「S&P500に積み立てるだけでいいとわかってはいる。でも、個別株で大きく増やしたい気持ちも捨てられない」――そんなジレンマを抱えたまま、投資方針が定まらない方は少なくないのではないでしょうか。新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の口座開設数が2024年だけで約1,000万口座を超えた(金融庁発表)ことからも、投資への関心が急速に高まっていることがわかります。しかし、関心と実力の間にある「どう組み合わせればいいか」という壁を乗り越えられず、迷い続けている方が多いのも現実です。そこで参考になるのが、ウォール街の大手金融機関で26年以上のアナリスト経験を持つ米国株アナリスト・まりーさんの実践的な投資論です。 「98%の日本人はS&P500の積み立てだけで十分」と言い切るプロが、なぜ個別株も保有するのか。その設計思想を徹底的に解説します。
最終更新日:2026年8月2日
この記事でわかること
- コア・サテライト戦略の6対4という比率設計の根拠と実践的な意味
- 「入金力こそ最大の武器」というプロが繰り返し説く、個別株より先に整えるべき土台
- まりーさんが独自に命名した「HODLER5」フレームワークと銘柄選定の4つの軸
- 米国株を選ぶ理由として機能する「人口成長×ベンチャーキャピタルの土壌」という視点
- インデックス積み立てと個別株投資を共存させるためのメンタル管理術
目次
- 第1章|まりーさんが実践するコア・サテライト戦略の全体像
- 第2章|HODLER5フレームワーク|長期保有銘柄の選び方
- 第3章|米国株を選ぶ根拠|人口成長とベンチャーキャピタルの土壌
- 第4章|S&P500の長期リターンデータと積み立ての現実
- 第5章|個人投資家がコア・サテライト戦略を実践するための注意点
- まとめ|S&P500を軸に据え、個別株で成長を取りに行く投資設計
第1章|まりーさんが実践するコア・サテライト戦略の全体像
ウォール街で26年超のキャリアを持つプロが採用する「守りの6割・攻めの4割」という比率設計の意図と、その前提となる資金環境づくりを整理します。
コア6割をS&P500とQQQで固める理由
コア・サテライト戦略(コア:中核資産、サテライト:衛星資産として個別株などリスク性の高い資産を置く運用手法)は、機関投資家が長年実践してきた手法ですが、まりーさんの運用ではその比率が明確に定められています。楽天証券のメディア「トウシル」(2026年8月2日公開)のインタビューによると、コア部分はS&P500種指数(米国を代表する500銘柄の株価指数)連動ファンドとQQQ(ナスダック100指数連動のETF:上場投資信託)で構成され、ポートフォリオ全体の約6割を占めています。この2つをコアに据える理由は、どちらも広範な分散と長期実績を兼ね備えているからです。S&P500は米国上場企業の時価総額上位500社をカバーし、QQQはテクノロジー比率が高いナスダック100指数に連動します。両者を組み合わせることで、景気安定期と成長加速期の両方に対応できる設計になっていると言えるでしょう。
私がこの比率設計を知ったとき、最初に感じたのは「プロでもインデックスをコアに置くのか」という驚きでした。ウォール街のアナリストならば、すべて個別株で運用していると思い込んでいたからです。しかし考えてみれば、分散と安定性を担保しながらアルファ(市場平均を超える超過リターン)を追求する、というのは機関投資家の基本的な発想であり、それを個人レベルで実践しているのがまりーさんのアプローチだと考えられます。
サテライト4割に個別株を置く設計思想
サテライト部分の4割には、エヌビディア(NVDA)を筆頭に、ロビンフッド・マーケッツ(HOOD)、テスラ(TSLA)、パランティア・テクノロジーズ(PLTR)が並びます。トウシル(2026年8月2日)インタビューでまりーさんは「エヌビディアが最も大きなウエートを占め、その次にロビンフッド・テスラ・パランティアの3銘柄が日によってランクが入れ替わるくらい同規模で並んでいる」と説明しています。重要なのは、サテライト4割という上限を設けることで、コアの安定性が崩れないように管理している点です。個別株はどれほど確信度が高くても、想定外の事態が起きれば大きく下落することがあります。その影響をポートフォリオ全体の4割以内に抑えておけば、仮に個別株が半値になっても全体の損失は最大20%にとどまります。楽観シナリオではサテライトが大きく上昇して全体を押し上げ、悲観シナリオでもコアの6割が下支えする、という設計です。
この「比率管理」こそが、コア・サテライト戦略の核心です。銘柄の質だけでなく、比率のコントロールが長期運用の継続性を支えると言えるでしょう。
「入金力」を投資の最優先課題とする考え方
まりーさんがインタビューの中で特に強調したのが「入金力」の重要性です。「投資の一番の成功の鍵は銘柄選びよりまず入金力」であり、「余裕がない状態の株投資はそれだけで非常に不利」と述べています。まりーさん自身は現在もヘッジファンドで働く兼業投資家であり、生活費を投資外の収入で十分賄えるため、余剰資金をそのまま証券口座に入れられる環境を維持しています。何かを売却しなくても新しい銘柄を買える「余裕のある状態」を維持することが、冷静な判断につながると言えます。
「投資で収入を得ようとするより、自分のキャリアを伸ばして収入を上げることに専念した方が資産はより早く育つ」というコメントは、特に投資歴の浅い方に刺さる言葉ではないでしょうか。私もかつて、月の収入が多くない状態で個別株を積極的に買い始め、生活費が足りなくなりそうになって焦った経験があります。資金に余裕がない状態での投資は、判断力を著しく損なうものです。
コア・サテライト戦略の第一歩は、比率を決めることよりも「生活費を投資資金で賄わなくてよい状態」を先につくることです。収入強化が最大の投資戦略と言えます。
次章では、まりーさんが独自に命名した「HODLER5」というフレームワークを通じて、個別株の選び方の基準を詳しく見ていきます。
第2章|HODLER5フレームワーク|長期保有銘柄の選び方
まりーさんが独自に考案した銘柄選定の枠組み「HODLER5(ホドラーファイブ)」とは何か。創業者経営へのこだわりと、最近のアップデートの意図を読み解きます。
HODLER5(ホドラーファイブ)とは何か
HODLER5(ホドラーファイブ)とは、まりーさんが「長期で保有し続けたい銘柄」として独自に選定・命名したリストです。「HODL」は暗号資産コミュニティで生まれた造語で「保有し続ける」という意思表示を意味し、そこに「ER(保有し続ける人)」の概念を組み合わせた名称です。トウシル(2026年8月2日)のインタビューによると、約2年前の命名当初はエヌビディア、テスラ、メタ・プラットフォームズ(META)、パランティア・テクノロジーズ、ロビンフッド・マーケッツの5銘柄でした。その後、ビットコインを加えて「HODLER6」にアップデートされています。このリストの特徴は「短期の値動きを追うのではなく、5〜10年単位で圧倒的に成長できる明確なストーリーがある会社を選ぶ」という基準にあります。成長の「ストーリー」が明確かどうか、というのは非常に主観的な基準に見えますが、まりーさんの場合はそれを創業者経営・大株主経営という客観的なフィルターと組み合わせることで精度を上げています。
私がHODLER5という概念を知って面白いと思ったのは、銘柄リストそのものよりも「定期的に見直す」という姿勢が組み込まれている点です。固定したリストを持ちながら、環境変化に応じて更新できる柔軟性がある点が、硬直した投資方針とは異なると感じました。
「創業者経営」にこだわる理由
まりーさんが銘柄選定で最も重視する軸の一つが「創業者が自らトップとして率いている会社」であるという基準です。雇われ経営者(CEO)と創業者経営者には、意思決定のスピードや長期視点という点で本質的な差があると考えているからです。雇われCEOの任期は一般的に4〜6年程度であり、短期の業績改善やコスト削減に意識が向きやすい傾向があります。一方、創業者は自社株の大株主であることが多く(例:パランティアのアレックス・カープCEOは大株主として経営を主導)、会社の長期的な成功と自らの資産が直結しているため、5〜10年単位の意思決定ができると考えられます。テスラについては、イーロン・マスクは厳密には創業者ではありませんが、今のテスラをつくり上げた実質的な経営者であり大株主であるため、同じ基準を満たすとまりーさんは判断しています。
学術的な観点からも、創業者が経営する企業はパフォーマンスが高い傾向があることが示されています。米国の著名な投資家でありベストセラー作家のピーター・リンチは、かつて「経営者が自社株を大量に保有している企業に投資せよ」と述べており、これはまりーさんの基準とも一致しています(出典:ピーター・リンチ著『One Up On Wall Street』)。
メタ除外・アマゾン追加を検討する論拠
トウシルのインタビュー(2026年8月2日)によると、まりーさんは現在HODLER6の構成を再検討しており、メタ(META)をリストから外してアマゾン(AMZN)を追加することを考えています。メタへの懸念は2点です。一つは、オープンソースAIモデル「ラマ(Llama)」の性能が中国勢のモデルに追い上げられている点。もう一つは、社員の業務データをAI学習に活用する取り組みが社内外で反発を招いたことに象徴されるAI人材マネジメントへの不安です。「オープンソース領域の絶対的なリーダーだったはずなのに、優秀なトップエンジニアを引きつけられていない証拠だ」という指摘は、長期成長ストーリーの崩れを示すシグナルとして読めます。
一方でアマゾンを検討する理由は、AIを複数のレイヤー(層)で取り込める構造にあります。自社AIチップ「トレニアム(Trainium)」の開発、クラウド基盤AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)によるAIインフラ提供、AI広告の最適化、物流効率化と、ビジネスの複数箇所でAIの恩恵を受けられる点が魅力と見ているようです。ただ、まりーさん自身は「今はまだ考慮中で株は一切売っていない」と述べており、この姿勢は感情的な判断を排除した冷静なポートフォリオ管理の一例と言えるでしょう。
HODLER5・HODLER6はまりーさん個人の投資方針であり、特定銘柄への投資を推奨するものではありません。各銘柄の詳細は各社の最新IR資料をご確認ください。
次章では、個別株選定の基準を超えて、「なぜ日本株ではなく米国株なのか」というより根本的な問いに答えるまりーさんのマクロ視点を見ていきます。
第3章|米国株を選ぶ根拠|人口成長とベンチャーキャピタルの土壌
「なぜ日本株ではなく米国株か」という問いに対して、まりーさんはシンプルな経済成長の方程式で答えます。そのロジックと、米国が持つ固有の構造的優位性を整理します。
経済成長は「人口成長率+生産効率の伸び率」で決まる
まりーさんがトウシルのインタビュー(2026年8月2日)で示した経済成長の方程式は、非常にシンプルです。「究極的には、経済成長は人口の成長率+生産効率の伸び率というシンプルな方程式で決まる」というものです。人口が1%伸びて技術革新で効率が1%上がれば、経済は2%成長する。この前提に立つと、急速な人口減少が進む日本は、投資マーケットとして構造的に不利な土俵に立たされていることになります。総務省の人口推計(2026年1月1日時点)によると、日本の総人口は前年比約60万人減少しており、減少ペースは年々加速しています。一方で米国は、移民流入も含めた人口増加が続いており、米国国勢調査局(U.S. Census Bureau)の推計では2025年も人口が継続して増加しています。
正直に言うと、私も以前は「日本株の方が身近だから理解しやすい」という理由で日本株比率を高めていた時期がありました。しかし人口というマクロの大前提を意識するようになってから、日米のマーケット環境の差が腹に落ちるようになりました。それ以来、S&P500インデックスファンドへの積み立てをコアに据えるという判断ができるようになったのです。
ベンチャーキャピタルの土壌が生む圧倒的な成長力
まりーさんが米国投資のもう一つの強みとして挙げるのが、ベンチャーキャピタル(VC:未上場の成長企業に投資する機関)の土壌です。世界中から優秀なエンジニアや起業家が集まり、そこに巨額の資金が投じられるエコシステム(生態系)が、既存企業を次々と塗り替える破壊的なイノベーションを生み出す原動力になっています。インタビューで紹介されたスペースX(SpaceX)がAIスタートアップの「カーソル(Cursor)」を買収した事例が象徴的です。MITのクラスメート4人が2022年に創業した企業が、わずか4年で数千億円の評価額をつけてスペースXに買収され、20代の創業者たちがそれぞれ数千億円相当の株式を受け取った。このような「アメリカンドリーム」の再現可能性が、米国市場への継続的な人材・資本の集中を促し続けています。
全米ベンチャーキャピタル協会(NVCA:National Venture Capital Association)のデータによると、2024年の米国VC投資額は約1,850億ドル(約28兆円)に上り、これは世界全体の約半分を占めています。このような規模のリスクマネーが循環する市場では、次のエヌビディアやパランティアが生まれ続ける可能性があると言えるでしょう。
日本株ではなく米国株に集中する合理的な根拠
以上の議論を整理すると、まりーさんが米国株に集中する理由は感情的な「米国好き」ではなく、人口成長という構造的な経済エンジンと、ベンチャーキャピタルが生み出す圧倒的なイノベーション密度という2つの客観的根拠に基づいていることがわかります。「いつかは日本も変わる」という期待に賭けるよりも、現在進行形で成長している市場にリソースを集中させる、という投資家として合理的な判断と見ることができます。もちろん、為替リスク(円高になると円換算の評価額が目減りするリスク)は存在しますし、米国固有の政治リスクや地政学リスクも考慮が必要です。楽観シナリオでは米国の人口増加と技術革新が継続してS&P500が長期上昇トレンドを維持し、悲観シナリオでは移民規制強化や規制圧力の高まりが成長を抑制する可能性もあります。しかしそれを踏まえても、インデックス投資という分散手法で米国市場全体に乗る戦略は、リスク対比で合理性があると考えられます。
| 比較軸 | 米国 | 日本 |
|---|---|---|
| 人口動態 | 継続的な増加(移民含む) | 急速な減少(年約60万人減) |
| VC投資規模(2024年) | 約1,850億ドル(世界の約50%) | 約2兆円前後(世界シェア数%) |
| S&P500・TOPIX長期リターン | 年率約7〜10%(過去66年平均) | 「失われた30年」など低迷期あり |
| 創業者主導型企業の輩出 | マスク・ベゾス・バフェットら多数 | 相対的に少ない |
次章では、S&P500のリターンデータを具体的な数字で確認しながら、「なぜ98%の人にはインデックス積み立てで十分なのか」という結論の根拠を検証します。
第4章|S&P500の長期リターンデータと積み立ての現実
「プロでも98%の人にはインデックスで十分」と断言する背景には、S&P500の長期実績データがあります。数字で確認しながら、積み立て投資の威力を現実的に検討します。
S&P500の過去66年間の平均リターンが示すもの
S&P500の長期リターンは、投資の基準値として世界中で参照されるデータです。投資情報サイト「投資アノマリー」がまとめたデータによると、S&P500の1958年〜2023年(66年間)の単純平均年率リターンは約8.81%、幾何平均(複利計算に適した平均)では約7.50%です。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(S&P Global)が算出・管理する同指数の過去10年平均リターンは約10.2%(Business Insider Japan、2024年報道)であり、近年は長期平均を上回るペースで成長しています。もちろん、2008年のリーマンショックでは年率マイナス38.5%という最大の下落も記録しており、短期的には大きなリスクがあることも事実です。しかし66年間という長期で見れば、リターンがプラスになる年が圧倒的に多く、長期保有の有効性を支持するデータになっています。
私が確認した2026年8月2日時点のS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスの公式サイト(https://www.spglobal.com/spdji/jp/)では、最新の指数データと各期間のリターンをリアルタイムで確認できます。投資判断の前にはぜひご自身でも確認いただくことをおすすめします。
複利効果(利息が利息を生む仕組み)の威力を数字で確かめる
複利効果(利息が元本に組み込まれ、次の期間の元本となることで雪だるま式に資産が増える仕組み)は、長期投資の最大の武器です。仮に年率7%のリターンで毎月3万円を30年間積み立てた場合のシミュレーションを見てみましょう。
$$\text{積立元本合計} = 3万円 \times 12ヶ月 \times 30年 = 1{,}080万円$$ $$\text{運用後の総資産(年率7\%複利)} \approx 3{,}567万円$$投じた元本が1,080万円に対して、運用後の資産は約3,567万円になります。差額の約2,487万円が複利効果によって生み出された利益です。これは個別株の銘柄選定スキルがなくても、S&P500インデックスファンドへの定期積み立てだけで達成できる可能性があります。「98%の人にはS&P500の積み立てで十分」という言葉の背景には、このような複利の威力があります。ただし、このシミュレーションは過去データに基づく参考値であり、将来のリターンを保証するものではありません。
暴落局面でも積み立てを続けることが正しい理由
長期積み立ての最大の敵は、暴落局面での「積み立て停止」です。ドルコスト平均法(一定額を定期的に購入し続けることで、価格が高いときは少なく・安いときは多く購入できる手法)の効果は、暴落時の継続購入によって最大化されます。例えば2020年3月のコロナショックでS&P500は約34%下落しましたが、そのまま積み立てを続けた投資家は約5ヶ月後の2020年8月には下落前の水準を回復し、さらにその後も上昇を続けました。ノムラ・アセット・マネジメントの試算によると、1990年代から20〜30年にわたって積み立てたケースでも、複数の暴落を乗り越えながら年率4〜8%のリターンが確認されています(出典:野村アセットマネジメント「長期投資の「長期」とは何年?」)。まりーさんがコアをインデックスで固める理由の一つも、暴落時に「どの銘柄を持ち続けるべきか」という判断コストを減らし、積み立てを継続しやすくするためと解釈できます。
暴落はドルコスト平均法の観点では「安く多く買えるチャンス」です。感情的に積み立てを止めてしまうことが、長期リターンを最も損ないます。
次章では、こうした理想的な戦略を実際に運用する際に個人投資家が陥りがちな落とし穴と、それを避けるための具体的なルール設定について説明します。
第5章|個人投資家がコア・サテライト戦略を実践するための注意点
戦略の設計が正しくても、運用中のメンタル管理と定期的な見直しがなければ成果は出ません。実践段階で意識すべき3つの注意点を具体的に解説します。
サテライト比率を上げすぎる「欲張りリスク」を避ける
コア・サテライト戦略の最大の落とし穴は、好調な個別株のリターンを見て「もっとサテライトを増やしたい」という欲張りに陥ることです。たとえば、サテライト部分のエヌビディアが2倍になったとします。何もしなければポートフォリオ全体に占めるサテライトの比率は自然と高まり、気づけば「サテライト6割・コア4割」という設計の逆転が起きてしまいます。このような状態を放置すると、個別株の大きな下落がポートフォリオ全体に与える影響が当初の想定を大きく超えてしまう可能性があります。定期的なリバランス(資産配分の比率を目標水準に戻す作業)が必要な理由はここにあります。具体的には、半年に一度、あるいは年に一度、コアとサテライトの比率を確認し、当初の6対4の設計から大きく乖離している場合は調整する習慣をつけることが大切です。
まりーさんが常に余剰資金で投資していて「何かを売らずに新銘柄を買える状態」を保っているのも、こうした比率管理をしやすくするためでもあると考えられます。「売るか売らないか」という判断と「買うか買わないか」という判断を分離できる余裕が、冷静な比率管理につながっているのでしょう。
ポートフォリオを見直すべきタイミングの見極め方
まりーさんがメタの除外を検討したプロセスは、「ポートフォリオを見直すべきタイミング」の具体的な事例として参考になります。見直しのトリガーになったのは株価の上下ではなく、「長期成長ストーリーの毀損(損なわれること)」でした。オープンソースAIモデルの競争力低下と、優秀なエンジニアの離反リスクという「5年後・10年後の成長の根拠が弱まっているシグナル」をもとに検討を開始しています。つまり、「今の株価が高すぎる・安すぎる」ではなく「このビジネスは長期にわたって成長し続けられるか」という視点でポートフォリオを評価することが重要です。具体的な見直しチェックポイントとしては、創業者の退任・大量株式売却、コアビジネスの競争優位性の低下、財務健全性の著しい悪化、経営陣のビジョンの変質、といった項目が考えられます。これらは各社のIR資料や決算短信(企業が四半期ごとに発表する業績速報)で確認できます。決算短信はEDINET(金融庁の電子開示システム)からも入手可能です。
個別株投資で感情に振り回されないためのルール設定
個別株投資で最もコストが高いのは、手数料でも税金でもなく「感情的な判断ミス」です。特に、急落時の狼狽(ろうばい)売りと、急騰時の根拠なき追加買いは、長期リターンを大きく損なう行動として知られています。ただ、正直に言うと、この感情コントロールは私自身も完璧にはできていません。過去に保有銘柄が20%下落したとき、根拠なく全額売却してしまい、その後の回復に乗れなかった痛い経験があります。感情的な判断を防ぐための具体的な方法としては、あらかじめ「この銘柄をどんな理由で保有しているか」を書き留めた投資メモをつくり、大きく動いたときはメモを読み返してから判断するというルールが有効です。まりーさんがHODLER5・HODLER6という「リスト」という形式にこだわるのも、感情ではなく「定義されたフレームワーク」に基づいて判断するためのメカニズムとして機能していると見ることができます。金融庁が提供する「資産運用シミュレーション」(金融庁ウェブサイト)なども、投資の基本を整理するうえで参考になります。
個別株の比率・銘柄選定はご自身のリスク許容度・投資目的・保有期間によって大きく異なります。まりーさんのポートフォリオはあくまで一例であり、同様の構成が全員に適しているわけではありません。
次のまとめ章では、5章にわたって整理してきた内容を振り返り、あなたが今日から実行できる最初の一歩をご提案します。
まとめ|S&P500を軸に据え、個別株で成長を取りに行く投資設計
ウォール街で26年超のキャリアを持つ米国株アナリスト・まりーさんの投資論は、「98%の人にはS&P500の積み立てで十分」という言葉が示す通り、インデックス投資の合理性を大前提としながら、残り2%の「個別株で超過リターンを狙いたい方」のためにHODLER5というフレームワークを提示するものです。その設計の根底には、入金力・比率管理・長期ストーリーへの集中という3つの原則があります。
- コア6割をS&P500とQQQで固め、サテライト4割に成長個別株を置くコア・サテライト戦略が全体の枠組みです。
- HODLER5フレームワークでは「創業者経営×長期成長ストーリー」という基準で銘柄を選定し、定期的に見直しています。
- 米国株を選ぶ根拠は「人口成長率+生産効率の伸び率」という経済成長の方程式と、VC投資環境の圧倒的な差にあります。
- S&P500の過去66年平均リターン(幾何平均)約7.5%は、複利効果との組み合わせで長期的な資産形成を強力に支えます。
- サテライト比率の管理・見直しトリガーの設定・感情ルールの事前整備が、戦略を長続きさせる実践的な鍵です。
ただし、投資する際は各社の業績・財務状況・市場環境を総合的に判断することが大切です。
まずは「コアに置くS&P500連動ファンドを1本選ぶ」という小さな一歩から始めてみてください。その1本が、長期投資の土台になります。
関連記事:投資で年利10%は難しい?達成できる方法・複利シミュレーション・現実的な運用戦略を徹底解説
本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を推奨するものではありません。 投資判断はご自身の責任において行ってください。
掲載データは執筆時点(2026年8月2日)の情報に基づいており、 最新情報は各社IR・ EDINET・ 金融庁・ 東証 にてご確認ください。
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