「NTTって配当は良さそうだけど、なんでこんなに株価が下がり続けているんだろう」と感じている方は多いと思います。私も最初はそうでした。2024年1月に高値をつけた後、2026年7月時点では146円台まで下落。高値から約35%の下落です。
ただ、不安を煽りたいわけじゃなくて、正直に言うと私はこの下落を見ながら、「これは危機なのか、それとも仕込み場なのか」を判断しかねていました。決算を見れば業績は悪くない。配当は毎年増えている。でも株価は下がり続ける。この矛盾を解くことが、NTT株を理解する核心だと思っています。
本記事では、2026年5月発表の最新決算データと、NTT公式IR資料をもとにNTT株の現在地を整理します。配当利回り3.70%という水準が本当に魅力的かどうか、冷静に判断するための材料を提供します。
この記事でわかること
- 2026年7月時点の株価146円台と配当利回り3.70%の実態
- 「業績は良いのに株価が下がる」矛盾の正体と3つの構造的要因
- 16期連続増配を支える財務の強さと見えにくいリスク
- IOWN 2.0と金融事業再編、NTTが仕掛ける次の一手
- 配当利回り4%ラインから逆算した「買い場」の考え方
目次
第1章|NTT株の現在地:2026年7月の株価・配当・決算
まず現実の数字を並べるところから始めます。感情を混ぜる前に、事実を見る。それが投資判断の出発点です。
株価146円台の意味を読む
2026年7月3日時点のNTT株(東証プライム:9432)の終値は146.1円です(日本経済新聞社株価データより、私が2026年7月4日に確認)。2024年1月につけた高値が224円前後でしたから、そこからの下落率は約35%。コロナショック時の最大下落率26.7%を超え、2017年〜2018年の調整局面31%も上回っています。
ただ、これを「暴落」と呼ぶのは正確ではありません。約2年かけてじわじわと値を下げてきた「緩やかな下落トレンド」です。パニック売りではなく、機関投資家がポジションを少しずつ外している動き。これが意味することについては、第2章で詳しく掘り下げます。
一つ気になるデータがあります。2026年7月1日の出来高は311,003,900株と、前日比62%増という異常な急増を記録しました(Yahoo!ファイナンスより確認)。しかし株価は上がらず、むしろ下落しています。これは機関投資家の手じまい売りが特定の日に集中したサインの可能性があります。需給が弱い状態が続いているわけで、短期的な底打ちはまだ見えていないと私は見ています。
16期連続増配と配当利回り3.70%の現実
NTT公式IR資料(最終更新:2026年5月14日)によると、2026年度(2027年3月期)の年間配当予定は1株あたり5.4円です。これは2025年度の5.3円から0.1円の増配で、16期連続増配となります。2003年度の配当0.5円と比較すると、23年間で10倍以上に拡大しています。
株価146.1円で計算すると、配当利回りは次のようになります。
$$\text{配当利回り} = \frac{5.4 \text{ 円}}{146.1 \text{ 円}} \times 100 \approx 3.70\%$$Yahoo!ファイナンスが表示している3.70%という数字と一致します。みんかぶでは3.68%と若干の差がありますが、計算基準の日付による誤差の範囲です。
3.70%という数字をどう見るか。日本国債10年物の利回りが1%前後、大手銀行の定期預金が0.3〜0.5%程度の今、3.70%は魅力的に映ります。ただ、正直に言うと、私がこの数字をそのまま「高利回り」と喜べないのには理由があります。それは次の節で触れる業績予想の内容です。
2026年3月期決算と2027年3月期の業績予想
2026年5月8日に発表されたNTT(9432)の2026年3月期(2025年度)本決算のポイントを整理します。みんかぶの決算情報ページ(2026年5月時点)によると、連結最終利益は前期比3.7%増の1兆370億円と、初めて1兆円の大台を突破しました。営業収益は約15兆600億円(前年比+4.5%)と着実な成長を示しています。
問題は2027年3月期の業績予想です。同社が発表した数字によると、親会社株主に帰属する当期純利益は9,800億円と、前期比で約5.5%の減益を見込んでいます。1兆円を初めて超えた翌年に1割近く下がる見通し。これが市場の失望売りを呼んでいます。
⚠️ 注意点:2027年3月期の減益予想は、大規模な設備投資の前倒し計上や、NTTドコモ・フィナンシャルグループ設立に伴う一時費用が含まれているためです。構造的な収益悪化とは区別して考える必要があります。
ただ一方で、配当に関しては16期連続増配の方針を維持しています。減益局面でも増配するという強いメッセージ。これが財務的に持続可能かどうかは、第5章で改めて検討します。
第2章|なぜNTT株は下がり続けるのか
株価が下がるには理由があります。「なんとなく」で35%も下がる銘柄はありません。NTTの場合、理由は複数あって、しかもそれぞれが絡み合っています。
国内通信の構造的縮小という避けられない現実
NTTの主力事業である国内通信は、成熟を通り越して縮小局面に入っています。格安スマホの普及と政府主導の料金値下げ政策により、ドコモの顧客1人当たり月間収益(ARPU)は下落傾向が続いています。「ahamo」は加入者を増やしましたが、単価は従来プランの半分以下。顧客を守るために収益を犠牲にした形です。
さらに根深い問題は、固定電話事業の衰退です。かつてNTT東日本・NTT西日本の「ドル箱」だった固定電話の契約数は毎年数百万件規模で減少しています。スマートフォンが一人一台になった今、この流れは止まりません。これを補う形でフレッツ光などの固定ブロードバンドを拡大していますが、その成長スピードは固定電話の縮小速度に追いつけていません。
人口減少という外部環境も無視できません。総務省のデータによると、日本の生産年齢人口は2025年時点ですでに2000年比で10%以上減少しています。通信ユーザーの母数が減る市場で、無限に成長することはできません。これはNTTだけの問題ではありませんが、規模が大きい分だけ影響の絶対額も大きい。
有利子負債の急増と金利上昇の二重圧力
私がNTT株を分析していて最も驚いた数字が、有利子負債の変化です。2023年時点では有利子負債倍率(純有利子負債÷EBITDA)が32%程度だったのに対し、直近では169%まで上昇しています。2年ほどで5倍超の水準まで膨らんだ計算です。
背景にあるのは、2023年から2027年にかけての大規模投資計画です。成長分野に8兆円、既存通信インフラに4兆円、合計12兆円という規模感は、NTTの年間営業利益(約1兆7,000億円程度)の7年分に相当します。それを借入で賄っているわけですから、負債が膨らむのは当然の帰結です。
問題はタイミングです。日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、2025年に入ってからも段階的に利上げを進めています。仮にNTTの有利子負債残高を10兆円規模と仮定すると、金利が1%上昇するだけで年間約1,000億円の利息負担増になります。
$$\text{金利1\%上昇の影響} = 10 \text{ 兆円} \times 1\% = 1,000 \text{ 億円/年}$$これは2027年3月期の予想純利益9,800億円の約10%に相当します。金利がさらに上がれば、配当余力を直撃しかねない水準です。ただし、これはあくまで粗い試算です。NTTは固定金利の長期債も多く発行しているため、市場金利の上昇が即座に全額に響くわけではありません。実際の影響は段階的に現れます。
2027年3月期の減益予想が与える心理的ダメージ
株式市場は未来を先取りします。「来期は5.5%の減益」という予想が出た瞬間に、それを織り込んだ株価に修正されます。2026年5月8日の決算発表後に株価が下落したのも、この反応です。
ただ正直に言うと、この減益予想を額面通りに受け取るべきか、私は迷っています。NTTドコモ・フィナンシャルグループの設立(2026年7月1日に正式発足)に伴う一時費用、IOWNへの先行投資の費用計上、これらは「今期だけ特殊要因で利益が凹む」という性質のものです。2028年度以降に向けて打った種まきのコスト、と見ることもできます。
しかし、市場は今の数字しか見ません。「今期減益」というフレーズが出れば、機関投資家は売ります。それが35%の下落の一因です。これを「過剰反応」と見るか「妥当な評価」と見るかで、投資判断は180度変わります。
第3章|NTTの将来性を本気で考える
下落の理由は整理しました。では、なぜNTTを長期保有する価値があると考える人がいるのか。その根拠を見ていきます。
IOWN 2.0:「検証」から「実装」へ移行した光通信技術
IOWNとは、NTTが推進する次世代通信インフラ構想(Innovative Optical and Wireless Network)です。現在の電気信号ベースの通信から光信号中心のネットワークへ転換し、通信速度100倍・消費電力50%削減を目指す技術です。
注目すべきは、2026年5月に開催された「IOWN Global Forum」の年次総会で、NTTが「検証から実装ステージに入った」と宣言した点です(NTT公式マガジン、2026年5月22日掲載)。これまでは「将来の技術」として扱われていたIOWNが、いよいよ現実のインフラとして動き始めています。
さらに2026年、NTTは「IOWN 2.0」を発表しました。Broadcomなどと協業し、光電融合スイッチの商用サンプル提供を2026年Q4(2026年10〜12月)に開始する計画です(INTERNET Watch、2026年2月報道)。データセンター内の消費電力を大幅に削減できるこの技術は、AI需要の急増で電力コストが経営課題となっているクラウド事業者にとって、喉から手が出るほど欲しいものです。
楽観シナリオとして:IOWN技術がグローバルスタンダードとして普及すれば、NTTは通信インフラだけでなく、データセンター向けの省電力技術プロバイダーとして世界市場に参入できます。悲観シナリオとして:NVIDIAやIntelなど競合も似た方向性の技術開発を進めており、IOWN固有の優位性が薄れる可能性もあります。この技術競争の行方が、NTTの10年後を決める最大の変数です。
NTTドコモ・フィナンシャルグループ誕生の意味
2026年7月1日、NTTドコモの金融・決済事業を統括する100%子会社「株式会社NTTドコモ・フィナンシャルグループ」が正式に発足しました(ドコモ公式プレスリリース、2026年3月31日発表)。d払い、dカード、保険など、ドコモが展開してきた金融サービスを新会社に集約し、独立した経営体制で拡大を目指す戦略です。
これが面白いと感じる理由は、通信会社が金融業に本格参入するという構造転換です。PayPayを持つソフトバンク、auマネ活プランを展開するKDDIと同様に、NTTも「通信×金融」の組み合わせで顧客の生活インフラに深く入り込もうとしています。
ドコモの9,000万超の契約者基盤は、金融サービスの顧客獲得コストを極限まで下げられる資産です。新しい金融会社の立ち上げには大きなコストがかかりますが、既存ユーザーへのクロスセルという形で浸透できれば、通信ARPUの減少を金融収益が補う構図が生まれます。通信事業の代わりに金融が成長エンジンになれるか。これが2027〜2030年のNTTの注目ポイントです。
データセンター事業とAI需要の追い風
NTTデータは、グローバルなデータセンター事業において世界第3位のシェアを持っています。生成AIブームが続く中、データセンターへの需要は中長期的に拡大が見込まれています。NTTデータグループの2026年3月期第3四半期決算資料(2026年2月発表)によると、データセンター事業の受注高は2025年4月〜12月の5,287億円から、2026年同期には5,965億円に増加しています。
また、2026年4月にはNTTが栃木インター産業団地でのデータセンター整備を発表しました(NTT公式プレスリリース、2026年4月27日)。電力と用地を確保した大規模施設の整備です。これはIOWNの光電融合技術との組み合わせで、省電力・高性能なデータセンターとして差別化できる可能性を秘めています。
ただし、正直なところ、データセンター事業はNTTの「稼ぎ頭」になるには時間がかかります。設備投資のフェーズが続く間は、利益よりコストが先行します。「将来性はある、ただし回収は2028年以降」という見立てが現実的です。
第4章|配当投資家から見たNTT株の評価
将来性の話が続きましたが、配当投資家にとって大事なのは「今、保有する価値があるか」です。ここは数字で考えます。
配当利回り4%ラインの逆算と適正株価の考え方
NTTは「継続的な増配」を基本方針として掲げており、2026年度配当は5.4円を予定しています。配当利回り4%を「購入の目安」とする投資家が多い中、その水準から逆算すると
$$\text{配当利回り4\%達成株価} = \frac{5.4 \text{ 円}}{0.04} = 135 \text{ 円}$$現在の株価146円台はまだ135円には届いていません。4%ラインに到達するまで、あと約7〜8%の下落余地があります。もちろん、「4%まで待てる」かどうかは個人の投資方針次第です。3.70%でも十分と判断する人もいます。私自身は、この7〜8%の差が大きいか小さいかを決めかねています。
一方、仮に来年(2027年度)も0.1円の増配が続き5.5円になるとすれば、配当利回り4%の達成株価は137.5円になります。増配ペースが続く限り、時間が経つほど「配当利回り4%ライン」は少しずつ上方にズレていきます。下落を待ち続けることにもリスクがあるということです。
自己株式取得2,000億円が株価を下支えする可能性
NTT公式IR資料(2026年5月14日更新)によると、2026年5月8日に2,000億円を上限とした自己株式取得を決議し、2026年5月11日〜2027年3月31日の期間で取得を進めています。これは市場での株式購入を通じて需給を引き締め、1株あたりの価値を高める株主還元策です。
2,000億円規模の買いが市場に入り続けるとすれば、単純計算で1株146円なら約13.7億株の購入余力があります。NTTの発行済み株式数は約470億株程度ですから、約3%程度の株式を市場から吸収する計算です。規模として決して小さくはありません。
なお、2026年3月までの累計自己株式取得総額は約5.9兆円に上るとNTT公式サイトは記載しています。これほどの規模で自社株買いを続けてきた事実は、株主還元への姿勢の本気度を示しています。
楽観シナリオと悲観シナリオで見る2027年の株価
投資判断に「正解」はありませんが、シナリオを複数持っておくことは有効です。私なりの整理を共有します。
楽観シナリオとしては、IOWN 2.0の商用化が順調に進み、データセンター受注が2027年度に大幅に拡大。金融事業も黒字化のめどが立ち、2028年3月期の業績回復が見えてくる。増配も5.6円に引き上げられ、株価が170〜180円台を回復する展開です。配当利回り3%台前半での評価に収れんする形です。
悲観シナリオとしては、日銀がさらに利上げを進め、有利子負債の利息負担が年間2,000億円超に膨らむ。国内通信のARPU低下が想定以上に進み、2027年度も減益が続く。増配どころか配当維持で精いっぱいとなり、株価が130円台前半まで下落する展開です。
どちらが実現するかは誰にも断言できません。少なくとも言えるのは、「16期連続増配という実績」と「次期減益予想」という相反する事実を、両方正直に受け止めることが出発点だということです。
第5章|NTT株投資のリスクを直視する
ここまでの分析を踏まえて、投資家が見落としがちなリスクを3つ整理します。
日銀利上げが有利子負債に与える具体的なインパクト
第2章でも触れましたが、金利リスクはより精密に考える必要があります。NTTは長期固定金利の社債を主力にしているため、利上げが直撃するのは短期借入金の部分と、満期を迎えた社債の借り換え時です。利息負担の増加は「今すぐ」ではなく「数年にわたって段階的に」現れます。これは短期的にはリスクが低く見えるという意味でもあります。
ただし、日銀が2026〜2027年にかけてさらに利上げを続けた場合、2028年以降の借り換え費用が積み上がります。設備投資の回収が本格化する前に金利負担が増え、配当余力を圧迫するシナリオは排除できません。
政府保有株の売出リスクという見落とされがちな材料
NTTの株式は財務省が約3分の1(約34%)を保有しています。政府保有株は売却される可能性があり、実際に過去にも大規模な売出が行われてきました。政府がまとまった量の株式を市場で売却すれば、需給が一時的に悪化し株価を押し下げます。
これは他の記事ではほとんど触れられていない視点ですが、財政再建の文脈で政府が保有株を売却してキャッシュを得るというシナリオは十分にありえます。売出規模や時期次第では、数円〜十数円規模の下押し要因になりえます。配当利回りで銘柄を選ぶ際、こうした需給リスクも計算に入れておくべきです。
減益局面でも増配を続けることの持続可能性
2027年3月期は前期比5.5%の減益が見込まれているにもかかわらず、NTTは16期連続増配の方針を示しています。配当性向を計算すると、
$$\text{配当性向} = \frac{5.4 \text{ 円} \times \text{発行済み株式数}}{9,800 \text{ 億円}} \times 100$$みんかぶが表示する配当性向は42.0%(2026年3月期実績ベース)ですが、2027年3月期の減益後に同水準の増配を続ければ、配当性向は45%前後まで上昇する見込みです。50%に近づくと「無理して配当を出している」と市場が判断し始めるため、注意が必要です。
ただし、NTTは自己株式取得も同時に進めています。株数が減れば1株あたりの利益(EPS)は改善するため、配当性向が見かけ上は改善する効果があります。この構造を理解した上で配当性向を評価することが重要です。結論を出すのは難しい。でも「増配は永続しない」という可能性は、常に頭の片隅に置いておくべきだと私は思っています。
まとめ|NTT株は今、誰が買うべきか
長くなりましたが、私が言えることはシンプルです。NTT株は「全員に向いている銘柄ではない」。でも「特定の投資家には、今が一つの検討タイミングになりえる」銘柄です。
この記事で確認した主な事実を振り返ります。株価は2026年7月時点で146円台、配当利回り3.70%(2026年度予想配当5.4円、NTT公式IR資料より)、16期連続増配継続中。2026年3月期の最終利益は1兆370億円と過去最高を記録したが、2027年3月期は約5.5%の減益見込み。自己株式取得2,000億円が需給を下支えする一方、有利子負債の急増と日銀利上げの組み合わせが財務の重荷になりつつある。IOWNは「実装ステージ」に入り、NTTドコモ・フィナンシャルグループも2026年7月に正式発足した。
買うべきかどうか。私は結論を出しません。ただ、「16期連続増配」という実績が崩れるまでは、配当目的で保有し続ける選択肢は合理性があると思っています。一方で、配当利回り4%ライン(135円前後)に到達するまで待つという戦略も、数字の上では一定の根拠があります。
大事なのは、「NTTは安全だから大丈夫」という思い込みで投資することではありません。国策企業ではあっても、財務リスクは現実に存在します。自分の投資期間・リスク許容度に照らし合わせて判断してください。
免責事項:本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。記事内の数値・データは各種公開情報をもとに作成していますが、内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
最終更新日:2026年7月5日

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