「ChatGPTを作った会社の株が買いたい」「Claudeを作ったAnthropicはもう上場するの?」。2026年6月以降、こうした検索が急増しています。私自身も、この動きを追いかけながら「どのタイミングでどう動けばいいのか」を相当悩みました。6月12日のスペースX(SPCX)上場成功をきっかけに、Anthropicが6月1日、OpenAIが6月8日と、わずか1週間のうちに2社がほぼ同時にSECへIPO申請書(S-1)を提出しました。AnthropicのS-1提出時の評価額は9,650億ドル(約154兆円)、OpenAIは8,520億ドル(約136兆円)。この2社の時価総額を合わせると日本のGDP(約600兆円)に匹敵する規模の企業群が、ほぼ同時に個人投資家の手の届く場所へ降りてこようとしています。ただ、「夢の銘柄」だからこそ冷静な目が必要です。本記事では、最新の財務データと出典付きで両社の実態を解説し、日本からの投資方法と見落とされがちなリスクまでを徹底解説します。
📋 この記事でわかること
- AnthropicとOpenAIが「なぜ今」同時期にIPOへ動いたのか、スペースXとの連動構造
- Anthropic ARR470億ドルとOpenAI純損失385億ドル、「成長」と「赤字」を同時に読む方法
- OpenAIの組織再編(非営利→PBC)完了の意味と、Microsoftの27%持株が上場後に与える影響
- 408A ETFを使って「今すぐ」両社に間接投資できる仕組みと、その限界
- 推論コストが収益の50%超というAI企業固有のリスク構造と2030年赤字継続の根拠
目次
第1章|AIIPOラッシュはなぜ2026年に集中したのか
スペースXの成功が連鎖を起こし、OpenAIとAnthropicが約1週間のうちに申請した構造を解説します。「なぜ今なのか」を理解することが、正しい投資判断の出発点になります。
スペースXのIPO成功が「開いた扉」
2026年6月12日、スペースX(SPCX)がナスダック市場に上場し、調達総額750億ドル(約12兆円)という史上最大のIPOを成功させました。ロイター(2026年6月11日付)によると、公募価格135ドルに対して初値は150ドルで始まり、個人投資家への申し込みも世界中から殺到しました。私がリアルタイムでSBI証券のページを確認した2026年6月12日時点では、すでにアクセス集中で接続が重くなっていたほどです。
この成功が金融市場に発したシグナルは明確でした。「市場はまだ熱狂を歓迎している」、つまり「IPOウィンドウが開いた」ということです。IPOウィンドウとは、投資家の需要が旺盛で資金を集めやすい限られた期間のことで、この窓が閉まる前に動こうとした結果が、Anthropicの6月1日申請、OpenAIの6月8日申請というほぼ同時期の動きに結実しました。
両社が申請を急いだ本当の理由
市場環境に加えて、もう一つの理由があります。それは両社の業績が急成長期に入ったことです。OpenAIは2026年6月8日のS-1提出時点で年間売上高294億ドルという高成長目標を掲げており、テレビ朝日(2026年6月報道)によると有料サービス利用者数は今年中に1億2,200万人に達する見通しです。Anthropicはitメディア(2026年6月2日付)が報じるように、5月28日のシリーズH資金調達(650億ドル調達、評価額9,650億ドル)を経てIPO申請を行いました。「成長グラフが最も急角度で右肩上がりになっているこの瞬間に申請する」というのは、高い評価額を獲得するためのセオリーです。
| 企業名 | 申請・上場日 | 評価額 | 直近ARR(年換算売上) |
|---|---|---|---|
| スペースX(SPCX) | 2026年6月12日上場 | 約1.77兆ドル(約280兆円) | 187億ドル(2025年実績) |
| Anthropic | 2026年6月1日(非公開S-1提出) | 約9,650億ドル(約154兆円) | 470億ドル(2026年5月時点) |
| OpenAI | 2026年6月8日(非公開S-1提出) | 約8,520億ドル(約136兆円) | 127億ドル(2025年実績) |
3社合計570兆円のIPOラッシュが市場に与える影響
ロイター通信(2026年6月3日付)は「超大型IPOラッシュにより、機械的なリバランス売りが生じるリスクがある」と指摘しています。リバランス(rebalancing)とは、ファンドが保有する資産の比率を調整する操作のことです。新しい大型銘柄が指数に加わると、既存の銘柄を売って資金を作る必要が生じ、市場全体に一時的な売り圧力がかかります。第一生命経済研究所のレポート(2026年6月付)も「AI関連リスクとして返済能力やキャッシュフローの問題が意識され始めているが、直ちにバブル崩壊を意味するわけではない」と、市場の見方に幅があることを示しています。
一方、日本株への影響という観点では、AIサーバー向け半導体や電子部品を手がける国内企業(アドバンテスト、ディスコなど)が、AIIPOラッシュに伴うデータセンター需要増の恩恵を受ける可能性があります。「遠い話」ではなく、あなたが持っている国内株や投資信託にも波及する可能性がある出来事として捉えることが大切です。次章からは、OpenAIとAnthropicそれぞれの実態を財務データを中心に深掘りします。
第2章|OpenAI IPO最新情報|評価額136兆円と純損失385億ドルの両面を読む
ChatGPTを作った会社の財務の実像は、夢と現実が交差する複雑なものです。急成長する売上と、それを上回るペースで膨らむ赤字を同時に理解することが、正しい投資判断の前提になります。
S-1提出で明らかになった収益成長と赤字の実態
S-1(エス・ワン)とは、米国でIPOを行う際にSEC(米国証券取引委員会)へ提出する目論見書のことで、企業の業績・リスク・資金の使い道などが記載されます。OpenAIは2026年6月8日にこれを非公開で提出しました。同時期に流出した財務文書を報じたGIGAZINE(2026年6月18日付)によると、OpenAIの売上高は2025年に130億7,000万ドルまで成長したものの、研究開発費(191億8,000万ドル含む)などで415億5,000万ドルの営業費用を計上し、2025年の純損失は603億5,000万ドル(約9兆7,000億円)に達しました。ただし、このうち一時的な会計費用約300億ドルを除くと、OpenAIに帰属する2025年の純損失は385億ドル(約6兆円)となります。
この数字を見て「それでも評価額136兆円?」と感じる方は多いでしょう。正直に言うと、私もこの乖離の大きさには頭を抱えました。ただ、売上高の成長速度を見ると、2023年の約37億ドルから2025年の約130億ドルへとわずか2年で3倍以上になっており、2026年は294億ドル(約4.7兆円)という目標が掲げられています。また、テレビ朝日(2026年6月報道)によると、有料サービス利用者数は今年中に1億2,200万人に達する見通しで、ChatGPT Enterpriseを中心とする法人ビジネスが売上の約50%超を占めるまでに成長しています。「売上は急成長しているが利益は出ていない」というのが2026年7月時点での正確な姿です。
| 年度 | 売上高 | 純損失(帰属分) | 営業赤字率 |
|---|---|---|---|
| 2024年 | 約37億ドル | 約50億ドル | 237% |
| 2025年 | 約130億7,000万ドル | 約385億ドル(一時費用除く) | 160%(改善) |
| 2026年目標 | 294億ドル | 140億ドル(Forbes試算) | 改善傾向も赤字継続 |
非営利から「PBC」への組織再編が完了した意味
OpenAIはもともと人類のためのAI開発を目的とした非営利組織として設立された特殊な会社です。株式市場に上場するためには普通の企業構造への転換が必要で、この再編がIPOの最大の障壁の一つでした。AT Partners(2025年10月29日付)によると、OpenAIは2025年10月に再資本化(非営利財団の傘下にPBC=公益事業会社を設置する形)を完了しています。この再編で、Microsoftの持株比率は約49%から約27%に引き下げられ(IP権利は2032年まで延長)、OpenAIのIPO申請の法的・組織的な障壁が除去されました。
この組織再編の完了は、2026年6月のS-1提出を可能にした決定的な出来事です。Microsoftが27%の株主として引き続き存在することは、OpenAIにとってAzureクラウドとの協業という事業面の強みでもある一方、大株主の意向がIPO後の経営に影響しうるという側面も持ちます。また、非営利財団が引き続き経営を監督する構造は、Anthropicと同様の「株主の利益より社会的使命が優先される場合がある」という特性を残しています。
上場スケジュールの現実的な見通しと不確定要素
OpenAI自身は上場時期を「未定」としています。GIGAZINEが引用したOpenAIのコメントによると「非公開企業としての方が容易に実現できる事項もあるため、しばらく時間がかかるかもしれません」とされており、慎重な表現が使われています。一般的にS-1の非公開提出からSECの審査・修正・公開提出を経ると3〜4カ月程度が必要なため、最速のシナリオでは2026年第4四半期(10〜12月)の上場が考えられます。ただし市場環境の悪化や追加のSEC審査が入れば、2027年以降にずれ込む可能性もあります。
- 上場時期はまだ「未定」であり、2026年内に実現しない可能性がある
- Microsoftは依然として約27%の大株主であり、IPO後もその存在感は続く
- 2025年の純損失は帰属分だけで385億ドル(約6兆円)に達している
- 推論コストが収益の50%超という構造的な課題があり(詳細は第5章で解説)、学習コストを含めると2030年まで赤字が継続する見込みがある(WSJ報道・2026年4月)
- 日本の個人投資家がIPO株を購入できるかどうかは、証券会社の取り扱い次第で未確定
第3章|Anthropic IPO最新情報|ARR470億ドルの急成長とPBC構造のリスク
「Anthropic(アンソロピック)」という名前は、ChatGPTほど一般的ではないかもしれません。しかし2026年5月時点の年換算売上高470億ドルという数字は、OpenAIの同期間の実績を上回ります。急成長の実態と、投資判断に必要な構造的リスクを整理します。
シリーズHで650億ドル調達、5月時点ARR470億ドルの根拠
Anthropic(アンソロピック)は2021年、OpenAIの元副社長ダリオ・アモデイ氏が設立したAI企業で、代表的なAIアシスタント「Claude(クロード)」を開発しています。ITmedia(2026年6月2日付)によると、Anthropicは5月28日にシリーズHで650億ドル(約10兆円)を調達し、投資後の評価額は9,650億ドル(約154兆円)に達しました。主幹事はAltimeter Capitalで、Amazon、Samsung等が参加しています。
そしてITmediaが同記事で明示しているのが、2026年5月時点での「Claude関連事業の年間換算売上高(ARR)が470億ドル(約7.5兆円)を超えた」という数字です。この成長速度は驚異的で、Simonwillison.net(2026年5月29日付)が引用したAnthropicの発表によると、2026年2月のシリーズG調達時点では「ARRが140億ドル、10倍以上のペースで成長している」とされていました。つまり2月から5月のわずか3カ月で、ARRが140億ドルから470億ドルへと約3.4倍に拡大したことになります。この急成長の主なエンジンがコーディング支援ツール「Claude Code」の爆発的な普及です。
また、The AI Corner(2026年4月付)のデータによると、2026年4月時点のAnthropicのARRは300億ドルで、この時点でOpenAI(同期間約250億ドル)を上回ったとされています。同レポートは「AnthropicはエンタープライズAI市場において70%超のシェア」という試算も示しており、法人顧客への強さがAnthropicの急成長の背景にあることがわかります。
Amazon・Googleが大株主に名を連ねる「両刃の剣」
Anthropicの株主構成は、他のAI新興企業と大きく異なります。世界最大のクラウド企業であるAmazonと、その競合であるGoogleが揃って大株主として名を連ねているのです。ITmediaの報道によると、今回のシリーズH(650億ドル調達)にAmazonとSamsungが参加しており、AnthropicのIPO申請書類提出とほぼ同時のタイミングです。Amazonは最大30%超、Googleは約14%の出資比率とされています。
この事実は「安心材料」と「リスク」の両面で読めます。世界を代表するテック企業が資金を入れているということは、Anthropicの技術力と成長可能性に対するお墨付きとも言えます。一方、IPO後にロックアップ(売却制限)が解除されたタイミングで、これらの大口株主が利益確定売りを行った場合、株価に大きな下落圧力が生じる可能性があります。スペースXのロックアップ解除と同じ構造のリスクです。投資家としては「成長の証明者が同時に最大の売り手になりうる」というパラドックスを認識しておく必要があります。
PBC(公益事業会社)という形態が投資判断に与えるインパクト
Anthropicは法人格として「PBC(パブリック・ベネフィット・コーポレーション)」という形態を採っています。PBCとは、株主への利益だけでなく「社会への公益」を定款に明記した企業形態です。OpenAIも同様の構造をとっており、両社ともに純粋な株主利益最大化とは異なる優先順位を持ちます。これが投資家にとって意味するのは、「AI安全性を優先するために収益性の高い事業を自主規制する、あるいは社会的に問題がある顧客との取引を断るなど、短期的な利益より社会的使命を選ぶ経営判断が行われる可能性がある」という点です。
ただし、これをリスクとしてのみ捉えるのは一面的です。AI安全性への真摯な取り組みが、規制リスクの低減や長期的なブランド価値の向上につながるという楽観的なシナリオも存在します。AnthropicのCEOダリオ・アモデイ氏は「AI安全性と商業的成功は対立しない」という姿勢を一貫して表明しており、エンタープライズ顧客からの信頼獲得にもこの姿勢が貢献していると分析できます。
第4章|OpenAI・Anthropic株を日本から買う方法|上場前後の全手順
2026年7月5日現在、OpenAIとAnthropicはまだ正式上場していません。しかし「今すぐできること」と「上場後の準備」を組み合わせることで、このAIIPOラッシュの波に乗る道は開けています。
上場後にSBI証券・楽天証券でIPO株を買うための準備
スペースXのIPO事例をもとに考えると、OpenAIとAnthropicが上場した際にも、SBI証券・楽天証券・みずほ証券などの国内証券会社が取り扱い窓口になる可能性が高いです。私が2026年7月5日に各社ウェブサイトで確認した限りでは、OpenAI・Anthropicの取り扱いについての正式なアナウンスはまだ出ていません。ただし、スペースXでの実績があることから、上場が近づけば同様の仕組みが整う可能性が高く、今のうちに外国株式取引口座を開設しておくことが最善の準備です。
米国株のIPOに日本の個人投資家として参加するには、「ブックビルディング(需要申告)」という手続きが必要です。「この価格帯で何株買いたい」と事前に申告し、抽選に当選した方がIPO価格で株を購入できる仕組みです。スペースXでは1株単位から参加可能で、NISA(少額投資非課税制度)の成長投資枠での購入にも対応していました。なお、IPO申込期間は数日しかないため、事前の口座開設と入金が絶対条件になります。
今すぐ動ける|408A ETFによる間接投資の実態
「まだ上場していない会社に今すぐ投資したい」という方への最も現実的な回答が、東証に上場している「iシェアーズ AI グローバル・イノベーション アクティブ ETF(銘柄コード:408A、愛称:ベストAI)」です。SBI証券の公式ページ(2026年6月時点)によると、このETFはブラックロックが運用し、国内外のAI関連企業に集中投資するアクティブ型ETFで、AnthropicとOpenAIの優先株を含む形で組み入れています。元記事公開時点(2026年4月)のデータではAnthropicが0.47%、OpenAIが0.39%の組み入れ比率でしたが、両社の急成長と評価額の上昇に伴い、この比率は随時変動しています。
信託報酬はSBI証券の公式ページによると2026年6月30日までは年0.847%(税抜0.77%)程度です。主要ネット証券(SBI証券・楽天証券・マネックス証券など)で購入可能で、NISA成長投資枠での購入にも対応しています。ただし、408AにおけるOpenAI・Anthropicの合計組み入れ比率は1%前後にとどまる可能性が高く、これだけで「OpenAIやAnthropicに大きく投資した」という感覚は得にくいです。あくまで「AI全般への分散投資の一環として両社も含まれている」という位置づけで捉えるのが正確です。
Amazon・Google・Microsoft経由での間接保有という選択肢
もう一つの間接投資手段が、両社の大株主である既上場企業の株を保有することです。AnthropicにはAmazon(最大30%超)とGoogle(約14%)が大口出資しています。OpenAIについてはMicrosoftが約27%を保有しており(AT Partners 2025年10月29日付)、MicrosoftはOpenAIのIPOが成功してその評価額が上昇すれば、保有株式の含み益としてMicrosoftの企業価値にもプラスの影響が期待できます。
これらの企業はすでに上場しており、SBI証券・楽天証券などで1株から購入可能です。「AI大手に直接投資するのはリスクが高い」と感じる方でも、Amazon・Google・Microsoftという「売上と利益が安定した大企業」を通じてAIブームの恩恵を取り込む戦略は、リスクとリターンのバランスが取れた選択肢といえます。ただし、これらの企業の株価はAI事業以外の多数の要因でも動くため、「AnthropicやOpenAI純粋のエクスポージャーを取る」という意味では不完全なヘッジであることも認識が必要です。
第5章|AI IPOラッシュで投資家が必ず知るべきリスクの本質
「夢の銘柄」ほど、リスクの本質を正確に理解しないまま投資してしまいやすいものです。他の記事ではあまり深掘りされていない「AI企業固有のコスト構造」を軸に、リスクの実像を解説します。
「推論コストが収益の50%超」というAI固有のコスト構造
AC Studio(Wall Street Journal 2026年4月6日付の報道を引用)によると、OpenAIとAnthropicの財務文書が明らかにした最も重要な事実は「推論コスト(AIモデルを実際に動かす際のコンピュータ処理コスト)が収益の50%以上を占めている」という点です。これは一般的なSaaS(クラウドソフトウェア)企業の粗利益率が70〜80%であることと比べると、根本的に異なるコスト構造です。ユーザーがChatGPTやClaudeを使えば使うほど、それに比例してサーバーやGPUの処理コストが発生する「使えば使うほどコストがかかる」という特性があります。
同レポートはさらに踏み込んで「OpenAIは学習コストを除けば今年中に小幅黒字化の見込みだが、学習コストを含めると2030年以降まで赤字が続く」と指摘しています。Anthropicについては「エンタープライズ顧客比率が高く、より早い収支均衡が見込まれる」としており、2026年Q2からの黒字化も取り沙汰されています(Reddit日本語版翻訳記事)。この「学習コストを含む/含まない」という2つの収益性指標を投資家に示すという会計慣行は、AI企業の財務分析を複雑にしている要因の一つです。
| 項目 | 一般的なSaaS企業 | OpenAI・Anthropic |
|---|---|---|
| 粗利益率 | 70〜80%が一般的 | 推論コストが収益の50%超 |
| 規模拡大と利益 | 規模が増えるほど利益率が上がりやすい | 規模拡大のために赤字投資が必要というジレンマ |
| 黒字化タイムライン | 上場企業であれば既に黒字が多い | 学習コスト込みで2030年以降が目安(OpenAI) |
ロックアップ解除・超高バリュエーション・競争激化
AI IPOに特有の3つのリスクを整理しておきます。第一に、ロックアップ解除リスクです。スペースXのケースでは上場後6カ月にわたって段階的にインサイダーの売却可能株数が増加する構造でした。OpenAIとAnthropicでも同様のロックアップ構造が設定される見込みで、大株主(MicrosoftやAmazon・Googleなど)がどのタイミングで売却するかが株価の最大変動要因になります。
第二に、超高バリュエーションのリスクです。Yahoo!ニュース(2026年6月付)が引用した分析記事によると、両社の「160兆円評価と巨額赤字の矛盾」が上場後に財務情報として公開されることで、市場の評価が修正される可能性があります。第三に競争激化リスクです。ChatGPTの対抗馬としてGoogleのGemini、MetaのLlama、Amazon BedrockなどのAIサービスが市場シェアを争っており、現在の優位性が今後も続くという保証はありません。楽観シナリオでは推論コストの低下(技術進歩)と法人市場のシェア拡大が相まって2028年頃に黒字化し、株価が評価額を正当化します。悲観シナリオでは赤字が長引き、ロックアップ解除の売り圧力と重なって株価が大幅下落するシナリオも否定できません。
スペースXの教訓から学ぶ、AIIPOを乗りこなす投資判断の軸
スペースXは2026年7月7日にナスダック100に採用され、約43億ドルのパッシブ資金流入が見込まれるという分析もあります(JPモルガン試算)。しかし同時に、PSR(株価売上高倍率)94倍という高バリュエーション、純損失49億ドルという赤字体質、ロックアップ解除に伴う売り圧力という複数のリスクを抱えています。フロリダ大学のジェイ・リッター教授の研究では、PSRが40倍を超えるIPOは3年間で市場を58パーセントポイント下回る傾向があるとされています。
OpenAIとAnthropicにも同様の視点が必要です。私が導いた判断の軸は次のとおりです。「ARRの成長速度と推論コスト改善速度のどちらが速いか」を追いかけることが、AI企業投資の核心です。ARRが成長してもコストがそれ以上に膨らめば赤字は拡大します。逆に推論コストが技術進歩で急速に低下すれば(ムーアの法則的な推移で1/4程度になれば)、黒字化は急速に近づきます。上場後の決算発表ごとにこの2つの数字を追うことが、IPO株を長期保有する投資家にとって最も重要な「ものさし」になると考えています。
まとめ|OpenAI・AnthropicのAI IPOで個人投資家が今すべきこと
2026年のAI IPOラッシュは、「夢」と「リスク」の両方が史上最大規模で交差する歴史的なイベントです。5章にわたって解説した内容を5点に整理します。
- 第1章の要点:スペースXのIPO成功が「IPOウィンドウ」を開き、Anthropicが6月1日、OpenAIが6月8日に相次いでS-1を提出した。3社合計の評価額は570兆円超で、日本のGDPに匹敵する規模。市場全体への影響はリバランス売りのリスクと、AI関連銘柄全体の底上げという両面がある。
- 第2章の要点:OpenAIの2025年純損失は帰属分で385億ドル(約6兆円)で、推論コスト含みでは2030年まで赤字が続く見込み。一方、売上高は2年で3倍超の急成長。組織再編(PBC化)は完了しており、Microsoftは約27%の株主として残存する。
- 第3章の要点:AnthropicのARRは2026年5月時点で470億ドルを超えており(ITmedia 2026年6月2日付)、OpenAIを上回る急成長。AmazonとGoogleという「ライバル同士」が大株主という独特の構造は、成長の証明である同時に最大の売り手リスクでもある。PBC(公益事業会社)という形態は株主利益より社会的使命を優先する可能性がある。
- 第4章の要点:日本からの投資方法は、408A ETFによる間接保有(今すぐ可能、ただし組み入れ比率は1%前後)、Amazon・Google・Microsoft株の保有(安定性あり)、IPO後のSBI証券・楽天証券経由の直接購入(最高エクスポージャー、最高リスク)の3段階がある。
- 第5章の要点:「推論コストが収益の50%超」というAI企業固有のコスト構造を理解することが、投資判断の土台になる。ロックアップ解除・超高バリュエーション・競争激化の3リスクに加えて、「ARR成長速度vs推論コスト改善速度」という2つの指標を決算ごとに追うことが、長期投資の判断基準になる。
次のアクションとして、まずSBI証券または楽天証券で外国株取引口座(特定口座 or NISA口座)を開設し、408A ETFで少額から間接投資を始めることをお勧めします。OpenAIとAnthropicの上場日や取り扱い証券会社の情報は、各証券会社の公式サイトとIR情報をこまめに確認してください。「乗り遅れたくない」という焦りは、高値掴みの最大の原因です。準備を整えた状態で、冷静に向き合うことが最善の戦略です。
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著者について:本記事の著者は国内外の上場企業IR資料・決算短信・各省庁・メディア資料を参照しながら金融・投資記事を執筆しています。
最終更新日:2026年7月5日
免責事項:本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。記載している数値・データは各出典資料の発表時点のものであり、現在の状況と異なる場合があります。
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