持ちはとても自然なものです。そこで知っておきたいのが個人向け国債です。この章では、なぜ今、50代60代の方に個人向け国債が向いていると言われるのか、やさしい言葉で順番にお話しします。
個人向け国債と定期預金の違い
個人向け国債とは、日本の政府がお金を借りるときに発行する国債のうち、私たち個人が買いやすいように作られたものです。言いかえると、あなたが国にお金を貸して、そのお礼として利子を受け取るしくみです。銀行の定期預金と似ていますが、お金を預ける相手が銀行ではなく国である点が大きく違います。
定期預金は、銀行がもしものことになっても、預金保険制度によって1つの金融機関につき元本1000万円とその利息までが守られます。一方、個人向け国債は、国が元本と利子の支払いに責任を持ちます。たとえば退職金が2000万円あるとき、1つの銀行に全部を預けると、1000万円をこえた分は預金保険の対象になりません。個人向け国債なら、そうした上限を気にせずに持てるのが心強いところです。
また、1万円から1万円単位で買えるので、まずは10万円だけ試してみる、という始め方もできます。多くの金融機関では、買うときの手数料もかかりません。
国の調査では、個人向け国債を買っている人のうち、60代以上がおよそ半分を占めていると紹介されています。20代や30代で買っている人もいますが、人生の後半に差しかかった世代ほど、「減らさずに守りたい」という気持ちが強く、その受け皿として選ばれているのです。同じ世代の人たちが選んでいると知るだけでも、はじめの一歩は少し軽くなるのではないでしょうか。
元本割れしにくいから安心して持てる
個人向け国債の大きな特徴は、元本の値段が変わらないことです。株や一般的な債券は、毎日値段が上がったり下がったりします。ところが個人向け国債は、額面100円につき100円で買い、満期には100円で戻ってきます。途中で換金するときも、元本の部分は100円のままです。
さらに、世の中の金利が大きく下がった時期でも、年0.05%という最低金利が決まっています。つまり、利子がゼロになってしまうことはありません。値動きをニュースで追いかけてドキドキしなくてよいので、「減らさないこと」を最優先にしたい50代60代の方と、とても相性がよい商品だと言えます。
たとえば、スーパーで毎日のように値札を見くらべるのと同じように、株の値段を毎日チェックしていると、それだけで気持ちがつかれてしまうものです。個人向け国債は、買ったあとに値段を気にする必要がほとんどありません。毎日の暮らしを楽しみながら、お金には静かに働いてもらう。そんなゆったりした付き合い方ができるのも、この商品が長く選ばれている理由のひとつです。
ひとことメモ
ただし「絶対に何も心配いらない」わけではありません。発行から1年たつ前は原則として換金できませんし、1年たった後に途中で換金すると、決まった金額が差し引かれます。このルールは第5章でくわしく説明します。
金利が上がっているいまが見直しの好機
個人向け国債の金利は、2024年の前半ごろまで0.5%を下回る水準が中心でした。「利子がほとんどつかないから、あまり意味がない」と感じていた方も多いはずです。ところが2026年10月募集分では、固定5年が年2.39%、固定3年が年2.07%、変動10年の初回が年2.05%まで上がっています。数年前とくらべると、まるで別の商品のように魅力が増したのです。
まず、個人向け国債の基本をひと目で確認しておきましょう。
| 項目 | 内容 | うれしいポイント |
|---|---|---|
| 元本 | 100円で買って100円で戻る | 値下がりの心配が少ない |
| 最低金利 | 年0.05%を保証 | 利子がゼロにならない |
| 購入単位 | 1万円から1万円単位 | 少額から試せる |
| 利子の受け取り | 半年に1回、年2回 | 生活費に回しやすい |
| 募集のペース | 毎月募集される | 買う時期を分けやすい |
では、具体的な場面を考えてみましょう。ここでは、あくまで例としてのお話です。58歳のAさんは、あと2年で定年を迎えます。将来の退職金のうち300万円を、すぐには使う予定がないお金として、固定5年の個人向け国債にまわすことにしました。年2.39%なら、税金を引く前で1年に約7万1700円の利子です。税金を引いた後でも約5万7000円ほどになり、月にならすと約4700円です。大きな金額ではないかもしれませんが、毎月の光熱費の一部をまかなえる、と考えると心強い金額ではないでしょうか。
このように、個人向け国債は、減らさずに少しずつ増やしたい方の「土台」になってくれます。次の章では、変動10年、固定5年、固定3年という3つのタイプの違いを、たとえ話を交えながらわかりやすく整理していきます。
第2章:個人向け国債の3タイプ(変動10年・固定5年・固定3年)の違い
写真:Konstantin Evdokimov|Unsplash
個人向け国債を買おうと思ったとき、最初にぶつかるのが「どのタイプを選べばいいの?」という悩みです。個人向け国債には、変動10年、固定5年、固定3年という3つの種類があります。名前だけ見ると難しそうですが、実は考え方はとてもシンプルです。ちがうのは、お金を貸す期間と、利子の決まり方のふたつだけ。この章では、そのちがいをたとえ話も交えながら、中学生にもわかるように説明します。
変動10年は半年ごとに金利が見直される
変動10年は、満期までが10年と長いタイプです。その代わり、利子の割合である適用利率が半年ごとに見直されます。見直しのもとになるのは、10年もの国債の入札でついた平均の利回りで、これに0.66をかけた数字が、次の半年間の利率になります。世の中の金利が上がれば自分の利率も上がり、下がれば自分の利率も下がる、というしくみです。
たとえるなら、季節に合わせて服をえらびなおすようなものです。暑い時期には薄着、寒い時期には厚着というように、そのときの世の中に合わせて調整してくれます。金利が上がっていく時期には、置いておくだけで利子が増えていく可能性があるのが強みです。ただし、金利が下がる時期には利子も減ります。それでも、年0.05%の最低金利はいつでも保証されています。
もうひとつ、変動10年には大きな特徴があります。満期は10年先ですが、発行から1年がたてば、いつでも中途換金ができる点です。つまり、10年間ずっと縛られるわけではありません。「長い間ねかせてもよいけれど、いざというときは出口もある」という柔軟さが、変動10年の持ち味だと言えるでしょう。ただし、中途換金のときは、決まった金額が差し引かれることを忘れないでください。
固定5年と固定3年は買った日の金利が続く
固定5年と固定3年は、買ったときに決まった利率が、満期まで変わりません。固定5年の利率は、5年もの国債の基準金利から0.05%を引いた数字、固定3年は、3年もの国債の基準金利から0.03%を引いた数字で決まります。
たとえるなら、値札が変わらない定額プランのようなものです。買った日の約束がそのまま続くので、「5年後にいくら受け取れるか」が、はじめからはっきりわかります。計画を立てやすいことが、固定タイプ最大の魅力です。反対に、買った後で世の中の金利が上がっても、自分の利率は上がりません。これは覚えておきたい注意点です。
3タイプに共通すること
利子は半年に1回、年2回受け取れます。お申し込みは1万円から1万円単位で、買う値段は額面100円につき100円です。満期には額面どおりの金額が戻り、発行から1年たてば、いつでも中途換金ができます。
満期の長さでお金の動かしやすさが変わる
3つのタイプを、見くらべやすいように表にまとめました。
| タイプ | 金利のきまり方 | たとえるなら |
|---|---|---|
| 変動10年 | 半年ごとに見直し。10年国債の利回りに0.66をかける | 季節に合わせて服をえらびなおす |
| 固定5年 | 満期まで同じ。5年国債の基準金利から0.05%を引く | 値札が変わらない定額プラン |
| 固定3年 | 満期まで同じ。3年国債の基準金利から0.03%を引く | 短い期間で区切る短期契約 |
満期の長さは、お金の動かしやすさに直結します。固定3年なら、3年後には確実にお金が戻ってくるので、「3年後に使う予定がある」方に合います。固定5年は、その少し先の予定、たとえば65歳の年金開始に合わせたお金に向いています。変動10年は満期が遠いものの、1年たてばいつでも中途換金できるので、「いつ使うかまだ決められないお金」を置いておく場所として考えられます。
ここで、もう少しイメージしやすいように、仮の例を考えてみます。62歳のBさんは、3年後に子どもの結婚資金として200万円を用意したいと考えています。このお金は、減ったら困りますし、3年後という期限もはっきりしています。この場合は、満期が3年後に来る固定3年が、予定とぴったり重なります。もし、いつ使うかわからないお金が別にあるなら、そちらは変動10年にしておき、必要になったら1年後以降に換金する、という使い分けもできます。
さらに、63歳のDさんのように、「5年後に使うお金」と「10年後でも困らないお金」の両方がある方もいます。その場合は、近い予定のお金を固定5年に、遠い予定のお金を変動10年に、という組み合わせが考えられます。ひとつのタイプにしぼらなくても大丈夫です。お金の使い道ごとにタイプを選べるのが、3つの種類が用意されている理由なのです。
つまり、タイプ選びで大切なのは、金利の数字だけを見ることではなく、お金を使う時期を先に思い浮かべることです。次の章では、2026年10月に募集されている個人向け国債の最新の金利と、100万円を預けたときの利子の目安を、具体的な数字で見ていきましょう。
第3章:2026年10月募集の個人向け国債の金利と100万円の利子
写真:Karen Z|Unsplash
仕組みがわかったら、次に気になるのは「実際にいくら増えるの?」という点ですよね。個人向け国債の金利は、毎月の募集のたびに決まり直します。この章では、2026年10月募集分の最新の条件を確認し、100万円を預けたときの利子を、中学生でも計算できる形で見ていきます。数字を知っておくと、ほかの金融商品とくらべるときにも役立ちます。
2026年10月募集分の金利を確認しよう
2026年10月7日に財務省から発表された条件によると、10月の募集期間は10月8日から10月30日まで、発行日は11月16日です。3つのタイプの金利は、次のとおりです。
| タイプ(回号) | 税引前の年利 | 税引後の年利 |
|---|---|---|
| 変動10年(第199回)初回 | 2.05% | 約1.63% |
| 固定5年(第187回) | 2.39% | 約1.90% |
| 固定3年(第197回) | 2.07% | 約1.65% |
変動10年の2.05%は、あくまで最初の半年に適用される初回の利率です。その後は半年ごとに見直されるため、同じ数字が10年間続くわけではありません。また、税引後の数字は、利子にかかる税金の20.315%を引いたものです。実際に手元に残るのはこちらの金額なので、くらべるときは税引後で考えるとわかりやすくなります。なお、お申し込みの締め切りは金融機関ごとに少しずつ違い、インターネットでの手続きは、募集の最終日より早く終わることがあります。ご利用の金融機関で、必ず期限を確認してください。
ところで、なぜ毎月、金利が変わるのでしょうか。それは、個人向け国債の金利が、国が市場で売り出す国債の利回りをもとに決められているからです。固定5年なら5年もの、固定3年なら3年もの、変動10年なら10年ものの国債の利回りが、土台になります。世の中の金利が動けば、個人向け国債の金利も一緒に動くと覚えておくと、ニュースで金利の話題を見たときにも、自分の問題として受け取りやすくなります。
100万円を預けたときの利子の目安
計算は、とても簡単です。100万円に年利をかければ、1年分の利子がわかります。固定5年なら、100万円に2.39%をかけて、税引前で年2万3900円です。利子は半年に1回受け取るので、1回あたり約1万1950円になります。税金を引くと、手元に残るのは1年で約1万9000円ほどです。
100万円を持ち続けたときの利子(満期まで金利が変わらない固定タイプの目安)
- 固定5年:税引前で5年間に約11万9500円、税引後で約9万5000円
- 固定3年:税引前で3年間に約6万2100円、税引後で約4万9000円
- 変動10年:最初の半年は税引前で年2万500円ペース。その後は金利しだいで変わる
たとえば、300万円を固定5年に預けた場合を考えてみましょう。税引後の利子は1年で約5万7000円、5年間で約28万5000円になります。元本をそのままに、5年間で旅行1回分くらいの利子が受け取れると考えると、かなり身近に感じられるのではないでしょうか。もちろん、この数字は募集月の金利で決まるため、将来同じ条件で買えるとは限りません。
さらに、定期預金と見くらべてみるのもよい方法です。同じ100万円でも、年0.3%の預金なら、1年の利子は税引前で3000円です。これに対して固定5年なら2万3900円ですから、金額にして8倍近い差になります。もちろん、預金には預金の使いやすさがありますが、すぐに使う予定のないお金なら、利子の差は見逃せません。まずは、いま自分が持っているお金が、どれくらいの利子を生んでいるのかを、通帳やアプリで確認してみることをおすすめします。
ここ数か月で金利はどう動いたか
最近の金利は、毎月少しずつ上がってきました。2026年7月から10月までの募集分を、タイプごとにならべてみます。
| タイプ | 7月、8月、9月、10月の年利 | 4か月での変化 |
|---|---|---|
| 変動10年(初回) | 1.80%、1.87%、1.95%、2.05% | 0.25ポイント上昇 |
| 固定5年 | 1.95%、2.06%、2.24%、2.39% | 0.44ポイント上昇 |
| 固定3年 | 1.56%、1.71%、1.96%、2.07% | 0.51ポイント上昇 |
どのタイプも、4か月つづけて上がっています。ここで気をつけたいのは、「この先も上がり続ける」と決めつけないことです。金利は経済の状況や市場の動きで、上がることも下がることもあります。だからこそ、数字の勢いに乗り遅れまいと焦るのではなく、自分のお金の使い道に合うタイプを落ち着いて選ぶことが大切です。
もうひとつ、固定タイプには「買った月の金利がずっと続く」という性質があることも思い出してください。金利が高い月に買えば、その高さを満期までずっと受け取れます。ですから、金利が上がっている最中にまとめて買うのではなく、少しずつ分けて買い、いくつかの月の金利を組み合わせる方法も、じっくり考える価値があります。
この章でわかったのは、いまの個人向け国債が、数年前とはまったく違う水準にあることでした。次の章では、50代60代の方が失敗しにくい選び方を、お金の使い道から順番に考えていきます。
第4章:50代60代が個人向け国債で失敗しない選び方
写真:wanderplans.com|Unsplash
ここまでで、個人向け国債の仕組みと、いまの金利がわかりました。次に気になるのは「結局、自分はどれを選べばいいの?」という点だと思います。じつは、50代60代の方が個人向け国債を選ぶときに大切なのは、金利の高さをくらべることよりも、自分のお金の使い道を先に決めることです。この章では、失敗しにくい選び方を3つの考え方に分けて、順番にお伝えします。なお、この記事は情報の提供が目的で、特定の商品をすすめるものではありません。最後は、ご自身の状況に合わせて判断してください。
お金を使う時期から逆算して選ぶ
いちばん基本になるのが、「そのお金を、いつ使うか」から逆算する方法です。個人向け国債は、満期まで持つことで、最も安心して使える商品です。そのため、使う時期と満期のタイミングを合わせておくと、慌てる場面が少なくなります。
たとえば、3年後に家のリフォームを予定しているなら固定3年、65歳から年金がはじまるまでの5年間のつなぎ資金なら固定5年、というように考えます。満期の日と、お金が必要になる日をそろえることが、失敗を防ぐいちばんの近道です。目安を表にまとめました。なお、ここで紹介するのは考え方の一例で、どれが正解というわけではありません。ご家族の状況や、ほかに持っている資産によっても、最適な組み合わせは変わります。
| お金の使い道の例 | 考えられるタイプ | 理由 |
|---|---|---|
| 3年後のリフォームや車の買いかえ | 固定3年 | 満期の日と使う日を合わせやすい |
| 年金開始までのつなぎ資金 | 固定5年 | 高めの利率を5年間ずっと受け取れる |
| いつ使うか決められない余裕資金 | 変動10年 | 1年後からは換金できて、金利の上昇にも対応しやすい |
金利が上がる未来と下がる未来のどちらに備えるか
ふたつ目の考え方は、これから先の金利が上がるか、下がるかへの備えです。ただし、金利の未来を言い当てることは、プロの投資家にもできません。大切なのは当てることではなく、どちらになっても困らないようにしておくことです。
もし金利が今後さらに上がるなら、半年ごとに利率が見直される変動10年は、利子が増えていく恩恵を受けられます。反対に、金利が下がっていくなら、買った時点の高い利率を満期まで守れる固定タイプが有利になります。つまり、固定タイプは「下がる未来」への備え、変動タイプは「上がる未来」への備え、と整理できます。
ここで、仮の例を見てみましょう。60歳のCさんは、退職金のうち600万円を個人向け国債にまわす予定です。Cさんは、金利が上がるのか下がるのか、自分では判断できません。そこで、300万円を固定5年、300万円を変動10年に分けました。固定5年の分は、年2.39%の約束が5年間続きます。変動10年の分は、将来金利が上がれば利子も増えます。どちらに転んでも、半分は安心できるので、心が落ち着いて毎日を過ごせるというわけです。
この分け方は、一度決めたら変えられないものではありません。数年たって状況が変わったら、満期を迎えたお金を、そのときの金利と自分の予定に合わせて、新しく選びなおせばよいのです。「いま、完全に正しい答えを出さなくてもよい」と考えると、気持ちがぐっと楽になります。
全額を一つにせず分けるという考え方
みっつ目は、お金を分けるという考え方です。個人向け国債は毎月募集されているので、「今月は100万円、来月は100万円」というように、買う時期をずらすことができます。買う時期を分けると、金利が低い月にまとめて買ってしまう失敗を、やわらげられます。
さらに、満期の来る時期を少しずつずらしておくと、毎年どこかでお金が戻ってきます。これは、階段のようにならべることから、ラダー型とよばれる方法です。たとえば、固定3年を毎年1回買っておけば、3年目以降は毎年、満期のお金が手元に戻ります。そのお金を、必要なら使い、必要なければ、その時点の金利で買い直せます。
たとえば、毎年200万円ずつ固定3年を買う場合を考えてみましょう。3年後には、はじめに買った200万円が満期をむかえます。その後は毎年、200万円が戻ってきます。生活のために使ってもよいですし、金利が高ければ、同じ固定3年や、ほかのタイプに買いかえることもできます。長い目で見て、金利の変化に少しずつ合わせていける点が、この方法の魅力です。
買う前に確認したい3つのこと
- 急な入院や修理に使える生活の予備資金は、すぐ引き出せる預金に残してある
- 買ったお金は、少なくとも1年は使わなくても生活できる
- どのタイプも、満期や換金のルールを自分の言葉で説明できる
この3つがそろっていれば、個人向け国債は、あなたの安心を支える味方になってくれます。次の章では、実際に買うときの手順と、中途換金のルール、税金のことを、具体的な計算とともに説明します。ここを押さえておくと、買った後の不安がぐっと減ります。
第5章:個人向け国債の買い方と中途換金の注意点
写真:Perry Merrity II|Unsplash
タイプの選び方がわかったら、いよいよ実際に買う段階です。とはいえ、「手続きがむずかしそう」「途中でお金が必要になったらどうしよう」と、ふみ出せずにいる方もいるかもしれません。この章では、個人向け国債の買い方の流れ、中途換金のルールと差し引かれる金額、そして税金のことを、順番にやさしく説明します。ここを読み終えるころには、買う前の不安がだいぶ小さくなっているはずです。
買う場所と申し込みの流れ
個人向け国債は、銀行、証券会社、ゆうちょ銀行などで買うことができます。窓口でも、インターネットでも申し込めます。ただし、国債を買うには、その金融機関に国債を預けるための口座、つまり振替決済口座の開設が必要です。すでに取り引きのある金融機関なら、手続きが早く終わることもあります。
注意したいのは、募集期間が毎月決まっていることです。たとえば2026年10月の募集は、10月30日までです。金融機関によっては、インターネットの受け付けが、最終日よりも前に終わる場合があります。今日が10月24日だとすると、10月分に申し込みたい方は、早めに金融機関のページで期限を確認しておくと安心です。10月分に間に合わなくても、個人向け国債は毎月募集されるので、11月分を待つこともできます。
また、利子は半年に1回、あなたの口座に入ってきます。たとえば、10月募集の固定5年を11月16日に買った場合は、毎年の決まった月に、利子が振り込まれる予定になります。受け取る日がカレンダーであらかじめわかるので、家計の計画にも組み込みやすくなります。
| 手順 | やること | ひとこと |
|---|---|---|
| 口座を用意する | 国債を預ける振替決済口座を開く | すでに口座があれば手間が少ない |
| タイプと金額を決める | 1万円単位で金額をえらぶ | 使う時期から逆算して決める |
| 募集期間に申し込む | 期限までに手続きをする | ネットの期限は早めのことがある |
| 発行日に代金を払う | 10月分の発行日は11月16日 | 払い込みの準備をしておく |
中途換金のルールと差し引かれる金額
もしも途中でお金が必要になったときは、中途換金という方法で、満期の前に国債を現金に変えることができます。ただし、これにはルールがあります。まず、発行から1年がたたないと、原則として換金できません。そして、1年をすぎた後に換金するときには、中途換金調整額というお金が差し引かれます。この金額は、直前2回分の利子(税引前)にあたる金額に、0.79685をかけて求めます。
では、100万円の固定5年(年2.39%)で考えてみましょう。半年ごとの利子は、税引前で1万1950円です。その2回分は2万3900円で、これに0.79685をかけると約1万9000円になります。つまり、途中で換金すると、おおむね税金を引いた後の1年分の利子に近い金額が差し引かれると、イメージしておくとわかりやすいでしょう。元本の100円という値段は変わらないので、売るときに値段が下がって元本を大きく割りこむ、といった心配は少ないのがこの商品の安心なところです。換金した代金は、おおむね3営業日後に支払われます。
覚えておきたいポイント
中途換金はあくまで「いざというとき」の出口です。使う予定が近いお金は、満期まで持ってそのまま受け取れるタイプを選んでおくと、差し引かれる金額を気にしなくてすみます。
もし、途中で換金することになりそうなら、換金を考えるタイミングも大切です。利子を受け取った直後か、受け取る直前かで、手元に残る金額は少し変わります。実際に換金するときは、取り扱いの金融機関に、いくら受け取れるのかを、先に試算してもらうと安心です。
税金と買う前の最終チェック
個人向け国債の利子には、税金がかかります。税率は20.315%で、利子を受け取るときに、あらかじめ差し引かれます。たとえば、税引前の利子が1万円なら、手元に入るのは約7968円です。ただし、障害者などの方を対象とした、いわゆるマル優、特別マル優という非課税の制度を使える場合は、非課税にできます。くわしい条件は、取り扱いの金融機関で確認してください。
もうひとつ知っておきたいのは、個人向け国債には、申し込んだ後に契約をなかったことにできるクーリング・オフの制度が、適用されないという点です。だからこそ、申し込む前に、次の4つを落ち着いて確認しておきましょう。
- 使う予定のお金と、使わないお金を分けているか
- 選んだタイプの金利の決まり方を説明できるか
- 申し込みの期限と、発行日の払い込みの準備ができているか
- 中途換金で差し引かれる金額のイメージを持っているか
この4つを確認できたなら、あなたはもう個人向け国債の入口に立っています。むずかしそうに見えた言葉も、ひとつずつほどいていけば、身近なお金の話にすぎません。最後のまとめでは、ここまでの内容をふり返りながら、最初の一歩をふみ出すための、小さなヒントをお届けします。
まとめ:個人向け国債で50代60代の毎日にゆとりを足そう
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。もう一度、大切なポイントをふり返ります。個人向け国債は、国が元本と利子の支払いに責任を持つ、1万円から買える債券です。変動10年、固定5年、固定3年の3つのタイプがあり、2026年10月募集分の金利は、変動10年の初回が年2.05%、固定5年が年2.39%、固定3年が年2.07%でした。選ぶときは、金利の高さよりも、お金を使う時期から逆算することが何より大切です。
そして、いちばん伝えたいのは、「完ぺきな答えを待たなくてもいい」ということです。金利がこの先どうなるかは、だれにもわかりません。それでも、使う予定のないお金の一部を、減りにくい場所に置いてみる。それだけで、気持ちの余裕は大きく変わります。まずは10万円、あるいは1万円からでも、立派な第一歩です。
もちろん、不安が残るのは当たり前です。「途中でお金が必要になったらどうしよう」「選びまちがえたらどうしよう」と感じるのは、あなたがお金を大切にしている証拠です。生活のための予備資金は預金に残し、買う時期やタイプを分けておけば、その不安はぐっと小さくなります。一度に決めなくても、毎月の募集のたびに、少しずつ積み重ねていけば大丈夫です。
さあ、あなたがこれから先の10年で、いちばん大事にしたいことは何でしょうか。旅行、家族との時間、そして安心して眠れる夜。その願いを支える土台として、個人向け国債はきっとよい仲間になってくれます。今日、ご自分の口座や、金融機関のページをひらいてみることから、はじめてみませんか。
※この記事は情報提供を目的としたもので、特定の商品の購入をすすめるものではありません。金利や募集条件は毎月かわるため、お申し込みの前に、財務省や取り扱いの金融機関で最新の内容をご確認ください。
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