子どもの将来のためにジュニアNISAを活用したいと考える親御さんは多いですが、親が資金を拠出する際には贈与税の取り扱いに注意が必要です。年間110万円の基礎控除を超えると課税対象となり、定期贈与や名義預金と認定されるリスクもあります。2023年末でジュニアNISAの新規受付は終了しましたが、既存口座の運用や2027年開始予定の「こどもNISA」でも同じ税務リスクが存在します。本記事では、贈与税がかかるケース、110万円超の落とし穴、税務調査で指摘されやすいポイントを徹底解説し、安全に資産形成を進めるための実践的な対策をお伝えします。
- ジュニアNISAで親が使うと贈与税がかかる具体的なケースと判断基準
- 年間110万円の基礎控除を超えた場合の税負担額と申告方法
- 定期贈与・名義預金と認定されて追徴課税を受けるリスクとその回避策
- 税務調査で指摘されやすいポイントと証拠書類の正しい保存方法
- 2027年開始予定「こどもNISA」でも使える贈与税対策の実践テクニック
第1章:ジュニアNISAで親が使うときの贈与税の基本ルール
子どもの将来のために「ジュニアNISA」を活用しようと考えている親御さんは多いですが、親が資金を出す場合、必ず「贈与税」のルールを理解しておく必要があります。なぜなら、ジュニアNISA口座に親がお金を入れる行為は、税務上「子どもへの贈与」として扱われるからです。
贈与税には「年間110万円までなら非課税」という基礎控除がありますが、この仕組みを正しく理解していないと、知らないうちに課税対象になってしまうリスクがあります。また、複数の親族から贈与を受けた場合や、毎年同じ金額を贈与し続けた場合には、税務署から「定期贈与」と判断されて追徴課税を受ける可能性もあります。
この章では、ジュニアNISAを親が使うときに知っておくべき贈与税の基本ルールを、中学生でもわかるように丁寧に解説します。
1-1. 年間110万円の基礎控除とは?贈与税が非課税になる条件
贈与税には「基礎控除」という制度があり、1年間に110万円までの贈与であれば、贈与税がかかりません。これは、親から子へ、祖父母から孫へといった親族間の贈与でも同じルールが適用されます。
たとえば、父親がジュニアNISA口座に年間80万円を入金した場合、この金額は110万円以内なので贈与税は発生しません。また、母親も別途80万円を入金した場合、父母それぞれが110万円の基礎控除を使えるため、合計160万円まで非課税で贈与できることになります。
⚠ 注意ポイント
基礎控除の110万円は「贈与を受ける人(受贈者)1人あたり」の金額です。つまり、祖父母と両親の4人から贈与を受けた場合でも、子ども1人が受け取れる非課税枠は年間110万円までです。複数の人から贈与を受けた場合は、その合計額で判断されます。
1-2. ジュニアNISAへの入金は贈与に該当するのか?税務上の判断基準
親が子ども名義のジュニアNISA口座に資金を入れた場合、税務上は「贈与が成立した」と判断されるのが原則です。なぜなら、口座の名義は子どもであり、子どもの財産として扱われるからです。
ただし、税務署が贈与と認めるためには、以下の条件を満たす必要があります:
| 判断基準 | 贈与と認められる条件 | 認められないケース |
|---|---|---|
| 子どもの認知 | 子どもが口座の存在を知っている | 子どもが口座を知らない |
| 管理の独立性 | 通帳や印鑑を子ども用に分けている | 親が自由に引き出せる状態 |
| 贈与の証拠 | 贈与契約書や振込記録がある | 現金手渡しで記録なし |
特に重要なのは、親が実質的に管理している場合、「名義預金」と判断されるリスクがある点です。名義預金と認定されると、子どもへの贈与とは認められず、相続時に親の財産として相続税の対象になってしまいます。
1-3. 複数の贈与者(両親・祖父母)からの資金提供と合算ルール
実際の家庭では、父親だけでなく、母親や祖父母からも資金提供を受けるケースが多いでしょう。この場合、贈与税の基礎控除110万円は「子ども1人あたり」の金額なので、複数人からの贈与を合計して判断されます。
具体例を見てみましょう:
【ケース1:合計が110万円以内】
父親から50万円、母親から40万円、祖父から20万円 → 合計110万円
→ 非課税(贈与税なし)
【ケース2:合計が110万円超】
父親から80万円、母親から80万円 → 合計160万円
→ 160万円 – 110万円 = 50万円が課税対象
→ 贈与税額:50万円 × 10% = 5万円
このように、複数人から贈与を受ける場合は、合計額が110万円を超えないように注意する必要があります。特に、祖父母からの贈与と両親からの贈与を合算し忘れるケースが多いので、家族内でしっかり情報共有することが大切です。
また、贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与税の申告が必要になる場合もあります。申告を怠ると、無申告加算税や延滞税が課される可能性があるため、110万円を超える贈与を受けた場合は、必ず税務署または税理士に相談しましょう。
第1章では、ジュニアNISAを親が使うときの贈与税の基本ルールについて解説しました。次の第2章では、実際に110万円を超えた場合にどれくらいの贈与税がかかるのか、具体的な計算方法とシミュレーションを見ていきます。
第2章:110万円超で贈与税が発生する具体的なケースと計算方法
第1章では、贈与税の基礎控除110万円について学びましたが、実際に110万円を超えた場合、どれくらいの税金がかかるのでしょうか?この章では、具体的な贈与税の計算方法と、実際にかかる税額をシミュレーションしながら解説します。
また、毎年同じ金額をジュニアNISA口座に入金し続けると「定期贈与」と判断されて、一括で課税されるリスクがあることをご存じでしょうか?知らないうちに数百万円の追徴課税を受けたという事例も実際に存在します。
この章では、贈与税がかかる具体的なケース、税額の計算方法、そして申告義務について、実例を交えながらわかりやすく説明します。
2-1. 年間110万円を超えた場合の贈与税額シミュレーション
贈与税の計算は、以下のステップで行います:
【贈与税の計算手順】
ステップ1: 年間の贈与額の合計を計算
ステップ2: 基礎控除110万円を差し引く
ステップ3: 残った金額(課税価格)に税率を掛ける
ステップ4: 控除額を差し引いて最終的な税額を算出
贈与税の税率は、課税価格によって10%〜55%の8段階に分かれています。以下の表で、具体的な税率と控除額を確認しましょう:
| 課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | なし |
| 200万円超〜300万円以下 | 15% | 10万円 |
| 300万円超〜400万円以下 | 20% | 25万円 |
| 400万円超〜600万円以下 | 30% | 65万円 |
では、具体例で計算してみましょう。父親から80万円、母親から80万円、祖父母から60万円の合計220万円をジュニアNISA口座に入金した場合:
【計算例】贈与額220万円の場合
① 年間贈与額:220万円
② 基礎控除:110万円
③ 課税価格:220万円 – 110万円 = 110万円
④ 税率:10%(200万円以下)
⑤ 贈与税額:110万円 × 10% = 11万円
このように、110万円を超えた分に対して贈与税が課税されます。さらに高額な贈与の場合を見てみましょう。500万円を贈与した場合:
課税価格:500万円 – 110万円 = 390万円
税率:20%、控除額:25万円
贈与税額:390万円 × 20% – 25万円 = 53万円
このように、贈与額が大きくなればなるほど、税率も高くなり、税負担が重くなります。そのため、年間110万円の範囲内で計画的に贈与することが、税負担を抑える最も効果的な方法です。
2-2. 定期贈与と認定されるリスク|毎年同額を贈与する危険性
「毎年110万円以内なら贈与税がかからないから、毎年100万円ずつ10年間贈与しよう」と考える方も多いでしょう。しかし、ここに大きな落とし穴があります。それが「定期贈与」と判断されるリスクです。
定期贈与とは、「最初から1000万円を贈与する約束があり、それを10年に分けて支払っているだけ」と税務署が判断するケースです。この場合、10年間の合計1000万円に対して一括で贈与税が課税されてしまいます。
| 贈与の方法 | 税務署の判断 | 課税リスク |
|---|---|---|
| 毎年同じ日に同じ金額を贈与 | 定期贈与の可能性が高い | 高リスク |
| 贈与契約書で10年分を明記 | 定期贈与と認定される | 高リスク |
| 金額や時期をランダムに変える | 都度の贈与と判断されやすい | 低リスク |
定期贈与と判断されないための対策は以下の通りです:
【定期贈与を回避する5つの対策】
① 毎年贈与契約書を作成する(年ごとに独立した贈与であることを証明)
② 贈与額を毎年変える(例:今年は80万円、来年は60万円など)
③ 贈与の時期を変える(誕生日、入学時期など理由のある時期に)
④ あえて110万円を少し超えて申告する(例:120万円贈与して申告)
⑤ 振込記録と贈与の理由を記録に残す
特に効果的なのは、あえて数年に一度は110万円を超えて贈与税を申告することです。これにより、「毎年独立した贈与を行っている」という証拠になり、定期贈与と認定されにくくなります。
2-3. 贈与税の申告義務と期限|申告しないとどうなる?
年間110万円を超える贈与を受けた場合、贈与を受けた人(子ども)は、翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告をしなければなりません。この申告を怠ると、以下のペナルティが課される可能性があります。
| ペナルティの種類 | 内容 | 税率・金額 |
|---|---|---|
| 無申告加算税 | 申告期限内に申告しなかった場合 | 本税の15%〜20% |
| 延滞税 | 納付期限から遅れた日数分 | 年7.3%〜14.6% |
| 重加算税 | 意図的に隠蔽した場合 | 本税の40% |
例えば、贈与税が10万円だった場合、申告を忘れていると:
⚠ 無申告のペナルティ例
本来の贈与税: 10万円
無申告加算税: 10万円 × 15% = 1.5万円
延滞税(半年遅れた場合): 約3,000円
合計: 約11.8万円(本来より1.8万円多く支払う)
申告方法は以下の3つがあります:
①税務署の窓口で申告
最寄りの税務署に贈与税申告書と必要書類(贈与契約書、振込記録など)を持参して提出します。初めての方は、税務署の職員が丁寧に教えてくれるので安心です。
②e-Taxで電子申告
国税庁のe-Taxシステムを使えば、自宅からパソコンで申告できます。マイナンバーカードとICカードリーダーがあれば24時間いつでも申告可能です。
③税理士に依頼
贈与額が大きい場合や、複雑なケース(相続時精算課税を選択する場合など)は、税理士に依頼するのが確実です。費用は3万円〜10万円程度が相場です。
第2章では、110万円を超えた場合の贈与税額の計算方法、定期贈与のリスク、そして申告義務について詳しく解説しました。計画的に贈与し、必要な場合は正しく申告することが、安全な資産形成の鍵となります。次の第3章では、さらに深刻な問題である「名義預金」と税務調査のリスクについて解説します。
第3章:ジュニアNISAで名義預金と認定される落とし穴と税務調査リスク
ジュニアNISAを活用する上で最も注意すべきなのが「名義預金」と認定されるリスクです。名義預金とは、子ども名義の口座でありながら、実質的には親が管理・支配している状態を指します。
税務署は相続税の税務調査において、被相続人(亡くなった親)の財産だけでなく、子どもや孫の名義の口座も徹底的に調査します。そして、名義預金と判断された場合、数百万円〜数千万円の相続税が追加で課税されるケースも実際に存在します。
この章では、名義預金とは何か、税務調査でどのようにチェックされるのか、そして相続時にどんなペナルティがあるのかを、実例を交えながら詳しく解説します。
3-1. 名義預金とは?親が管理していると贈与と認められない理由
名義預金とは、口座の名義は子どもや孫になっているが、実際にはお金を出した人(親や祖父母)が管理している預金のことです。税法上、お金の本当の所有者は「名義人」ではなく「実質的に管理している人」と判断されます。
税務署が名義預金と判断する主な基準は以下の通りです:
| 判断基準 | 名義預金と判断されやすい状態 | 贈与と認められる状態 |
|---|---|---|
| 通帳・印鑑の管理 | 親が保管している | 子どもが管理している |
| 口座の認知 | 子どもが口座を知らない | 子どもが口座の存在を認識 |
| 出金の自由度 | 親が自由に引き出せる | 子どもの意思で引き出す |
| 贈与の証拠 | 贈与契約書がない | 贈与契約書がある |
例えば、こんなケースは要注意です:
⚠ 名義預金と判断されやすいケース
ケース① 子どもが3歳の時にジュニアNISA口座を開設し、親が毎年80万円ずつ入金。通帳と印鑑は親が保管し、子どもは成人するまで口座の存在を知らなかった。
ケース② 祖父母が孫のためにジュニアNISA口座を開設したが、祖父母が暗証番号を管理し、自由に売買や出金を行っていた。孫には一切知らせていなかった。
ケース③ 父親が子ども名義の口座に入金していたが、途中で父親自身の生活費として引き出していた。
これらのケースでは、「子どもへの贈与」とは認められず、親や祖父母の財産と判断されます。その結果、親が亡くなった時に相続税の課税対象となり、相続税が追加で発生します。
名義預金を防ぐためには、以下の対策が有効です:
【名義預金認定を回避する5つの対策】
① 贈与契約書を毎年作成し、親子で署名・押印する
② 子どもが理解できる年齢になったら、口座の存在を伝える
③ 通帳と印鑑は子ども専用のものを用意し、親と分けて保管
④ 銀行振込で贈与の記録を残す(現金手渡しは避ける)
⑤ 子どもの教育費や生活費以外の目的で親が引き出さない
3-2. 税務調査で指摘されやすいポイント|金融機関への調査権限
相続税の税務調査は、被相続人が亡くなってから1〜2年後に行われることが多く、税務署は金融機関に直接照会して、過去10年分の入出金履歴を調査する権限を持っています。
税務調査では、以下のポイントが徹底的にチェックされます:
| 調査項目 | 調査内容 | 税務署が疑うポイント |
|---|---|---|
| 入金の出所 | 誰がいくら入金したか | 子どもに収入源がないのに多額の入金 |
| 出金の用途 | 何に使われたか | 親の生活費に充てられている |
| 管理の実態 | 誰が管理しているか | 親が印鑑や通帳を保管している |
| 贈与の意思 | 契約書や記録があるか | 贈与契約書がない |
税務署の調査官は、被相続人だけでなく、配偶者、子ども、孫の名義の口座も含めて、すべての金融機関に照会をかけます。そのため、「バレないだろう」という考えは通用しません。
実際の税務調査では、こんな質問がされます:
【税務調査でよくある質問】
「お子さんは、この口座の存在をいつから知っていましたか?」
「通帳と印鑑はどなたが保管していましたか?」
「この口座からの出金は、何に使われましたか?」
「贈与契約書は作成されていますか?」
「お子さん自身が自由に引き出せる状態でしたか?」
これらの質問に対して、明確な証拠や記録がないと、名義預金と判断されるリスクが高まります。
3-3. 相続税の税務調査で名義預金が発覚した場合のペナルティ
名義預金と判断された場合、その口座の残高は被相続人(亡くなった親)の相続財産に加算され、相続税が追加で課税されます。さらに、無申告加算税や延滞税といったペナルティも課されることがあります。
具体例で見てみましょう:
⚠ 名義預金が発覚した場合のペナルティ例
【前提】
・父親が亡くなり、相続財産は5,000万円
・子ども名義のジュニアNISA口座に1,000万円
・税務調査で名義預金と認定
【結果】
・相続財産:5,000万円 + 1,000万円 = 6,000万円
・追加の相続税:約150万円
・無申告加算税:150万円 × 10% = 15万円
・延滞税:約5万円
合計:約170万円の追加負担
このように、名義預金と判断されると、数百万円単位の追加負担が発生する可能性があります。さらに、意図的に隠していたと判断された場合は、重加算税(本税の40%)が課されることもあります。
名義預金のペナルティを回避するためには、以下の対策が重要です:
| 対策 | 具体的な方法 | 効果 |
|---|---|---|
| 贈与の記録化 | 贈与契約書を毎年作成 | 贈与の意思を証明 |
| 管理の独立性 | 通帳・印鑑を子ども用に分ける | 実質管理の証明 |
| 子どもへの説明 | 年齢に応じて口座の存在を伝える | 認知の証明 |
| 専門家への相談 | 税理士に事前確認 | リスク回避 |
第3章では、名義預金の定義、税務調査で指摘されやすいポイント、そして相続時のペナルティについて詳しく解説しました。ジュニアNISAを安全に活用するためには、「形式的な名義」ではなく「実質的な所有と管理」が重要であることを忘れないでください。
次の第4章では、これまでの内容を踏まえて、贈与税を回避するための具体的なチェックリストと実践方法をお伝えします。
第4章:贈与税を回避するための実践的な対策チェックリスト
第1章から第3章まで、贈与税の基本ルール、計算方法、名義預金のリスクについて学んできました。ここからは、実際にジュニアNISAや今後の「こどもNISA」を使う際に、贈与税を正しく回避するための具体的な対策を、チェックリスト形式で解説します。
「贈与契約書って本当に必要なの?」「振込記録はどうやって保存すればいい?」「子どもにはいつ、どう説明すればいい?」といった疑問に、今日から実践できる具体的な手順でお答えします。
この章で紹介する対策を実行することで、税務調査があっても自信を持って対応でき、将来の相続時にもトラブルを防ぐことができます。
4-1. 贈与契約書の作成方法と必須記載項目
贈与税対策で最も重要なのが「贈与契約書」の作成です。贈与契約書とは、贈与者(親や祖父母)と受贈者(子ども)の間で、贈与の意思を明確にする書面のことです。
口頭での約束だけでは、税務調査の際に「贈与の証拠がない」と判断されるリスクがあります。そのため、毎年、贈与のたびに契約書を作成することが、定期贈与認定を防ぐ最も確実な方法です。
【贈与契約書に必ず記載すべき7項目】
① 契約書のタイトル(「贈与契約書」と明記)
② 贈与者の氏名・住所・押印
③ 受贈者の氏名・住所・押印(未成年の場合は法定代理人が署名)
④ 贈与する金額(「金○○万円」と明確に)
⑤ 贈与の日付(実際に振り込む日と一致させる)
⑥ 贈与の目的(「子どもの将来の教育資金として」など)
⑦ 契約書作成日
具体的な書式例を見てみましょう:
| 贈与契約書(記載例) | |
|---|---|
|
贈与者(以下「甲」という)と受贈者(以下「乙」という)は、以下の通り贈与契約を締結する。 第1条 甲は乙に対し、金80万円を贈与するものとする。 第2条 本贈与は、2026年1月15日に甲から乙の口座へ振り込むことにより実行する。 第3条 本贈与金は、乙の教育資金および将来の生活資金に充てるものとする。 令和○年○月○日 甲(贈与者):住所・氏名・押印 乙(受贈者):住所・氏名・押印(法定代理人:氏名・押印) |
契約書は手書きでもパソコンで作成してもかまいませんが、必ず署名・押印を忘れずにしてください。また、契約書は最低でも7年間(できれば10年間)保管しておくことをおすすめします。
さらに、贈与契約書は2通作成し、贈与者と受贈者がそれぞれ1通ずつ保管するのが理想です。税務調査の際にも、双方が契約書を保管していることで、贈与の真正性を証明しやすくなります。
4-2. 振込記録・証拠書類の正しい保存方法と保管期間
贈与契約書を作成したら、次に重要なのが「振込記録」の保存です。現金手渡しは絶対に避け、必ず銀行振込で贈与を実行してください。振込記録は、贈与が実際に行われたことを証明する最も確実な証拠になります。
税務調査では、以下の書類を提示することが求められます:
📁 保存すべき証拠書類一覧
① 贈与契約書の原本(贈与者・受贈者の双方が保管)
② 銀行の振込明細書(ATM利用明細書、ネットバンキングのスクリーンショット)
③ 通帳のコピー(入金記録がわかるページ)
④ ジュニアNISA口座の取引報告書
⑤ 贈与税の申告書控え(110万円超の場合)
⑥ 子どもへの説明記録(いつ、どのように伝えたか)
保管方法は、以下のような工夫をすると便利です:
| 保管方法 | メリット | おすすめ度 |
|---|---|---|
| 紙ファイルで保管 | 税務調査時にすぐ提示できる | ⭐⭐⭐⭐ |
| PDFでクラウド保存 | 紛失リスクがなく、検索も簡単 | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
| 年度別フォルダ分け | 贈与年ごとに整理できて見やすい | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
私のおすすめは、紙の原本とPDFのクラウド保存を併用する方法です。Googleドライブやクラウドに「贈与記録」というフォルダを作り、年度ごとにサブフォルダを作成して保存しておくと、いつでもスマホからでも確認できて便利です。
保管期間については、相続開始から10年間は保存しておくのが安全です。相続税の税務調査は、相続発生後1〜2年で行われることが多いですが、場合によってはそれ以降に調査が入ることもあります。
4-3. 子どもへの認知と管理の独立性を確保する具体的な手順
名義預金と判断されないためには、子ども自身が口座の存在を知っていて、将来的に自分で管理できる状態にすることが非常に重要です。
とはいえ、3歳や5歳の子どもに「贈与」や「投資」を理解させるのは難しいですよね。そこで、年齢に応じた段階的な説明と管理の移行が大切になります。
【年齢別:子どもへの説明と管理移行のステップ】
0〜5歳
・親が全面的に管理(やむを得ない)
・贈与契約書は親が法定代理人として署名
・写真やビデオで「この口座は○○ちゃんのものだよ」と記録を残す
6〜12歳(小学生)
・「将来の夢のために、パパとママが毎年お金を貯めているよ」と説明
・通帳を一緒に見せて、残高を確認させる
・印鑑は子ども専用のものを用意
13〜17歳(中高生)
・投資の仕組みを簡単に説明(「お金がお金を増やす」イメージ)
・年に1回、運用状況を一緒に確認
・18歳になったら管理を完全に移行する準備
18歳以上
・通帳・印鑑・ログイン情報をすべて子どもに渡す
・自分で管理・運用できる状態にする
「子どもが小さいうちから説明しても理解できないのでは?」と思うかもしれませんが、税務調査では「いつから子どもが認知していたか」が重視されます。たとえ完全には理解していなくても、「口座の存在を知っていた」という証拠があることが重要です。
具体的な証拠の残し方としては:
| 証拠の種類 | 具体例 | 証拠力 |
|---|---|---|
| 写真・動画 | 通帳を一緒に見ている様子を撮影 | ⭐⭐⭐ |
| 連絡ノート | 「○年○月○日、口座の話をした」と記録 | ⭐⭐⭐⭐ |
| メール・LINE | 中高生になったら運用状況をメッセージで共有 | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
また、管理の独立性を確保するためには、以下の点に注意してください:
⚠ 絶対にやってはいけないこと
✗ 親が子どもの口座から自分の生活費を引き出す
✗ 親の印鑑を子どもの口座にも使い回す
✗ 子どもに一切知らせずに18歳まで秘密にする
✗ 通帳と印鑑を親の書類と一緒に保管する
第4章では、贈与税を回避するための実践的な対策として、贈与契約書の作成方法、証拠書類の保存方法、そして子どもへの認知と管理の独立性を確保する手順を詳しく解説しました。これらの対策を実行することで、安心してジュニアNISAや今後の「こどもNISA」を活用できます。次の第5章では、2027年開始予定の「こどもNISA」でも使える最新の贈与税対策をお伝えします。
第5章:2027年開始予定「こどもNISA」でも使える贈与税対策
ジュニアNISAは2023年末で新規受付が終了しましたが、政府は2027年に「こどもNISA(仮称)」という新しい未成年向け制度の開始を検討しています。この制度では、年間投資上限60万円、累計600万円という枠組みが報道されており、ジュニアNISAよりも使いやすい設計になる見込みです。
この章では、こどもNISAの最新情報とともに、2024年度税制改正で追加された相続時精算課税制度の新ルールや、贈与額の分散テクニックなど、今後も使える贈与税対策を解説します。
制度が変わっても、基本的な贈与税のルールは同じです。しっかり理解して、子どもの未来に備えましょう。
5-1. こどもNISAの制度概要と年間投資上限60万円(案)の活用法
2027年開始予定の「こどもNISA」は、報道によると以下のような制度設計が検討されています:
| 項目 | こどもNISA(案) | ジュニアNISA(終了) |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 18歳未満 | 未成年 |
| 年間投資上限 | 60万円(案) | 80万円 |
| 累計投資上限 | 600万円(案) | 制限あり |
| 払出し制限 | 12歳から可能(案) | 原則18歳まで不可 |
| 非課税期間 | 無期限(案) | 5年間(ロールオーバー可) |
| 対象商品 | つみたて型投資信託中心 | 株式・投資信託 |
こどもNISAの最大の特徴は、払出し制限が緩和される点です。ジュニアNISAでは18歳まで引き出せませんでしたが、こどもNISAでは12歳から払出し可能(案)とされており、中学受験や高校進学などのタイミングで教育費に充てやすくなります。
年間投資上限60万円(案)を活用する場合、贈与税の基礎控除110万円との関係は以下のようになります:
【パターン1:父親のみが贈与】
・こどもNISA口座に60万円入金
・基礎控除110万円以内 → 贈与税なし
【パターン2:父親と母親がそれぞれ贈与】
・父親がこどもNISA口座に60万円
・母親が別途50万円を贈与
・合計110万円 → 基礎控除内で贈与税なし
【パターン3:祖父母も含めて贈与】
・父親60万円 + 母親40万円 + 祖父母20万円 = 合計120万円
・110万円超 → 10万円に対して贈与税あり(1万円)
このように、年間60万円という枠は基礎控除の範囲内に収まるため、計画的に活用すれば贈与税の心配はほとんどありません。ただし、複数の親族から贈与を受ける場合は、合計額が110万円を超えないように調整が必要です。
5-2. 相続時精算課税制度の2024年改正と年間110万円基礎控除の追加
2024年1月から、相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が新たに追加されました。これは、贈与税対策において非常に大きな改正です。
相続時精算課税制度とは、累計2,500万円まで非課税で贈与できる代わりに、相続時に贈与分を相続財産に加算して精算する制度です。従来は、一度選択すると年間110万円の基礎控除が使えなくなるデメリットがありましたが、2024年改正でこの問題が解消されました。
| 項目 | 改正前 | 2024年改正後 |
|---|---|---|
| 特別控除 | 累計2,500万円 | 累計2,500万円(変更なし) |
| 年間基礎控除 | なし | 110万円(新設) |
| 申告義務 | 毎年必要 | 110万円以下なら不要 |
| 相続時の扱い | 全額加算 | 110万円部分は加算不要 |
この改正により、以下のような活用が可能になりました:
💡 相続時精算課税制度の新しい活用例
【ケース1:毎年110万円以下の贈与】
・相続時精算課税を選択していても、年間110万円以下なら申告不要
・相続時にも加算されない
→ 実質的に暦年贈与と同じメリット
【ケース2:大きな贈与と小口贈与の併用】
・最初に1,000万円を贈与(特別控除を使用)
・その後、毎年110万円ずつ贈与(基礎控除を使用)
→ 贈与税なしで効率的に資産移転
相続時精算課税制度を選択する際の注意点は、一度選択すると、その贈与者との関係では撤回できないことです。そのため、選択前に税理士に相談することを強くおすすめします。
5-3. 贈与額の分散と時期調整で定期贈与認定を回避する方法
第2章で解説した「定期贈与」のリスクを回避するためには、贈与額と贈与時期を毎年変えることが最も効果的です。税務署は、「毎年同じ日に同じ金額」という規則性を見つけると、定期贈与を疑います。
具体的な回避テクニックを見ていきましょう:
【定期贈与を回避する5つのテクニック】
①金額を変える
・1年目:80万円、2年目:60万円、3年目:90万円、4年目:50万円
→ 規則性がないため定期贈与と判断されにくい
②時期を変える
・誕生日、入学時期、お正月など、理由のあるタイミングで贈与
→ 「その都度の判断」と証明しやすい
③あえて110万円を超える年を作る
・3年に1回程度、120万円を贈与して申告する
→ 「年ごとに独立した贈与」の証拠になる
④贈与契約書を毎年作成
・毎年新たに契約を締結する形にする
→ 「計画的な定期贈与ではない」ことを証明
⑤贈与の理由を記録
・「入学祝い」「誕生日プレゼント」など理由を明記
→ 目的のある贈与であることを示す
特に効果的なのは、3〜4年に1回程度、あえて110万円を超えて贈与税を申告する方法です。例えば:
| 年 | 贈与額 | 贈与税 | 効果 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 80万円 | なし | 基礎控除内 |
| 2年目 | 60万円 | なし | 基礎控除内 |
| 3年目 | 120万円 | 1万円 | 申告することで独立性を証明 |
| 4年目 | 90万円 | なし | 基礎控除内 |
このように、あえて数年に1回は申告することで、「毎年独立した贈与を行っている」という証拠になります。1万円程度の贈与税を支払うことで、将来の定期贈与認定リスクを回避できるなら、十分に価値があると言えるでしょう。
第5章では、2027年開始予定の「こどもNISA」の制度概要、2024年改正で追加された相続時精算課税の年間基礎控除、そして定期贈与を回避するための具体的なテクニックを解説しました。制度は変わっても、基本的な贈与税のルールと対策は変わりません。この知識を活用して、子どもの未来に向けた資産形成を安全に進めてください。
まとめ|ジュニアNISAを親が使うときは贈与税ルールの正しい理解が不可欠
ここまで、ジュニアNISAを親が使う際の贈与税ルール、110万円超の落とし穴、名義預金のリスク、そして実践的な対策について詳しく解説してきました。子どもの将来のための資産形成は素晴らしいことですが、税務ルールを知らないままでは、思わぬペナルティを受けるリスクがあります。
この記事で最も大切なポイントを3つにまとめます:
【この記事の重要ポイント3つ】
① 年間110万円の基礎控除を守る(複数人からの贈与は合算)
② 贈与契約書と振込記録で証拠を残す(名義預金認定を防ぐ)
③ 贈与額と時期を変えて定期贈与認定を回避する
子どもの教育費や将来資金を準備することは、親としての大切な役割です。でも、そのために必要なのは、ただお金を貯めることではなく、「正しい方法で、リスクを回避しながら、長期的に資産を育てること」です。
2027年には「こどもNISA」という新しい制度も始まる予定です。制度が変わっても、贈与税の基本ルールは変わりません。この記事で学んだ知識を活かして、自信を持って子どもの未来に投資してください。
不安なことがあれば、税理士や金融機関に相談することをためらわないでください。正しい知識と準備があれば、子どもの未来はもっと明るくなります。あなたとお子さんの幸せな未来を、心から応援しています。

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