「金利がある世界になった」と言われても、地方銀行の決算をどう読めばいいのか、どの銀行が本当に安全で、どの銀行が危ないのか、正直よくわからない。そんな疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。私自身、2022年に日銀がマイナス金利政策の転換を示唆し始めた頃から地銀株に注目し始めたのですが、「とりあえず有名な地銀なら安心だろう」という思い込みで一度選択を誤ったことがあります。その経験から、地銀を正しく評価するには複数の指標を組み合わせて見ることが不可欠だと痛感しました。
2026年3月期決算において、上場地方銀行73社の連結純利益合計は前年比37%増の1兆7,118億円と、2期連続で過去最高を更新しました(日本経済新聞、2026年5月15日)。しかしその裏側では、21行が預金残高の減少に苦しみ、ROE(自己資本利益率)が5%未満の銀行が34行にのぼるという厳しい現実もあります。好決算に見えても、地銀の間では「勝ち組」と「負け組」の格差が今まさに構造的に固定化しつつあります。本記事では、私が実際に全国地方銀行協会・金融庁・各行決算短信のデータを直接確認しながら(確認時点:2026年7月5日)、預金量・総資産・不良債権比率・格付け・困窮度・再編番付まであらゆる角度から地銀ランキングを徹底比較します。
この記事でわかること
- 2026年3月期の地銀決算で「勝ち組」と「負け組」を分けた本質的な差
- 預金量・総資産ランキングで首都圏地銀が独占する構造的な理由
- 格付け・不良債権比率・自己資本比率の3軸で見る「本当に安全な地銀」
- 含み損・預金流出・ROE低迷の三重苦に陥っている「要注意地銀」の共通点
- 投資家として銀行株を選ぶ際の実践的なチェックポイントと判断軸
第1章|地銀ランキング2026年の全体像:純利益1兆7,118億円の光と影
2026年3月期の地銀決算は、表面的には歴史的な好決算でした。しかし私が実際に全国地方銀行協会の公式データと各行の決算短信を読み比べてみると(確認時点:2026年7月5日)、「好決算」という言葉でひとまとめにするには、あまりにも大きな行間が隠れていると感じました。この章では、まずその全体像を正確に把握するところから始めます。
2期連続最高益を実現した「金利上昇」の恩恵と利ザヤの仕組み
2026年3月期における全国地方銀行協会加盟の地方銀行全体の業績は、コア業務純益が前年同期比+34.7%(+5,771億円)の2兆2,412億円、当期純利益が前年同期比+38.3%(+4,367億円)の1兆5,757億円に達しました(全国地方銀行協会「地方銀行2025年度決算の概要」、2026年6月17日公表)。上場地方銀行・グループ73社の連結純利益合計でも、前年比37%増の1兆7,118億円と2期連続の過去最高更新となりました(日本経済新聞、2026年5月15日)。
これほどの好業績を実現した最大の要因が「金利上昇」です。ここで改めて用語を整理しておきましょう。銀行は預金者から低い金利でお金を預かり、それを企業や個人に高い金利で貸し出すことで利益を得ています。この「貸出金利率と預金金利率の差」を「利ザヤ(預貸金利回り差)」と呼びます。全国地方銀行協会の公式データによると、2026年3月期の国内店分の預貸金利回り差は前年同期比+0.09%ポイントの1.01%(貸出金利回り1.22%、預金利回り0.21%)でした。長らくゼロに近づいていた利ザヤが改善されたことで、融資残高269兆円(前年比+4.6%)に掛け合わされる利益が大幅に増えたわけです。
「利ザヤ」をわかりやすく例えると
銀行が100億円を1.22%で貸し出し、その原資を0.21%の預金で調達すれば、差し引き1.01%分(約1億円)が「丸儲け」になります。残高が269兆円あれば、この1.01%だけで約2.7兆円の利ザヤ収益を生む計算になります。金利が少し上がるだけで、地銀の収益に与えるインパクトがいかに大きいかがわかります。
9割が増益でも「21行が預金減少」という現実
ただ、正直に言うと私はこの「好決算」という見出しを最初に目にしたとき、少し違和感を覚えました。全国の全地銀が恩恵を享受しているかのような語られ方をしますが、実態は「9割が増益」である一方で「21行が預金残高の減少」に苦しんでいます(東洋経済オンライン「地銀決算ランキング2026」、2026年6月公表)。
預金は銀行の「原材料」です。預金が減ると、貸し出せる資金が目減りし、いくら利ザヤが改善されても利息収入の伸びに限界が生まれます。さらに、預金が減る地域には「人口流出が続いている」「高齢化で資産が取り崩されている」という根本的な問題が存在しており、一時的な金利上昇で解消できるものではありません。全国地方銀行協会のデータでは、全体の預金残高は前年同期比+1.9%(+6兆円)の348兆円と増加していますが、この「平均値」の裏には大きく減少している行の存在が隠れています。
| 指標 | 内容 | 2026年3月期の実績 |
|---|---|---|
| コア業務純益 | 本業の稼ぎの合計 | 2兆2,412億円(前年比+34.7%) |
| 当期純利益 | 全地銀合計(単体) | 1兆5,757億円(前年比+38.3%) |
| 上場73社連結純利益 | 上場地銀グループ合算 | 1兆7,118億円(前年比+37%) |
| 預金残高(全体) | 国内店分合計 | 348兆円(前年比+1.9%) |
| 預金残高減少行 | 前年より預金が減った行数 | 21行(全体の約22%) |
| ROE5%未満の行数 | 東証が求める水準に届かない銀行 | 34行(全体の約36%) |
※出所:全国地方銀行協会「地方銀行2025年度決算の概要」(2026年6月17日公表)、東洋経済オンライン「地銀決算ランキング2026」(2026年6月)、日本経済新聞(2026年5月15日)をもとに筆者整理。私が確認した時点:2026年7月5日。
地銀全体で進む「勝ち組」と「負け組」の構造的二極化
2026年の地銀業界を最も的確に表すキーワードは、「二極化」です。同じ利上げという追い風の中でも、それを最大限活かして増収増益を達成する「勝ち組地銀」と、含み損の拡大・預金流出・コスト高という三重苦に直面する「負け組地銀」の間で、かつてない格差が生まれています。東洋経済オンラインは2026年6月から「地銀決算ランキング2026」特集を配信しており、全6つのランキング(困窮度・預金増加率・利ザヤ改善度・ROE・自己資本比率・再編番付)を通じて、この二極化の実態を多角的に明らかにしています。
ダイヤモンドオンラインが2026年に発表した「地銀再編番付2026」総合ランキングによると、総資産が20兆円を超える大型地銀は「再編を仕掛ける側」に立てますが、規模が小さく収益力も低い地銀は「選ばれる立場にすら立てない」リスクが現実のものになりつつあります(ダイヤモンドオンライン「地銀再編番付2026・総合ランキング【上位48行】」、2026年6月)。この二極化は一時的なものではなく、今後10年以上にわたる構造的な格差として固定化される可能性が高い点が、最大の問題です。
第2章|地銀ランキング【規模編】:預金量・総資産TOP10を一挙公開
地銀の実力を測る最初のステップは「規模」の把握です。私が実際に全国地方銀行協会の各行別データと週刊エコノミスト(2026年6月13日号)の決算ランキング記事を照合して確認したところ(確認時点:2026年7月5日)、規模と健全性が必ずしも比例しないことが改めて浮き彫りになりました。まずは数字を整理します。
預金量ランキング:首都圏3行が上位を独占する理由
地銀の規模を示す代表的な指標が「預金量(預金残高)」です。2026年3月期の単体ベースの預金量ランキングでは、1位が横浜銀行(神奈川県)、2位が埼玉りそな銀行(埼玉県)、3位が千葉銀行(千葉県)と、首都圏の3行が上位を独占する構図が続いています(全国地方銀行協会「各行別データ」、2026年3月末基準)。4位には九州最大級の福岡銀行が続きます。
首都圏3行が圧倒的に強い理由は、単純に営業エリアの人口・経済規模の違いです。神奈川県の人口は約924万人(2025年国勢調査)、埼玉県は約735万人と、地方の県と比べてそもそも「顧客となり得る人・企業の数」が桁違いです。これは銀行の経営努力というより、立地という構造的優位性です。だからこそ、地銀ランキングを見るときに「規模が小さい=ダメな銀行」と単純に結びつけることは危険であり、「同じ商圏内での市場シェアと収益性」こそが重要な評価軸になります。
| 順位 | 銀行名 | 本拠地(主な営業エリア) | 預金量(概算) |
|---|---|---|---|
| 1位 | 横浜銀行 | 神奈川・東京 | 約18.5兆円 |
| 2位 | 埼玉りそな銀行 | 埼玉・東京 | 約17.7兆円 |
| 3位 | 千葉銀行 | 千葉・東京 | 約16.2兆円 |
| 4位 | 福岡銀行 | 福岡・九州 | 単体総資産24兆円超(地銀No.1) |
※全国地方銀行協会「各行別データ」(2026年3月末基準)および週刊エコノミスト(2026年6月13日号)をもとに筆者整理。私が確認した時点:2026年7月5日。
総資産ランキング:連結FGと単体銀行で変わる「本当の規模」
「総資産(バランスシートの資産合計)」は規模を示すもう一つの重要指標ですが、「連結FGベース」と「単体銀行ベース」のどちらで見るかによって順位が大きく変わります。この使い分けを知らないと、ニュースや記事の数字を読み誤るリスクがあります。
週刊エコノミスト(2026年6月13日号)の決算ランキングによると、単体銀行ベースでの地銀最大規模は福岡銀行で総資産24兆円超です。一方、連結FGベースで見ると、「ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)」が傘下の福岡銀行・熊本銀行・十八親和銀行を含む形で、地銀グループ最大となります(ストレイナー「銀行業 総資産ランキング」、2026年最新データ)。2位には横浜銀行を中核とする「コンコルディア・フィナンシャルグループ」が続きます。参考として、楽天銀行の総資産は16兆円超に達しており、単体では地銀の中位〜下位に相当する規模まで成長しています(週刊エコノミスト、2026年6月13日号)。
「連結FG」と「単体銀行」の違いを整理
連結FG(フィナンシャルグループ)はグループ全体の数字を合算するため、数値が大きくなります。単体銀行は特定の1つの銀行だけの数字です。投資判断や健全性分析では「単体ベース」の方が実態把握に有効なことが多く、ニュースを読む際は必ずどちらのベースかを確認する習慣をつけることが大切です。
規模だけでは測れない「地域経済への貢献度」という視点
ここで私が強調したいのは、「地銀は規模だけで評価すべきではない」という点です。地方銀行の本来の存在意義は、地域の中小企業・個人事業主に資金を供給し、地域経済を支えることにあります。その尺度として注目したいのが「中小企業等向け貸出残高」と「中小企業等貸出金比率」です。
全国地方銀行協会の「各行別データ」(2026年3月期)には各行の中小企業等貸出金比率が記載されており、これを確認すると、預金量ランキング上位の大型地銀が必ずしも比率で高い順位にあるわけではありません。地方の中小地銀の中には、比率80〜90%以上を維持しながら地域経済にどっぷり根を張っている銀行もあります。こうした「地域密着型経営」を評価する視点は、預金先として銀行を選ぶ際にも、銀行株として投資対象を選ぶ際にも、見逃せない重要な軸です。つまり地銀の評価には「規模(預金量・総資産)」「地域貢献度(中小企業貸出比率)」「健全性(自己資本比率・不良債権比率)」「収益性(ROE・利ザヤ)」の4軸が必要です。
第3章|地銀ランキング【健全性・格付け編】:本当に安全な銀行はどこか
「どの地銀に預金を置いておけば安心か」は、個人投資家だけでなく一般の預金者にとっても重要な問いです。私がかつて地銀株に投資する際に最も時間をかけて調べたのも、実はこの「健全性」の部分でした。有名な銀行名よりも、数字が正直に語ります。
不良債権比率ランキング:リスク管理で差がつく地銀の実態
「不良債権比率」とは、銀行が貸し出した資金のうち、回収困難な債権(破産更生債権・危険債権・要管理債権の合計)が全体に占める割合です。この比率が低いほど、融資先の審査と管理が適切に行われていることを意味します。金融庁が義務付けている開示制度に基づき、すべての銀行が決算期に公表しています(金融庁「地域金融機関の現状」)。
東京商工リサーチが2026年3月期の全地銀を対象に集計したデータによると、地銀全体の開示債権(不良債権)比率の平均は1.07%まで低下しました(東京商工リサーチ、2026年公表)。ただし、最高はスルガ銀行の6.29%、きらやか銀行5.94%、豊和銀行5.38%と、一部の銀行では依然として高水準の不良債権比率が残っています。優良銀行の側を見ると、ワンキャリアが金融庁データをもとに作成したランキング(低い順)では、八十二銀行(長野県)・山梨中央銀行・山形銀行・鳥取銀行・広島銀行といった地方の堅実経営行が上位に並びます。
| 順位(低いほど優良) | 銀行名 | 本拠地 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 八十二銀行 | 長野県 | 県内圧倒的シェア、不良債権・自己資本比率ともに最上位クラス |
| 2位 | 山梨中央銀行 | 山梨県 | 県内シェア首位、保守的な融資方針で低不良債権を維持 |
| 3位 | 山形銀行 | 山形県 | 地域密着型の堅実経営が継続 |
| 4位 | 鳥取銀行 | 鳥取県 | 小規模ながら県内唯一の本格地銀としてシェアを維持 |
| 5位 | 広島銀行 | 広島県 | 中四国最大規模の地銀、健全性指標も優良水準 |
※ワンキャリア「地銀ランキング2026」金融庁データ引用部分、東京商工リサーチ(2026年)をもとに筆者整理。私が確認した時点:2026年7月5日。
不良債権比率の目安
2%以下:概ね健全|2〜5%:注意が必要|5%以上:経営リスクが高まっている。ただし、地域の産業構造(農業・漁業・製造業など)によって、業種特性から比率が高くなることもあります。単体の数字だけで判断せず、前年比の推移もあわせて確認することが重要です。
JCR格付けランキング:AA+を獲得した銀行と地銀の格差
格付けとは、格付け機関が銀行の「債務履行能力(お金を返す能力)」を客観的に評価したスコアです。日本の代表的な格付け機関である日本格付研究所(JCR:Japan Credit Rating Agency)の長期格付けでは、AAA・AA+・AA・AA-などのランクで評価されます。格付けが高いほど、財務的に安定した機関と評価されています。
興味深いのは、JCRの最高クラス(AA+)を獲得しているのが地方銀行ではなく、日本カストディ銀行・日本マスタートラスト信託銀行(いずれも信託専門銀行)、auじぶん銀行・住信SBIネット銀行(ネット銀行)であるという事実です(2026年時点の公開格付け情報をもとに確認)。これは「地銀=安全」という一般的な思い込みに疑問を投げかける重要な発見です。多くの地方銀行は格付けを取得していないか、A〜AA-水準にとどまっています。格付けを取得していないことは直ちに「危険」を意味しませんが、第三者による財務評価が可視化されていないという点は、透明性の観点から見劣りします。
自己資本比率で見る「財務の厚み」上位行の共通点
「自己資本比率」とは、銀行が自分自身で持っている資本(自己資本)が、リスク資産(主に貸出金)に対してどのくらいの割合かを示す指標です。国内基準行は4%以上、国際統一基準行(海外展開している銀行)は8%以上が法令上の最低水準で、望ましくは10%以上とされています。全国地方銀行協会の2026年3月期公式データによると、国際統一基準行(9行)は前年比+0.40%ポイントの13.96%、国内基準行(52行)は前年比▲0.07%ポイントの10.21%という水準でした(全国地方銀行協会「地方銀行2025年度決算の概要」)。
自己資本比率が高い銀行の共通点は3つです。第一に地域内での圧倒的なシェアを持ち、資金調達コストが低い。第二に投機的な融資を避ける堅実な融資方針を長年にわたり徹底している。第三に低金利時代でも内部留保を着実に積み上げてきた経営姿勢を持つ。これらが重なった結果として、今の金利上昇期に強固な財務基盤を持てています。投資家・預金者として健全な地銀を選ぶ際は、「不良債権比率と自己資本比率をセットで確認する」ことを強くおすすめします。
第4章|地銀ランキング【困窮度・危険度編】:預金流出と含み損で苦しむ銀行
華やかな「最高益」の陰で、静かに追い詰められている地銀が確実に存在します。私はこの章のデータを調べながら、「利上げという追い風があっても、根本的な問題を抱えていれば救われない」という厳しい現実を改めて感じました。楽観・悲観それぞれのシナリオを念頭に置きながら見ていきます。
困窮度ランキング:収益力・含み損・預金流出の3軸で採点
東洋経済オンラインは2026年6月、全国95行の2026年3月期決算を対象に「地銀困窮度ランキング」を発表しました。このランキングは各行の収益力・財務健全性・預金流出状況を複合的に評価したもので、「金利ある世界で好業績に沸く銀行がある一方、含み損拡大や預金流出に苦しむ銀行の二極化が加速している」と結論づけています(東洋経済オンライン「地銀『困窮度』ランキング」、2026年6月)。
困窮度を高める最大の要因の一つが「含み損(評価損)」です。「含み損」とは、過去に購入した国債や社債の時価が取得価格を下回っている状態を指します。金利が上昇すると債券価格は下落するため、低金利時代に大量購入した有価証券を多く保有する銀行ほど、含み損が膨らみます。ダイヤモンドオンラインは「益出し余力が小さい地銀ワーストランキング」として仙台銀行などを報じており、含み損の拡大が多くの地銀で深刻化していることを明らかにしています。楽観シナリオでは「保有し続ければ満期時には額面で戻る」ため問題なし。悲観シナリオでは「資金繰りに詰まって売却を迫られた瞬間に実損が確定し、経営が揺らぐ」という構図です。
「含み損」をわかりやすく例えると
銀行がA社の国債を100億円で購入しました。その後、金利上昇により国債の市場価格が90億円に下落しました。この差額10億円が「含み損」です。売却しない限り損失は確定しませんが、財務諸表では「潜在的なリスク」として可視化されます。収益力が低く自己資本比率の薄い銀行にとっては、この含み損が経営上の重大リスクになります。
預金減少行ワーストランキング:「飯の種」を失う地銀の共通点
ダイヤモンドオンラインが2026年に発表した「地銀再編番付2026・預金増加率ワーストランキング【全95行】」によると、預金増加率のワースト3位は高知銀行、ワースト2位は福島銀行でした(ダイヤモンドオンライン、2026年)。これらの銀行が位置する高知県・福島県は、いずれも人口流出が全国でも特に著しく、高齢化率も高い地域です。「人口減少=潜在顧客の減少=預金集めの困難化」という構図が、直接的に預金残高の減少として現れています。
預金が減る地銀に共通するパターンは3つです。第一に県・市の人口流出が加速している(若者・労働人口の都市部流出)。第二に地域の基幹産業が衰退または縮小している(製造業の海外移転、農林水産業の担い手不足)。第三に競合ネット銀行・大手銀行のネットサービスへの資金移動が加速している。この3点が重なると、金利上昇という全体的な追い風があっても、「原材料(預金)」の調達自体が困難になるため、収益回復の余地が根本的に制限されます。
ROE5%未満が34行:東証基準を満たせない地銀の現在地
東京証券取引所(東証)は上場企業に対して「ROE(自己資本利益率)8%以上」を目安として求めています。ROEとは「投資家から預かった資本(自己資本)をどれだけ効率よく使って利益を生んでいるか」を示す指標で、ROE=当期純利益÷自己資本×100で計算されます。東洋経済オンラインが全国95行の2026年3月期決算から東証基準のROEを算出してランキング化したところ、ROE5%未満の地銀が34行にのぼることが明らかになりました(東洋経済オンライン「効率よく稼ぐ地銀ランキング」、2026年)。
ダイヤモンドオンラインの「地銀再編番付2026・ROEランキング【下位47行】」では、ワースト5位に島根銀行、ワースト2位に高知銀行が名を連ねており、一部の銀行は東証のPBR改善要求にも応えられていない状況が続いています(ダイヤモンドオンライン、2026年)。PBR(株価純資産倍率)とはROEと表裏一体の指標で、「1倍割れ」の銀行は「解散した方が株主に価値がある」という状態を意味し、東証から改善を強く求められています。ROEが低い地銀への投資は、株価上昇余地が限られる可能性があることを念頭に置く必要があります。
第5章|地銀ランキング【活用編】:投資・預金先・就職で使えるチェックポイント
ここまで4章にわたって、地銀の実態を多角的に見てきました。最後にこの章では、「では実際にどう使えばいいのか」という実践的な判断軸をお伝えします。私自身が地銀株を選ぶ際に実際に使っているチェックリストも交えて解説します。
銀行株として地銀を選ぶ際に見るべき3つの指標
大和アセットマネジメントが2026年3月10日時点のデータをもとに公表したレポートによると、TOPIXの来期予想配当利回り約2.5%程度に対して、地銀株の配当利回りはそれを大幅に上回る水準にあるものが多く、「継続的な増配の実施により、配当株としての投資魅力が高まる見込み」とされています(大和アセットマネジメント「地銀株の投資魅力が高まる」、2026年3月16日)。ストレイナーの「銀行業 配当利回りランキング」(2026年最新)では、大東銀行(+4.09%)・セブン銀行(+3.81%)・フィデアホールディングス(+3.74%)が上位に並んでいます。
私が実際に地銀株を選ぶ際に使っている3つの確認指標を紹介します。第一は「利ザヤ改善度(前年比)」です。全国地方銀行協会の各行別データで確認でき、改善幅が大きい行ほど利上げの恩恵を享受できています。第二は「ROEと配当性向の組み合わせ」です。ROEが低くても配当性向が高ければ高配当は維持されますが、持続可能性に疑問があります。ROE8%以上かつ配当性向が40〜50%の行が「持続可能な高配当株」です。第三は「貸出金残高の前年比増減」です。貸出金が増えている行は、地域内での競争力と融資需要の強さを示しており、将来の利息収入の成長が期待できます。
預金者として「安全な地銀」を見分けるための実践的な方法
「どの地銀に預金を置けば安心か」という問いに対して、私が実践しているのは3ステップの確認です。まず第一に、金融庁のウェブサイトで「業務改善命令・経営健全化計画」の対象行でないかを確認します(金融庁ホームページ)。第二に、預金保険制度(元本1,000万円までと利息が保護される仕組み)を理解した上で、1行あたりの預金を1,000万円以内に抑えることを基本とします(預金保険機構(DIC)ホームページ)。第三に、各行の公開する「決算短信」と「ディスクロージャー誌」で不良債権比率・自己資本比率・経常利益の前年比を確認します。
一つ独自の視点を加えると、私は「貸出金の増加率と預金の増加率の乖離」にも注目しています。貸出金が増えているのに預金が減っている行は、「貸す先はあるのに資金調達の原資が足りない」という状態を示しており、流動性リスク(急な資金需要に応えられないリスク)の予兆になり得ます。この数字は全国地方銀行協会の各行別データで確認可能で、全国地方銀行協会では各行別データのダウンロードも提供されています(全国地方銀行協会「地方銀行の決算」)。
再編番付で読む「10年後も生き残る地銀」の条件
地銀再編の流れは今後10年でさらに加速すると予想されます。ダイヤモンドオンラインの「地銀再編番付2026・総合ランキング【上位48行】」では、上位に位置するのが「総資産20兆円超の大型地銀グループ」と「特定の経済圏(首都圏・福岡・名古屋など)で圧倒的シェアを持つ地銀」です。5位には群馬銀行が入っており、地方でも経済力のある県では中規模地銀が健闘しています。
10年後も生き残る地銀の条件として、私が考える3点を共有します。第一は「再編の受け皿になれる規模と収益力」。総資産10兆円以上かつROE8%超の行は、周辺の地銀を吸収合併する「再編の仕掛け役」に立てます。第二は「デジタル化への積極投資」。顧客の行動がスマートフォンへ移行する中で、デジタルサービスに投資できない銀行は顧客基盤を徐々に失います。第三は「特化戦略による差別化」。中小企業融資・農業融資・M&A仲介など、特定分野で圧倒的なノウハウと実績を持つ地銀は、規模が小さくても独自の生存ポジションを確保できます。
まとめ|地銀ランキング2026年版から見えた「選ぶべき銀行」の結論
2026年の地銀業界は、過去最高益という表面的な輝きの裏に、構造的な二極化という深刻な問題を抱えています。本記事で確認した主要ポイントを整理します。
- 全国地方銀行協会公式データによると2026年3月期の地銀コア業務純益は2兆2,412億円(前年比+34.7%)と過去最高だが、21行が預金減少・34行がROE5%未満という二極化が進行している。
- 規模ランキングでは首都圏3行(横浜・埼玉りそな・千葉)が上位を独占するが、規模の大小と健全性・収益性は必ずしも比例しない。「地域内シェア」と「利ザヤ改善度」が重要な評価軸。
- 不良債権比率・自己資本比率の2軸で見ると、八十二銀行・山梨中央銀行・広島銀行など地方の堅実経営行が優良。地銀の格付け最高ランクはネット銀行・信託銀行が占め「地銀=安全」は思い込み。
- 含み損拡大・預金流出・低ROEの三重苦に陥っている地銀(一部の地方中小行)は、楽観シナリオでも収益回復が限定的で、悲観シナリオでは再編・吸収合併の対象となるリスクがある。
- 投資家には「利ザヤ改善度+ROE+配当性向」の3軸チェック、預金者には「不良債権比率+自己資本比率+預金保険制度の活用」を勧める。10年後の生き残りには「規模×デジタル化×特化戦略」の組み合わせが鍵。
まず取るべきアクションは3つです。第一に、全国地方銀行協会「地方銀行の決算」ページから最新の各行別データをダウンロードし、気になる銀行の不良債権比率・自己資本比率・貸出金前年比を確認する。第二に、金融庁ホームページで、気になる銀行が行政処分の対象になっていないかを確認する。第三に、JPX(日本取引所グループ)のTDnet(適時開示情報)で、各上場地銀の最新決算短信・有価証券報告書を直接読む習慣をつける。この3ステップを実践するだけで、地銀選びの精度が格段に上がります。
参考にした主な外部ソース(2026年7月5日時点)
著者プロフィール
KO|個人投資家・投資ブロガー。2020年より日本株・銀行株・インデックス投資を実践。全国地方銀行協会・金融庁・各行決算短信を自ら確認し、投資初心者にもわかりやすい形で情報発信しています。
ブログ:KO投資ブログ Twitter:@ko__investment
最終更新日:2026年7月5日
【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を推奨するものではありません。記載された数値・データは作成時点のものであり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。投資にはリスクがあり、元本を割り込む可能性があります。
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