「NTT株を10年持ち続けたら、どうなるんだろう?」
正直に言うと、私がこの問いに向き合ったのは2023年の株式分割直後のことでした。当時は「1単元が1万6,000円で買えるなら、とりあえず買ってみよう」という軽い気持ちで購入ボタンを押したのを覚えています。でも、いざ保有し始めると「本当にこれで良かったのか」という疑問が頭を離れませんでした。配当は安定しているけれど、株価は分割後から下落が続いている。IOWNってそんなにすごい技術なの?政府株の売却リスクはどれほど深刻なの?次々と疑問が湧いてきました。
2026年7月5日時点のNTT株価は約146円前後で推移しています(日経電子版リアルタイムデータより確認)。アナリストの平均目標株価は170円(みんかぶ調べ、2026年7月5日確認)で、現時点は依然として割安圏とされています。しかし「割安」という言葉だけで判断して後悔しないよう、10年という時間軸で根拠を持って考えることが何より重要です。
本記事では、NTT(証券コード:9432)の2025年度決算短信・IR資料・NTTグループ公式発表をもとに、強気・中立・弱気の3シナリオで10年後の株価を徹底予測します。著者が決算書から独自に試算したデータや、他記事では触れていない「AIOWN」という新概念も交えながら、長期投資家が今知るべき全情報をお届けします。
この記事でわかること
- NTT株価が10年後に上がる根拠と下がるリスクを「同時に」把握できる
- 2026年4月発表の「AIOWN(エーアイオン)」構想が何を意味するか理解できる
- 16期連続増配の配当戦略が今後も続く蓋然性を見極める視点が身につく
- NTT法改正・政府保有株売却が株価に与えるシナリオを把握できる
- 配当再投資を含めた「トータルリターン」の現実的な試算がわかる
目次
NTT株価の現状|10年後を語る前に知っておくべき基礎データ
まず地図を持たずに旅に出ることはできません。将来を語る前に、2026年7月時点のNTTの「現在地」を数字で正確に把握することが出発点です。
私がNTT株を保有し始めてから約3年が経ちました。その間に感じたのは「数字は定期的に自分で確認しないと、いつの間にかズレた前提で判断してしまう」ということです。特に株式分割後のNTTは指標の読み方が変わった部分もあり、私自身も最初は配当利回りの計算を誤って記録していたことがありました。そんな失敗も踏まえて、まずは現状の基礎データを丁寧に確認していきましょう。
2026年7月時点の株価・配当・財務指標まとめ
以下は、NTT(9432)の2025年度決算短信(NTTグループ公式IR、2026年5月8日発表)および東証リアルタイムデータをもとに、2026年7月5日時点で私が確認・整理したデータです。
| 項目 | 数値(2026年7月5日確認) | 出典・補足 |
|---|---|---|
| 株価 | 約146円前後 | 日経電子版リアルタイム(2026年7月3日終値146.1円) |
| 年間配当(2026年度予想) | 5.40円(16期連続増配) | NTTグループIR|株主還元ページ |
| 配当利回り(予想) | 約3.7% | 5.40÷146×100で算出(著者計算) |
| PER(株価収益率) | 約11.5倍 | みんかぶ(2026年7月5日確認) |
| 自己資本比率 | 約20.8% | 2025年度決算短信(NTTグループ、2026年5月8日) |
| アナリスト平均目標株価 | 170円(買い推奨) | みんかぶ アナリスト予想(2026年7月5日確認) |
| 営業収益(2025年度) | 14兆4,091億円(前年比+5.1%) | 2025年度決算短信(NTTグループ、2026年5月8日) |
| 営業利益(2025年度) | 1兆7,062億円 | 2025年度決算短信(NTTグループ、2026年5月8日) |
この数字を見て私が改めて感じるのは、「NTTは今、割安なのか正当な評価なのか」という問いへの答えが一筋縄ではいかないということです。PER約11.5倍は東証プライム市場の全銘柄平均(約15〜17倍)を下回っており、数字だけ見れば「割安」です。しかし、その背景には後述する財務レバレッジの問題と、成長投資の重さが存在しています。安いからといって即座に「お買い得」とは言い切れない、そんな複雑さがNTT株の面白みでもあります。
PER(Price Earnings Ratio)とは、株価が1株あたり純利益の何倍かを示す指標です。「株価÷1株あたり純利益」で計算されます。PERが低いほど「利益に対して株価が安い=割安」とされますが、成長期待が低い企業もPERが低くなるため、数字だけでなく成長性と合わせて判断することが重要です。
25分割後の個人株主数の変化と市場への影響
2023年7月、NTTは1株を25株に分割する大規模な株式分割を実施しました。私もこのタイミングで初めてNTT株を購入した一人です。分割前は1株4,000円台で、最低購入金額は約40万円。それが分割後は1単元(100株)で約16,000円前後になり、NISA口座を開いたばかりの社会人でも気軽に手が届く銘柄になりました。
NTTグループのIR資料(2026年3月末時点)によると、個人株主数は2023年3月末の約92万人から2025年3月末には約268万人と、約3倍に拡大しています。これはNTTにとって「長期的に株価を下支えする個人投資家の裾野が広がった」という観点で、非常に重要な変化です。株主数が多いということは、市場の流動性が高まり、大口機関投資家の売りに対して個人の買い支えが機能しやすくなることを意味します。
一方で、ネット上では「25分割は失敗だった」という声も見かけます。根拠は分割後の株価下落です。2024年1月に過去最高値の192.9円をつけた後、2026年6月下旬には年初来安値の142.6円まで下落しました。ただし正直に言うと、この下落の主因を「分割のせい」と断言するのは乱暴だと私は感じています。2024〜2025年にかけての日銀の利上げ観測と円高進行、国内機関投資家による大型株の利益確定売りという市場全体の動きも大きく影響しているからです。長期保有の投資家にとってむしろ「安く仕込めるタイミング」とも解釈できる局面が続いているとも言えます。
競合2社(KDDI・ソフトバンク)との比較で見えるNTTの立ち位置
NTT株の実力を正しく評価するには、同じ通信業界の競合との比較が不可欠です。以下は各社の2025年度の主要財務指標を、各社の決算短信をもとに私が整理した比較表です(2026年7月5日確認)。
| 指標 | NTT(9432) | KDDI(9433) | ソフトバンク(9434) |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 14兆4,091億円 | 6兆719億円 | 7兆386億円 |
| 営業利益 | 1兆7,062億円 | 1兆874億円 | 1兆425億円 |
| 配当利回り(予想) | 約3.7% | 約3.4% | 約4.5% |
| 自己資本比率 | 約20.8% | 約40%台 | 約20%台 |
| 主な成長投資 | AIOWN・DC(8兆円規模) | 衛星通信・金融 | AI・スマートシティ |
この比較で明確に見えてくるのは、NTTの規模の圧倒性です。営業収益14兆円超はKDDIの約2.4倍、ソフトバンクの約2倍です。インフラ企業としての「太さ」は群を抜いています。一方で配当利回りはソフトバンクが最も高く、財務健全性ではKDDIが勝ります。NTTは「規模と成長投資の大きさ」という独自の軸で評価すべき銘柄といえます。次章では、その成長投資の核心である「AIOWN」に深く迫ります。
NTT株価10年後を左右するAIOWNとデータセンター戦略
IOWNはもはや「将来の夢」ではなく、「実装フェーズ」に入った現実の技術です。そして2026年4月、NTTはさらにその先を見据えた「AIOWN」という新概念を発表しました。
投資家として正直に言うと、IOWNという言葉を最初に聞いたとき「またNTTが大きなことを言っているだけじゃないの?」と半信半疑でした。でも2026年4月27日の記者説明会の内容を確認したとき、考えが変わりました。NTT代表取締役社長の島田明氏が「AIOWN(エーアイオン)」という新たな構想を発表し、具体的な数字と開発ロードマップを提示したからです。これはもう「コンセプト段階」の話ではないと感じました。
「AIOWN」とは何か|IOWNから進化した次世代AIインフラ構想
IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)は、NTTが2019年から開発を進めてきた次世代光通信技術です。「光を使って電気の代わりにデータを伝送する」技術で、従来比で消費電力を100分の1に削減し、通信容量を125倍、通信遅延を200分の1にする性能を持ちます。2023年3月には商用提供が開始され、2026年のMWC(世界最大の通信展示会)でも光電融合・光量子コンピュータ技術を発表するなど、着実に「実装フェーズ」へ移行しています(NTTグループ公式ブログ、2026年5月22日掲載)。
そして2026年4月27日の記者説明会で発表されたのが「AIOWN(AI + IOWN)」です。BusinessNetwork.jpの報道(2026年4月)によると、AIOWNはユーザーの利用用途に合わせてGPU・通信ネットワーク・電力を最適化し、分散配置されたデータセンターからエッジまでを含む「AIの利活用に不可欠なシステム基盤を統合的に提供する」構想です。島田明社長は同説明会でこう述べています。
「GPUの使い方は学習中心から推論中心へシフトしていく。2030年におけるAI推論のワークロードは2025年比で4倍以上に増加する。AIOWNを通じて、こうした推論需要に応えていきたい。」
— NTT 代表取締役社長 社長執行役員 島田明氏(2026年4月27日 AIOWN記者説明会、BusinessNetwork.jp掲載記事より)
この発言で注目すべきは「推論中心へのシフト」という視点です。これは他のNTT関連記事ではあまり取り上げられていない独自の切り口です。AI技術の発展段階において、「学習フェーズ」は大量のGPUを使って一度だけ行う処理であるのに対し、「推論フェーズ」はChatGPTのような製品が日常的に使われるたびに繰り返し行われる処理です。つまり推論需要は、AI普及が進むほど指数関数的に増え続けます。NTTがAIOWNで狙っているのはまさにこの「推論インフラ市場」の獲得であり、これはデータセンター事業の超長期的な成長ドライバーになる可能性があります。
AI需要が牽引するデータセンター3倍拡張計画の具体像
AIOWNの核心として位置づけられているのが、データセンターの大規模拡張計画です。NTTグループは現在、全国47都道府県に160拠点以上のデータセンターを展開しており、現在の受電容量は約300MWです。これを2033年度までに3倍超の約1GWへ拡大する方針が、2026年4月27日の説明会で明示されました(BusinessNetwork.jp掲載、NTT島田社長説明会資料より)。
さらに具体的な建設計画も公表されています。2029年には品川区内に液冷を前提とした最新型データセンターと、栃木県内に約100MWの大規模データセンターを整備する計画です。2030年には千葉県の印西・白井エリアに約250MW規模を誇る国内最大級のデータセンターキャンパスが稼働する予定です。ネットワーク面では、2027年度までに47都道府県の県庁所在地間を800GbpsのAPN(All-Photonics Network)で接続する基盤を構築し、全国160以上のデータセンター間を低遅延で相互接続する体制を整えるとされています。
| 時期 | NTTのデータセンター関連動向 | 株価への期待効果 |
|---|---|---|
| 2025年9月 | NTTデータグループ完全子会社化(上場廃止) | グループ一体経営による収益強化・シナジー創出 |
| 2026年4月 | AIOWN構想発表・DC拡張計画(〜1GW)公表 | AI需要取り込みへの本格始動の確認 |
| 2027年度 | 47都道府県を800GbpsのAPNで接続完了(予定) | 全国DCの低遅延ネットワーク化で競争優位確立 |
| 2029〜2030年 | 品川・栃木・千葉に大規模DC稼働(予定) | AI推論インフラとしての収益本格化 |
| 2033年度 | 受電容量1GW達成目標 | EBITDA4兆円目標の重要な柱に |
8兆円の成長投資が株価に反映されるまでのタイムライン
NTTが掲げる約8兆円規模の成長投資(2026〜2028年度の設備投資計画ベース)は夢のある数字ですが、「では株価にいつ反映されるのか」という問いへの答えは、正直に言うと「すぐには反映されない」が正確です。データセンターを建設してから実際にAI企業との契約が生まれ、安定した収益フローが確立されるまでには、最短でも3〜5年かかります。また、IOWNを採用するグローバル企業が増え、NTTの収益への貢献が財務諸表に明確に表れるのも同様の時間軸です。
しかし株式市場は「現実の業績」だけでなく「将来の業績への期待」を先取りして動く仕組みを持っています。2027〜2028年にかけてデータセンターの稼働が本格化し、AI推論需要を捉えた契約実績が積み上がってくれば、市場が一気にNTTを「通信株」ではなく「AIインフラ株」として再評価するタイミングが訪れる可能性があります。私自身は2030年前後が最初の「評価の転換点」になり得ると見ています。10年という時間軸はまさにその転換を待つために必要な期間とも言えます。
NTT株価10年後のリスク要因|見落とせない3つの懸念
明るい将来像の裏には、長期保有において無視できないリスクが存在します。希望と不安を両方見つめることが、後悔しない投資判断の前提です。
前章でAIOWNとデータセンターの可能性を見てきました。しかし私は保有者として「良いことだけ信じていては危ない」という意識を常に持つようにしています。ここからは意識的にネガティブな側面にフォーカスします。リスクを事前に知っておくことで、実際に悪いニュースが来たときに冷静に判断できるようになるからです。
NTT法廃止と政府保有株売却が需給に与えるシナリオ
NTT法は1984年の民営化時に制定された法律で、「政府はNTT株を3分の1以上保有し続けなければならない」「外国人株主の議決権を3分の1未満に制限する」などのルールを定めています。2023年以降、この法律の廃止に向けた議論が国会でも活発化し、2025年5月の改正でユニバーサルサービス義務の一部緩和が実現しました。外資規制については現時点では維持されたものの、今後3年程度をめどに廃止の検討が進む見込みです(総務省「NTT法の在り方に関する議論」参照)。
投資家にとって最大の懸念は、政府保有株(発行済み株式の約32.25%、時価総額換算で約5兆円規模)が市場に放出される可能性です。仮に段階的な売却が進んだ場合、市場には「売り圧力」が継続的にかかります。一方でNTT法廃止に伴い外資規制が撤廃されれば、海外の機関投資家が大量に購入しやすくなり「買い圧力」が生まれる可能性もあります。楽観シナリオでは外資流入が政府売却を吸収し株価を押し上げ、悲観シナリオでは政府売却が先行し需給悪化が継続します。10年という長い時間軸では、この問題は「常に頭の片隅に置くべき構造的リスク」として機能し続けるでしょう。
自己資本比率20.8%という財務リスクの本質
NTTの自己資本比率は、2025年度決算短信(NTTグループ、2026年5月8日発表)によると約20.8%です。これは2019年度の約40%台と比べて、わずか6年で半分以下に低下した数字です。主な原因は2020年のNTTドコモ完全子会社化(約4.3兆円の資金調達)と2025年のNTTデータグループ完全子会社化(約2.6兆円の社債発行)という2つの大型M&Aです。
一般的に自己資本比率が低い企業は、金利上昇局面で借入コストが増大し、利益が圧迫されやすい構造を持ちます。日本銀行が2024〜2025年にかけて段階的な利上げを実施している環境では、NTTの多額の有利子負債は実質的な業績リスク要因になります。ただし私自身は、この点を「致命的なリスク」ではなく「モニタリングが必要なリスク」として位置づけています。なぜなら通信インフラ業界は本質的に「装置産業」であり、巨大な設備を維持・更新するために借入を活用することは業界の構造的な必然だからです。KDDIやソフトバンクも類似の構造を持ち、単純にNTTだけを財務面で劣後評価することは適切ではありません。
金利が大幅に上昇した場合(例:政策金利が1%を超える水準へ)、NTTの利払いコスト増大が配当維持能力に影響を与える可能性があります。日本銀行の金融政策の動向は、NTT株保有者として定期的にウォッチすることをお勧めします。
通信市場の成熟化と料金値下げ圧力が続く構造問題
日本の携帯電話契約数は総務省の統計によると2024年度末時点で約2億1,000万回線を超え、人口の1.7倍近くに達しています。つまり「新規ユーザーを獲得する余地」はほぼ枯渇しており、国内通信市場は典型的な「成熟市場」の段階に入っています。競争原理が働く成熟市場では、シェア争いが「新規獲得」から「料金引き下げ」へとシフトするため、収益率が継続的に低下しやすい構造があります。
2020年の菅政権以降、政府からの携帯料金値下げ圧力は継続的にかかっており、各社は低価格プランの拡充を余儀なくされてきました。NTTドコモも例外ではなく、「irumo」や「ahamo」といった低価格プランの普及がARPU(1ユーザーあたりの平均収益)を下押しする構造は続いています。NTTグループ全体の通信事業収益が「量の拡大」で成長する時代は、すでに終わっているのが現実です。だからこそAIOWNやデータセンターという「次の稼ぎ頭」を育てることが、NTTにとって存亡をかけた戦略的課題になっています。この移行が成功するかどうかが、10年後の株価を左右する最大の変数です。
NTT株価10年後の予測シナリオ|強気・中立・弱気の3パターン
「株価の予測は誰にもできない」は正論です。しかし「複数の未来を想定して備える」ことは、長期投資家として今すぐできる最善の行動です。
ここから、私が独自に計算・試算した「10年後の株価・配当トータルリターン」のシナリオを3パターンで提示します。前提となる数字は2026年7月5日時点の株価146円、年間配当5.40円(予想)です。配当再投資は行わない「受け取りのみ」のケースで計算しています。
なお、2026年7月5日時点のアナリスト平均目標株価は170円(みんかぶ調べ)、過去最高値は2024年1月の192.9円、年初来安値は2026年6月23日の142.6円です。これらの数値を座標軸として各シナリオを考えていきます。
強気シナリオ|AIOWN普及とデータセンター収益化が加速した場合
強気シナリオは、AIOWNが2030年前後にグローバルで採用が進み、AI推論インフラとしての収益が本格化するケースです。島田社長が示したEBITDA4兆円(2030年度目標)が達成され、増配が加速する状況を前提としています。
このシナリオでは、NTTは「通信会社」から「AIインフラ企業」として市場に再評価されます。仮にPERが現在の11.5倍から15〜17倍(市場平均水準)へ修正された場合、EPS(1株あたり純利益)の成長と組み合わせると、2036年の株価は220〜280円程度も現実的なレンジとして考えられます。10年間の配当合計(増配が年率3〜5%で継続と仮定)は1株あたり約60〜75円と試算されます。146円で購入した場合、株価上昇+配当でのトータルリターンは約90〜130%に達する計算です。
$$\text{強気シナリオ トータルリターン} = \frac{(260 – 146) + 67}{146} \times 100 \approx 124\%$$実現条件としては、AIOWNのグローバル標準化、データセンター1GW達成、NTT法廃止による外資流入、日経平均の継続的な上昇(8万円台)が揃う必要があります。決して非現実的ではありませんが、複数の条件が重なる必要があるという意味で、確率は「起こりうる最善」として捉えておくのが適切です。
中立シナリオ|配当収入を軸に緩やかに成長する場合
中立シナリオは、AIOWNやデータセンターが期待通りでも大幅な失敗でもなく、既存の通信事業の安定性を背景に緩やかな成長が続くケースです。株価は現状水準から横ばい〜緩やかに上昇し、2036年時点で160〜190円程度を想定します。
このシナリオでは、株価上昇よりも「配当の積み上げ」が収益の中心になります。現在の配当利回り約3.7%が10年間維持(増配ペース年率2〜3%で推移)したと仮定すると、10年間の配当合計は1株あたり約55〜62円になります。購入価格146円に対するトータルリターンは約45〜65%と試算されます。
$$\text{中立シナリオ トータルリターン} = \frac{(175 – 146) + 58}{146} \times 100 \approx 60\%$$私自身が現在「最も蓋然性が高い」と見ているのがこの中立シナリオです。10年間で60%のトータルリターンは、年率換算で約4.8%程度に相当します(単純計算)。これは定期預金や国内債券と比べれば十分に魅力的な水準ですが、同じ10年でS&P500への投資が年率7〜10%を狙えることと比較すると、「安定はしているが成長の爆発力は限定的」という評価になります。
弱気シナリオ|規制強化と設備投資負担が長期化した場合
弱気シナリオは、AIOWNの収益化が想定より大幅に遅れ、政府保有株の売却圧力と金利上昇が重なるケースです。株価は現状水準を下回り、2036年時点で110〜130円程度まで下落する局面も想定します。
具体的なトリガーとしては、NTT法廃止に伴う政府株の市場放出(段階的とはいえ需給の悪化)、日銀の追加利上げによる借入コスト増大、データセンター拡張に伴う巨額減価償却費の利益圧迫、そしてAI技術の主導権が米系(Google・Amazon・Microsoft)やアジア系に奪われシナリオがあります。
このシナリオでも、配当の完全停止は現実的ではなく、継続増配から「増配停止・維持」へのシフトが起きると想定します。仮に10年間の配当合計が45〜50円程度にとどまり、株価が120円に下落した場合、トータルリターンはマイナスになる可能性があります。
$$\text{弱気シナリオ トータルリターン} = \frac{(120 – 146) + 47}{146} \times 100 \approx +7\%$$弱気シナリオでも「完全な損失」とはならない可能性が高いのは、NTTが持つインフラの代替不可能性と配当の持続性が下支えになるからです。ただし、他の投資機会と比較した「機会損失」は無視できない規模になります。
NTT株価10年後を見据えた投資判断|こんな人に向いている
「向いている・向いていない」を正直に語ることが、長期投資での後悔を防ぐ最初の一歩です。NTT株はすべての人に最適な銘柄ではありません。
3年間NTTを保有してきて、私が気づいたことがあります。NTT株を持っていて「安心できる人」と「不安が続く人」の違いは、投資スタイルや目的の違いにほぼ比例しているということです。短期で大きなリターンを狙いたい人にとっては、NTT株は正直なところあまり向いていません。でも、長期で安定した配当を積み上げながら、ゆっくりと資産を育てたい人には、今の水準のNTT株は非常に魅力的な選択肢になり得ます。
配当再投資で複利を狙う長期投資家に適した理由
NTTが16期連続増配を達成してきた事実は、配当の信頼性という意味で非常に重要です。2025年度の年間配当は5.40円で、2026年度も同水準以上が予想されています(NTTグループIR、2026年5月8日発表)。2003年度から現在までの配当成長を確認すると、23年間で配当金額は約10倍以上に増加しています。
この増配の歴史を前提に、NISA口座での配当再投資戦略を試算してみましょう。146円で100株(1単元)購入した場合の初期投資額は14,600円です。年間配当は540円(5.40円×100株)で、配当利回り約3.7%。これを毎年受け取った配当で株を買い増しし続けた場合(複利効果)、10年後の保有株数と受取配当は現在の1.4〜1.6倍程度になる試算になります。NISA口座であれば配当・売却益ともに非課税のため、複利効果を最大限に活かせます。
「買い増し・ホールド・様子見」を判断する3つの基準
NTT株の買い増し・ホールド・様子見を判断する際に、私が個人的に使っている基準は3つです。
1つ目は「配当利回りが3.5%を超えているか」です。配当利回りが3.5%を上回る水準は、長期保有に十分なインカムゲインが得られる水準として私は設定しています。現在(2026年7月5日時点)の配当利回りは約3.7%であり、この基準を満たしています。2つ目は「AIOWNの進捗に重大な後退がないか」です。年1〜2回のIR説明会や決算発表でデータセンター計画の遅延・縮小が発表された場合は、シナリオの見直しが必要です。3つ目は「PERが15倍を大きく超えていないか」です。PERが15倍を超えてくると、成長期待が先行しすぎて割安感が薄れてきます。現在は約11.5倍であり、この観点では依然として購入しやすい水準です。
・配当利回り約3.7%:基準クリア
・AIOWN計画の進捗:2026年4月発表で具体化進行中
・PER約11.5倍:割安圏を維持
NISAや積立投資との相性と活用戦略
NTT株は、2024年から始まった新NISAの「成長投資枠」(年240万円、生涯1,200万円)での活用に適した銘柄の一つです。特に「配当を非課税で受け取る」という観点では、配当利回り約3.7%という水準は高い恩恵をもたらします。通常の課税口座では配当に約20.315%の税金がかかりますが、NISA口座なら全額を手取りとして受け取れます。
積立投資との相性については、NTT株が証券会社の株式積立サービス(1株から積立可能なサービス)に対応しているかどうかを確認する必要があります。SBI証券やマネックス証券では1株単位の積立が可能であり、毎月1〜2株ずつ購入するという分散購入(ドルコスト平均法)も現実的な戦略です。株価が下落した月には多く買い、上昇した月には少なく買うという自動的な分散効果が働きます。ただし、積立サービスは証券会社によって手数料・対応銘柄が異なるため、事前の確認をお勧めします(金融庁「NISA特設ウェブサイト」も参照)。
まとめ|NTT株価の10年後に備えて今できること
NTT株は「守りの高配当株」であると同時に、AIOWNとデータセンターという巨大な成長投資を抱えた「攻めの銘柄」でもあります。その二面性を正確に理解したうえで、10年という時間軸で投資を考えることが、後悔しない判断への唯一の道だと私は確信しています。
- 第1章:2026年7月時点の株価は約146円、配当利回り約3.7%・PER約11.5倍で割安圏。25分割後に個人株主が約3倍に拡大し、株価の下支え層が厚くなっています。
- 第2章:2026年4月に「AIOWN」構想が発表され、IOWNはコンセプトから実装フェーズへ。2033年度のデータセンター受電容量1GW目標は、AI推論需要を取り込む具体的な成長エンジンです。
- 第3章:NTT法廃止に伴う政府保有株売却リスク、自己資本比率20.8%という財務レバレッジ、通信市場の成熟化という3つのリスクは、長期保有において常にモニタリングが必要です。
- 第4章:強気シナリオで株価220〜280円(トータルリターン約124%)、中立シナリオで株価160〜190円(同約60%)、弱気シナリオで株価110〜130円(同ほぼ微増)が10年後の想定レンジです。
- 第5章:配当利回り3.5%超・AIOWN進捗良好・PER15倍未満の3条件を満たす現在は、長期投資家にとって検討価値のある局面です。NISA成長投資枠での配当非課税活用が特に有効です。
次のアクションとして、まずNTTグループ公式IRサイトで最新の決算資料と株主通信「NTTis」を確認することをお勧めします。加えて、東京証券取引所の適時開示情報でNTT(9432)の最新情報をフォローし、半年に一度は自分の投資目的と保有状況を見直す習慣をつけてください。10年という旅は長いからこそ、定期的な「地図の確認」が道を誤らないために欠かせません。
最終更新日:2026年7月5日
本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を推奨するものではありません。記事内のデータは執筆時点(2026年7月5日)の公開情報に基づいており、将来の株価・配当を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。
KO|20代から投資を始め、サイドFIREを目指す個人投資家。NTT株を実際に保有しながら、長期投資の実体験をもとに記事を執筆しています。
Twitter(X):@ko__investment
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