- 市場の暴落や不景気に強い資産配分の仕組みと理論的根拠
- 4つの異なる資産クラスが相互補完する投資メカニズム
- 年齢や投資経験に応じた日本版アレンジの具体的な実践方法
- 従来の60/40ポートフォリオとの違いと優位性
- 長期投資における心理的安定とリスク管理のバランス術
目次
- 1. パーマネントポートフォリオの基本概念と投資理論
- 2. パーマネントポートフォリオの実績と他戦略との比較
- 3. 日本版パーマネントポートフォリオの実践方法
- まとめ:パーマネントポートフォリオで長期安定投資を始めよう
第1章:パーマネントポートフォリオの基本概念と投資理論

1-1. ハリー・ブラウンが開発した4資産均等配分の仕組み
投資を始めたいけれど、「どの資産をどのくらい買えばいいのかわからない」「株価が下がったらどうしよう」と不安に感じる方は多いのではないでしょうか。そんな投資初心者の悩みを解決してくれるのが、今回ご紹介するパーマネントポートフォリオです。この投資手法は、アメリカの経済評論家ハリー・ブラウン氏が1970年代に開発し、40年以上にわたって多くの投資家に愛用されています。
パーマネントポートフォリオの最大の特徴は、4つの異なる資産に25%ずつ均等に投資するというシンプルなルールです。この4つの資産とは、現金(ドル)、米国株、米国債、そして金(ゴールド)のことを指します。なぜこの組み合わせなのでしょうか。ブラウン氏は長年の研究により、これらの資産がお互いに補い合う性質を持っていることを発見しました。
例えば、経済が好調な時期には株価が上昇しますが、不況になると株価は下落する代わりに債券や金の価値が上がる傾向があります。また、インフレが進行すると金の価値は上昇しますが、デフレ時には現金の相対的価値が高まります。このように、どのような経済状況でも必ずどれかの資産が良いパフォーマンスを示すように設計されているのです。
パーマネントポートフォリオが「パーマネント(永続的)」と呼ばれる理由は、一度構築すれば長期間にわたって安定したパフォーマンスが期待できるからです。市場の変動に一喜一憂せず、じっくりと資産を育てていくことができる投資法として注目されています。
1-2. 各資産クラスの役割と相互補完メカニズム
それでは、パーマネントポートフォリオを構成する4つの資産について、それぞれがどのような役割を果たすのか詳しく見ていきましょう。まず理解しておきたいのは、これらの資産は単独で持つよりも、組み合わせることで真価を発揮するということです。
| 資産クラス | 主な役割 | 強い経済環境 |
|---|---|---|
| 現金(ドル) | 安全資産・流動性確保 | デフレ・不況時 |
| 米国株 | 成長資産・インフレ対応 | 経済成長・好況時 |
| 米国債 | 安定収入・金利低下利益 | 金利低下・不況時 |
| 金(ゴールド) | 実物資産・危機対応 | インフレ・有事の際 |
現金は最も安全な資産として、経済危機や株価暴落時の「安心材料」となります。新NISAを活用する際も、現金部分は普通預金や短期国債で保有し、いつでも必要な時に引き出せるようにしておきます。
米国株は長期的な経済成長の恩恵を受けるための「エンジン」の役割を果たします。過去100年間のデータを見ると、短期的には上下動を繰り返しますが、長期では右肩上がりの成長を続けています。新NISAのつみたて投資枠では、S&P500連動のインデックスファンドや全世界株式ファンドを活用することで、この成長力を手軽に取り入れることができます。
米国債は「安定の要」として機能します。特に長期国債は、景気が悪化して金利が下がる局面で価格が上昇するため、株価下落時の損失を和らげてくれます。また、定期的に利息収入も得られるため、ポートフォリオ全体の安定性を高める重要な役割を担っています。
金(ゴールド)は「最後の砦」として位置づけられます。インフレが進行したり、地政学的リスクが高まったりした際に、その価値を発揮します。現在では金ETFを通じて少額から投資できるため、個人投資家でも気軽に金投資を行うことが可能です。
1-3. 市場環境変化に対するリスク分散効果の検証
パーマネントポートフォリオの真価は、様々な市場環境でのパフォーマンスを検証することで明らかになります。実際に過去のデータを分析すると、この投資法がいかに優れたリスク分散効果を持っているかがよくわかります。
1920年代から2010年代までの100年間のデータを見ると、どの10年間を切り取っても、4つの資産のうち必ず1つ以上が好調なパフォーマンスを示していることがわかります。例えば、1930年代の大恐慌時には株価が大幅に下落しましたが、同時期に債券と金が大きく値上がりし、ポートフォリオ全体の損失を最小限に抑えました。
2008年のリーマンショック時の検証も興味深い結果を示しています。この時期、米国株は約37%下落しましたが、パーマネントポートフォリオ全体では約5%の下落にとどまりました。これは、株価下落と同時に米国債と金が大幅に上昇し、現金部分が安定的な価値を保ったからです。
パーマネントポートフォリオは安定性に優れていますが、株式100%投資と比べると上昇局面でのリターンは控えめになります。2010年代のような株価上昇相場では、株式重視のポートフォリオに劣後することもあります。しかし、長期的な安定性と心理的な安心感を重視する投資家には非常に適した戦略と言えるでしょう。
実際に新NISAでパーマネントポートフォリオを構築する場合、月3万円の積立投資なら各資産に7,500円ずつ配分することになります。例えば、つみたて投資枠で米国株インデックスファンド7,500円、先進国債券ファンド7,500円、金ETF7,500円を購入し、残り7,500円は預金として保有するイメージです。
この配分により、どのような市場環境でも極端な損失を避けながら、着実に資産を増やしていくことが可能になります。特に投資経験が浅い方や、リスクを抑えた運用を希望する方にとって、パーマネントポートフォリオは理想的な投資戦略の一つと言えるでしょう。
次の章では、このパーマネントポートフォリオが実際にどのような実績を上げてきたのか、他の投資戦略と比較しながら詳しく検証していきます。過去のデータから見えてくる、この投資法の本当の実力をぜひご確認ください。
第2章:パーマネントポートフォリオの実績と他戦略との比較

2-1. 2024年実績と過去100年間のパフォーマンス分析
「パーマネントポートフォリオって本当に儲かるの?」「他の投資方法と比べてどうなの?」こうした疑問を抱く方は多いのではないでしょうか。投資において最も大切なのは、理論だけでなく実際の運用実績を確認することです。今回は、パーマネントポートフォリオの驚くべき実績データをご紹介します。
まず注目すべきは、2024年の実績です。マイケル・クッジーノ氏が運用するパーマネント・ポートフォリオ・アグレッシブ・グロース・ポートフォリオは、2024年に28%という優秀なリターンを達成しました。同年のS&P500が約23%の上昇だったことを考えると、パーマネントポートフォリオの戦略が市場平均を上回る成果を示したのです。
さらに長期的な視点で見ると、その真価がより明確になります。過去100年間のデータ分析によると、どの10年間を切り取っても、4つの資産のうち必ず1つ以上が好調なパフォーマンスを維持していることがわかります。これは偶然ではなく、異なる経済サイクルに対応する資産を組み合わせた戦略的効果なのです。
パーマネントポートフォリオの10年間の年率リターンは13.28%で、同期間のS&P500の13.1%をわずかながら上回っています。リスクを抑えながら市場平均を上回る成績を残している点が、多くの投資家から支持される理由です。
2-2. 60/40ポートフォリオ・オールウェザー戦略との違い
投資の世界には様々な資産配分戦略が存在しますが、その中でも特に有名なのが「60/40ポートフォリオ」と「オールウェザー戦略」です。これらとパーマネントポートフォリオはどのような違いがあるのでしょうか。詳しく比較してみましょう。
| 戦略名 | 資産配分 | 特徴・狙い |
|---|---|---|
| 60/40ポートフォリオ | 株式60%・債券40% | 伝統的な黄金比率、シンプルで分かりやすい |
| オールウェザー戦略 | 債券重視の複雑配分 | レイ・ダリオ考案、リスク平価重視 |
| パーマネント戦略 | 4資産に25%ずつ均等配分 | シンプルながら全方位対応型 |
60/40ポートフォリオは過去数十年間「黄金比率」と呼ばれてきましたが、2022年のような株式・債券同時下落の局面では弱点が露呈しました。一方で、パーマネントポートフォリオは金と現金を含むことで、このような同時下落リスクに対応できています。
オールウェザー戦略については、興味深い事実があります。ブリッジウォーターのオール・ウェザー・ファンドは過去10年(2014〜2023年)の累積リターンが+43%に留まり、伝統的な60/40ポートフォリオにも後れを取っているのが現状です。このことからも、理論的に優れた戦略でも実際の運用では様々な課題があることがわかります。
新NISAでの実践を考えると、パーマネントポートフォリオの分かりやすさは大きなメリットです。つみたて投資枠で各資産クラスのインデックスファンドを選び、25%ずつ配分するだけという単純明快さが、長期継続の鍵となります。
2-3. 暴落耐性と安定性の実証データ
投資において最も恐ろしいのは暴落による大きな損失です。パーマネントポートフォリオの真価は、まさにこの暴落局面で発揮されます。過去の重大な市場危機における実績データを見てみましょう。
2008年のリーマンショックでは、米国株が約37%下落する中、パーマネントポートフォリオ全体の下落は約5%に抑えられました。これは株価下落と同時に、米国債と金が大幅に上昇したからです。また、1930年代の大恐慌時には株価が大幅下落しましたが、債券と金の値上がりがポートフォリオ全体の損失を最小限に抑制しました。
リーマンショック時の各資産の動き:米国株 -37%、米国債 +20%、金 +25%、現金 ±0%
結果として、パーマネントポートフォリオ全体では -5%程度の下落に留まり、株式100%投資と比べて圧倒的な安定性を示しました。
2020年のコロナショックでも同様の効果が確認されています。3月の株価暴落時には、多くの投資家がパニック売りに走る中、パーマネントポートフォリオの保有者は比較的冷静に対応できました。現金と債券部分が安定的な価値を保ったため、心理的な余裕を保てたのです。
実際に新NISAでパーマネントポートフォリオを運用している方の体験談を見ると、「暴落時でも夜眠れる」「株価チェックの頻度が減った」といった心理的メリットが多く報告されています。月3万円の積立投資なら、各資産7,500円ずつの配分で、暴落時でもストレスを最小限に抑えながら投資を継続できるのです。
重要なのは、パーマネントポートフォリオが「負けない投資」を重視している点です。大きく儲けることよりも、大きく損をしないことに重点を置いた戦略だからこそ、長期的な資産形成において威力を発揮するのです。
次の章では、このパーマネントポートフォリオを日本人が実際にどう活用できるのか、新NISAを使った具体的な実践方法について詳しく解説していきます。理論から実践へ、いよいよ行動に移すためのノウハウをお伝えします。
第3章:日本版パーマネントポートフォリオの実践方法

3-1. 120の法則を活用した年齢別資産配分の調整
「パーマネントポートフォリオを始めたいけれど、自分の年齢ならどのくらいの配分がいいの?」「リスクを取りすぎているのか不安…」こうした悩みを解決してくれるのが「120の法則」です。この法則を使えば、年齢に応じた最適な資産配分を簡単に決めることができます。
120の法則とは、無リスク資産(現預金・国債)とリスク資産(株・投資信託など)の割合を「自分の年齢」と「120から自分の年齢を引いた数字」で決める考え方です。パーマネントポートフォリオに当てはめると、「現金:パーマネントポートフォリオ = 自分の年齢:(120-自分の年齢)」となります。
例えば30歳の方なら、現金30%:パーマネントポートフォリオ70%の配分になります。40歳の方なら現金40%:パーマネントポートフォリオ60%という具合です。年齢が上がるにつれて現金の比率を高め、安全性を重視した配分に自動的に調整できるのが最大の魅力です。
30歳の方(月3万円積立):現金9,000円、パーマネントポートフォリオ21,000円(米国株・債券・金に各7,000円)
40歳の方(月3万円積立):現金12,000円、パーマネントポートフォリオ18,000円(米国株・債券・金に各6,000円)
50歳の方(月3万円積立):現金15,000円、パーマネントポートフォリオ15,000円(米国株・債券・金に各5,000円)
3-2. 日本人向け投資信託・ETF選択のポイント
新NISAでパーマネントポートフォリオを実践する際、どのような商品を選べばよいのでしょうか。日本人投資家が実際に購入できる具体的な商品選択のポイントをご紹介します。まず重要なのは、各資産クラスを代表する低コストなインデックスファンドやETFを選ぶことです。
| 資産クラス | おすすめ商品例 | 信託報酬(年率) |
|---|---|---|
| 米国株・世界株 | eMAXIS Slim 全世界株式 | 0.1133% |
| 米国債券 | eMAXIS Slim 先進国債券 | 0.187% |
| 金(ゴールド) | 純金上場信託(現物国内保管型) | 0.44% |
つみたて投資枠では、厳選された低コスト商品のみが対象となっているため、基本的にはどれを選んでも大きな問題はありません。重要なのは信託報酬の低さと、長期的な安定性です。上記の商品例は、いずれも0.5%以下の低コストを実現しており、長期投資に適しています。
金(ゴールド)については、つみたて投資枠の対象商品が限られているため、成長投資枠でETFを活用することも検討しましょう。SPDRゴールド・シェア(GLD)や純金上場信託(1540)などが代表的な選択肢です。いずれも現物の金に連動しており、実質的に金を保有しているのと同じ効果が得られます。
実際の運用では、毎月の積立設定で自動化することが重要です。楽天証券やSBI証券などの主要ネット証券では、100円から積立投資が可能で、各資産クラスに細かく配分設定できます。月3万円なら、現金部分を除いた投資資金を3つの資産に等分することで、手軽にパーマネントポートフォリオが実現できるのです。
3-3. リバランス頻度と税効率を考慮した運用管理
パーマネントポートフォリオを長期的に成功させるためには、定期的な「リバランス」が欠かせません。リバランスとは、市場の値動きによって崩れた資産配分を、元の比率に戻す作業のことです。しかし、新NISAの特性を活かすためには、やみくもにリバランスするのではなく、戦略的に行う必要があります。
新NISAでは売却した部分の非課税枠を再利用できるようになったため、従来よりもリバランスがしやすくなりました。ただし、頻繁に売買を繰り返すと、その年の非課税枠を無駄に消費してしまう可能性があります。そこで推奨されるのが「年1回程度の定期リバランス」です。
基本方針:年1回(12月末)にポートフォリオ全体を見直し
調整方法:大きく配分が崩れた資産(±5%以上)のみ調整
税効率:売却よりも「新規積立の配分変更」を優先活用
緊急時対応:市場が大きく変動した場合のみ臨時リバランスを検討
実際のリバランス作業では、まず売却ではなく「積立配分の調整」から始めましょう。例えば、株式の比率が高くなりすぎた場合、株式への新規積立を一時停止し、債券と金への積立を増やすことで、時間をかけて配分を調整できます。これにより、売却による非課税枠の消費を最小限に抑えられます。
もう一つ重要なポイントは、現金部分のリバランスも忘れずに行うことです。120の法則に基づいて年齢が上がれば現金比率を高めていく必要がありますが、これは誕生日のタイミングで年1回見直せば十分です。
長期的な資産形成において、パーマネントポートフォリオは「手間をかけずに着実に資産を増やす」ことを目的とした戦略です。そのため、リバランスも可能な限りシンプルに、そして効率的に行うことが成功の秘訣となります。月々の積立は自動化し、年1回のメンテナンスで長期的な安定成長を目指していきましょう。
これまで3つの章を通じて、パーマネントポートフォリオの理論から実践まで詳しく解説してきました。次はいよいよ、あなた自身が行動を起こす番です。まとめの章では、今日から始められる具体的なアクションプランをご提案いたします。
まとめ:パーマネントポートフォリオで長期安定投資を始めようまとめ:パーマネントポートフォリオで長期安定投資を始めよう
ここまで読み進めていただき、ありがとうございます。パーマネントポートフォリオについて、基本概念から実際の運用方法まで詳しく学んでいただきました。「理論はわかったけれど、本当に自分にもできるのかな?」そんな不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。でも、安心してください。
パーマネントポートフォリオの最大の魅力は、そのシンプルさにあります。4つの資産に25%ずつ、年齢に応じて現金比率を調整するだけ。複雑な分析も、毎日の株価チェックも必要ありません。2024年に28%のリターンを達成した実績が証明しているように、この戦略は確実にあなたの資産形成をサポートしてくれるでしょう。
新NISAという最強の非課税制度を活用すれば、月3万円の積立投資から始めて、20年後には1,000万円を超える資産形成も十分可能です。暴落時でも5%の下落に抑えられる安定性があるからこそ、長期間続けることができるのです。
Step1:証券口座の開設(楽天証券・SBI証券など)
Step2:120の法則で自分の年齢に合った配分を決定
Step3:つみたて投資枠で3つの資産への自動積立を設定
投資にはリスクが伴います。しかし、何もしないことにもリスクがあります。物価上昇により現金の価値は目減りし続けています。パーマネントポートフォリオなら、そのリスクを最小限に抑えながら、着実に資産を増やしていくことができるのです。
「完璧なタイミングを待っていても、そのタイミングは永遠に来ません」。今日が、あなたの資産形成における最も若い日です。まずは月1万円からでも始めてみませんか?10年後、20年後のあなたが、今日の決断に感謝する日がきっと来るはずです。

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